「オンボーディング」は議論の余地がないほどに重要
顧客組織の熱感をCSが維持する鍵は、関係者のそれぞれの役割を把握しておくこと
方向性の共有とファーストゴール設計でエンタープライズ向けサービスの導入スピードを上げる
CSの勝ちパターンを作る3つのプロセス
1. 目標をオブジェクトレベルとアチーブメントレベルで定義し、プレイブックを作成
2. アクションはCS単体ではなく、セールスやプロダクト部分も可視化
3. フロー図(ジャーニー図)を常に更新
CSの勝ちパターンを確立・再現する際の注意点
CSは「太陽(プロダクト)」に対する「月」。PMFを加速させる役割がある
「オンボーディング」は議論の余地がないほどに重要
カスタマーサクセスを実現するために、真っ先に取り組むべきなのは「オンボーディング改善」です。
オンボーディングは、議論の余地がなく重要です。
オンボーディングにかかる時間は、短ければ短いほど良いものだからです。短いほどTtV(タイムトゥバリュー)が上がります。そのトライを仕掛けやすいポジションがCSです。
顧客はそもそも、「サービスを使いたい」のではなく、「サービスで課題を解決したい、成果をあげたい」はずです。まずは、スタート地点に立ってもらわなければ、成果もアップセル・クロスセルも上がるはずがありません。
オンボーディングの切り口は、
・ハイタッチによる属人的な1to1の支援
・テックタッチでのコンテンツ支援
など様々です。
切り口にかかわらず、オンボーディングで重要なのは、「顧客の熱感が下がる前に、ファーストゴール(難易度が低い短期目標)を設定し、達成すること」です。顧客の熱感は契約時点が一番高く、時間が経つほど下がっていきます。消えかけた火は元に戻りにくいので、「鉄は熱いうちに打て」が重要になるわけです。
ここから、エンタープライズ向けのカスタマーサクセスを実現するためのポイントをお伝えしていきます。
エンタープライズ向けサービスの特徴は、ステークホルダー(サービスの関係者)が多いことです。
例えば、大きな組織が営業支援サービスを導入する場合、ステークホルダーは「営業」「営業支援」以外に、情報システムや決裁部署、営業サポートなど多岐に渡ります。関与者が多くなると、その分、意思統一が難しくなります。
特にエンタープライズ向けサービスは、オンボーディングや取り組みのスピードが遅くなりやすく、熱感のコントロールが難しいケースが増えてきます。
顧客組織の熱感をCSが維持する鍵は、関係者のそれぞれの役割を把握しておくこと
ミニマムスタートでも、5人以上の体制になりやすいのがエンタープライズ。日程調整ひとつでも時間がかかり、リードが長くなりやすいのをあらかじめ見込んでおくべきです。
時間が経つにつれて、熱感はどうしても下がっていきます。
熱感を維持し、プロジェクトの速度を上げるコツが役割の把握です。「キーパーソンの熱感を保つ=社内推進力を保つ」だからです。
キックオフ時点からプロジェクトに関わる人たちのロール(役割)を把握しておきましょう。
把握するロールは「横(セクション)」「縦(職位)」「社内の影響力の強さ」の3つです。ロールの把握は、「熱感を維持し組織を動かすのに、誰にどう働きかければいいのか」を理解するのに役立ちます。
ロールは、初回のキックオフミーティングで聞いてしまいましょう。キックオフでの自己紹介の時間を単なるコミュニケーションに終わらせず、「どういう役割で参加いただだいているか」をきちんと聞いておきます。
キーパーソンは複数人作っておきましょう。キーパーソンが1人だけだと、退職や担当替え時に、架け橋が失われてしまうからです。
方向性の共有とファーストゴール設計でエンタープライズ向けサービスの導入スピードを上げる
エンタープライズ向けのプロジェクトで多いのは、「決裁権者」と「実行者」が別で、「方針を決めた人が会議にいないパターン」です。
統制力・推進力がない状態だと、業務フローの設計や現場の対応力に慎重になります。現場に浸透していくスピードが遅くなるだけでなく、「上から言われたからやるけど」と、推進力が欠けてしまうケースが少なくありません。
しかし、プロジェクトメンバー全員が「導入目的」と「ファーストゴール」を握り合えていると、熱量を維持しやすくなります。
決裁権者は「大きな導入目的」を理解していても、現場で「取り組み方とスケジュールが具体化されていない」状態だと、メンバーがバラバラの不安や思いを抱えている状態になります。
サービス導入の目的を明確に握りながら、同じ方向を向いているようにしましょう。
目的や向かう先の共通化、つまり「御社はこういう理由で導入されましたよね?」と合意を得てメンバーの共通認識にしていくのが最初のステップです。
最初に「なぜこれやるのか?」を固めておかないと、「議論の発散現象」が起きます。「どう叶えるのか」だけが焦点になり、アイデアや意見ばかりが量産され、議論が散らかってしまいます。
全員の目線合わせが、議論の発散を防いでくれます。理想と現実を握り合い、その場その場でイエスを得ながら進めていくことです。
次に決めるのが「現実的な第一歩目=ファーストゴール」です。ゴールは「1年目」「1ヶ月目」「3ヶ月間」と刻んでスケジュールに落とし込みましょう。「この時期くらいに、このようにやりましょう」と決めておくことです。
CSの勝ちパターンを作る3つのプロセス
CSでの勝ちパターンの構築・維持には、3つのプロセスが必要です。
SORABITOでは、組織フェーズ問わず、フロー図を描き、常にPDCAを回して更新しています。
具体的に説明していきます。
1. 目標をオブジェクトレベルとアチーブメントレベルで定義し、プレイブックを作成
質の高いカスタマーサクセスを安定運用するには、プレイブック(勝ちパターンを言語化したセオリー)が欠かせません。
プレイブックの概念は下記のサイトにわかりやすくまとまっています。
プレイブック作成の前には、
① 段階に分解した目標の定義
② 現状の達成段階と次段階へのアクションの定義
の2つの定義が必要です。
「理想の目標には、一足飛びにたどり着けない」という前提を踏まえ、顧客の成功までの道のり・状況を、いくつかの段階に分けて定義することが大切です。
その上で、顧客はどの段階にいて、次のステップに必要なアクションを一つひとつ定義していきましょう。
2つの定義が完了した上で、プレイブックを作成します。
例えば、現段階がステップ2だった場合に、「ステップ3になるのに必要なアクションをどう実行するか」と考えて作成しましょう。
現状と理想のギャップが大きいと、一足飛びに達成するイメージを持つのは困難です。具体と現実を何段階かに分解してはじめて、「実現可能なリアルなアクション」が見えてきます。
2. アクションはCS単体ではなく、セールスやプロダクト部分も可視化
プレイブックが完成したら、「どこがどのようにアクションを取るのか?どのアクションがどことどうつながるのか?」を可視化します。それがフロー図です。
フロー図では、CS単体ではなく、セールスやプロダクト部分も可視化が必要です。CS単体の業務の可視化だけでは不十分で、他部署との架け橋の把握や周知がしっかりと必要だからです。
ベンチャーフェーズの組織では、隣のセクションの動きが毎週変わることもしょっちゅうです。例えば、セールスからCSへの情報のパス方法や使っているツールが、1ヶ月前と変わることも少なくありません。
CSは、「前工程:セールス、後工程:プロダクト、報告:経営」とセクションの間に立つ部署です。
他部署のキャッチアップが不足すると、「分かっているようで分かっていない」情報がどんどん増えていきます。逆にキャッチアップが進むと、組織がスケールしやすくなります。
3. フロー図(ジャーニー図)を常に更新
フロー図は「一度作って終わり」ではダメで、常に更新が必要です。SORABITOでは、毎週フロー図を眺めながら、セールス・CS・プロダクト間で議論をしています。
営業会議・部門長会議、それぞれのチームで情報共有されているか、どんなフローで動いているのかを「Miro」を使い、チーム横断での可視化と更新をしています。
フロー図の可視化には、自セクションのフローを他セクションが直してくれるメリットもあります。
例えば、「プロダクトチームが新しい資料を用意していても、セールスチームは使い慣れた古い資料を使っていた」というシーンもあるでしょう。
「セールスがどんな書類を使っているか」が見えると、他セクションの課題が自分たちに見えていなかったことが把握できます。
センスの良い人なら、勝手に良い資料をキャッチアップしてくれるものですが、そうなると顧客への提案にムラが出てしまいます。スケールを意識して取り組むことが重要です。
CSの勝ちパターンを確立・再現する際の注意点
勝ちパターンの確立では、違う型を同時に試すのではなく、「一つの叩き台の型」でお客さんにアプローチするのが大事です。複数人が同じ型でテストする方が、PDCAが早くなります。
PMF以前のような仮説構築段階では、1社を2人で担当するのも有効です。1人だけだとその人だけの解になってしまいますが、2人だと解をすり合わせることで型の精度が高まります。
CSは「太陽(プロダクト)」に対する「月」。PMFを加速させる役割がある
CSに求められるケイパビリティは、サービス初期・中期・後期で変わってきます。
初期は、「型がない状態で提案できる能力・コンサルティング能力」が重視されます。中期では、ROIが重要指標になるので「営業スキル・データ蓄積」が重視されるでしょう。
PMF後は、サービスが活用されるのはわかっている段階なので、後期では「スケールをどう担保するかなどのマーケティング感覚」が重視されるはずです。
ただし、一貫してCSには「バランス」が求められます。顧客に寄り添いすぎてもダメだし、離れすぎてもダメです。
CSには、PMFを加速させる役割があります。
例えば、サービス初期のCSは、仮説をぶつけたり、UI・UXをお客さんと一緒に作っていく、リサーチの役目が求められます。顧客状況を咀嚼しサービスを正しい方向に導く役割です。
SaaSの成功は、プロダクトが命です。しかし、未熟なサービスほど自走しにくいものです。お客さんと社内の中間に立っているCSの重要性は、サービスが成立するかを加速させることです。CSは「太陽(プロダクト)」に対する「月」と言えるのではないでしょうか。
今回の記事では、「エンタープライズ向けカスタマーサクセス成功の秘訣」をまとめてお伝えしてきました。
ここではお伝えしきれていないCS業務の属人化脱却・CSの組織力強化に関するポイントやそのための具体事例はまだまだあります。
ここまで読んでいただいた方には、
ぜひ過去セミナーのアーカイブをご視聴いただき、今後の事業活動にご活用いただけますと幸いです。
このセミナーでは、なんとわずか1年で、ARPAを1.6倍に上昇させたという弊社のカスタマーサクセスの実績を踏まえた、
理想のハイタッチCS戦略について語っていただきます。
導入運用のプロジェクトマネジメントやプレイブックの作り方、CS人材の調達方法など、
解決されないままだったCS課題を解決に進める方法を惜しみなくお伝えする貴重な機会ですので、
CSに関するお悩みを抱えているすべての企業様にぜひともご参加いただきたく存じます。
最後まで読んでくださりありがとうございました!