事業グロース 営業

キーエンスのルールを守らせるルール

営業利益55%超、平均年収が長らく日本一の企業。
キーエンスの強さの裏側を読み解き、再現性を持たせるための企画第二弾です。

ご好評だった第一弾の要約はこちらです!

(前回第一弾の要約)キーエンスの真の強さは裏側にある
①情報収集を評価制度に落とし込む
②営業だけに頼らず、組織全体で顧客データベースを進化させ続ける仕組みをつくる
③データ(事実)から顧客が求めていることを理解し、商品開発、営業プロセス設計をする

今回は、キーエンスの「ルールづくり」をテーマに、さらに深掘りして書いていきます。

※本記事は、2021年9月3日に開催した「元キーエンス世界No.1セールスが語る 高水準の当たり前が出来る再現性のある営業組織の創り方」ウェビナーのポイントを要約しております。

見出し画像

最初に:改めてキーエンスの強さとは何か?

最初に、改めてキーエンスの強さを要約すると下記の3つになると分析をしています。

1. とことん動く(圧倒的稼働率・行動量を担保する仕組み)
2. とことん知る(コンサルティング営業の仕組み)
3. とことん考える(企画力、情報収集の仕組み)

今回は、この3つの裏側で組織として守られているルールを解説していきます。

キーエンスの強さは、
・社員全員が決めたことをやり切る仕組み
・基本を高次元のレベルで徹底する仕組み
と考えており、このルールを守るルールがどうなっているのか…を読み解き、皆さんそれぞれの組織にも活かして頂きたいと考えております。

①とことん動く(圧倒的稼働率)

キーエンスの特徴は圧倒的な行動量です。
キーエンスの行動量は”多い”イメージを持たれている方は多いと思いますが、その“基準”を見ると明確です。

1日最低5件以上、多い日には10件ほど訪問を実施します。

稼働率を見ても、キーエンスの行動量の凄まじさがわかります。
キーエンスの営業の稼働率は40%(普通の企業の稼働率は10 %~15 %)と言われています。
こちらはキーエンスの営業の1週間の過ごし方の図解です。(行動量の多さ…)

スライド20

成果を出す営業組織は行動量が多いことは何となく理解していても、この数字基準で動けている組織は少ないのではないでしょうか?

ちなみに、キーエンスには下記のルールがあるようです。

1日に5件以上の訪問がない場合は、「外出はできない」

行動量は営業成果に直結します。
行動量の基準やルールを組織に浸透させることの重要性を理解することができます。

ルール:外出報告書の存在と記載

さらに裏側の仕組みはどうなっているのでしょうか?
キーエンスでは、外出報告書が存在しています。
外出報告書そのものは特別ではないと思いますが、キーエンスが凄いのは活用方法です。

外出報告書には「面談時間」の記載がマストです。

面談効率を後々確認していくために、訪問の開始と終了の時間を分単位で記入するルールがあります。
え、このレベルまで記入するの…と驚かされます。

キーエンスの外出報告書の記入注意例

  1. 乗車時間・降車時刻(予定)
    訪問当日の営業所・自宅・ホテルを出発/到着時の乗車/降車予定時刻を記入
  2. 乗車時間・降車時刻(結果)
    出発時に車に乗り込んだ時刻と帰社時に車から降りた時刻を記入(1分単位)
  3. 訪問予定時刻:客先と約束した時刻をそのまま記入
  4. 訪問降車時刻
    面談に向かうために、車から降りた時刻を記入(1分単位)
  5. 訪問乗車時刻
    面談終了後、荷物を積み、運転席に乗り込んだ時刻を記入(1分単位)
    ※車に戻らず同一客先で複数担当者と面談した場合、途中の訪問降車時刻と訪問乗車時刻は空欄とすること
  6. 面談時間
    結果は10分単位で記入(1分単位は切り捨てで記入)
  7. 初回面談
    担当営業マンが初めて客先担当者の場合に”○”を記入
  8. 朝一番のアポイント
    朝一番のアポイントが8:30より遅い場合は指定マークと理由を記入

キーエンスは「1分単位で管理される…」という話がネット上で有名ですが、この仕組みのことを指しているようです。
ちなみに、その時間(リアルタイム)に記載できない場合は必ず「約」を記載する必要があります。
外出時の効率性は個人に任せず、組織の仕組みでカバーしているわけです

キーエンスからの学びポイント①とことん動く(圧倒的稼働率)
組織として「営業の行動量に基準をつくる」ことは、営業成果を最大化しようとした際に最初にやるべきこと。
さらに、行動量を担保するために行動を分単位で測定して無駄を産まない仕組みをつくる。

②とことん知る(コンサルティング営業)

続いて、営業の質を高める仕組みとルールについてです。

キーエンスの営業といえば、「コンサルティング営業」という言葉を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?

キーエンスの営業は「キーエンスの持続的成長の原動力」という重責を担っているため、営業の自発的・持続的成長をサポートする様々な仕組みが整備されています。

キーエンスの営業の役割定義
①顧客ニーズの把握・翻訳
②顧客へのソリューション提案
③顧客への徹底フォロー提案実現

行動量が多いだけではなく、
・徹底的に顧客を理解する
・商談の質を高める
仕組みがあります。

ルール:外出前の事前報告

キーエンスの営業は訪問準備に徹底的にこだわります。
事業部ごとに決まったフォーマットを用いてヒアリング事項や訪問の目的などを事前に明確化することによって、商談の質を担保しています。

「目的が曖昧な面談は一切しない仕組み」ができていることが、キーエンスの外出前面談の特徴です。

次の日訪問するすべての顧客に対して、上長と訪問の目的・ゴールを確認するルールがあり、無駄のない営業活動を行っています。

上長との確認例を解説します。

課長:1件目の訪問の目的、ゴールは何ですか?

担当:目的は、○○の仕様の打ち合わせです。ゴールは、提案の内容について合意いただいている状態を目指しております。

課長:このお客さんにどんなニーズと背景があるんですか?

担当:電話でのヒアリングでは、~~ 。

この業界では、XXのニーズが一般的にはあるのでその事例をご紹介する予定です。ニーズの背景は、訪問時に確認します。

課長:裏にあるニーズが何かしっかり確認してきてください。

商談で何を提案して、何を確認するのかを明確にする。
確認は潜在ニーズを突き止めることまでを徹底する。

これがコミュニケーションルールのレベルまで落ちているために、商談の質が引き上がっているわけです。

事前準備が徹底されて、組織として理想の型がつくられた1面談は、このようなイメージとなっています。

スライド27

キーエンスからの学びポイント②とことん知る(コンサルティング営業)
目的が曖昧な面談は事前準備でなくすルールをつくり、とことんお客様を知る仕組みをつくる

③とことん考える(企画力、情報流)

とことん知るのパートに関しては、前回の第一弾でご紹介した内容となります。

キーエンスでは、組織にとって価値ある情報収集をしていない人は評価されない仕組みになっています。

情報収集が人事評価制度まで落ちていることがポイントであることをお伝えしました。
下記は要約です。

キーエンスにおける情報収集行動の評価項目
・ニーズ調査
・海外連携
・競合調査
・事例(ナレッジ共有)

さらに評価だけではなく、賞与まで踏み込んで見てみても、企画や情報収集が評価される仕組みが作られているようです。

業績賞与の50%は、企画(アクション)となっており、下記の項目が評価項目にあるとのことです。

業績賞与の企画(アクション)項目
・売上向上施策
・学習機会の提供
・ナレッジの共有
・競合情報の入力
・海外連携企画

上記の情報収集がルールまで落とし込まれているため、データベースが強化され、組織全体の企画力が高まり、この企画力がキーエンスの独自性につながる仕組みになっています。

このデータベースを強化している人が評価される仕組み・ルールがあることを見逃してはいけません。

画像8

キーエンスからの学びポイント③とことん考える(企画力、情報流)
組織にとって価値ある情報をインプットして、独自性ある企画をした人が評価される仕組みをつくる。

まとめ:ルールを守らせるルール

今回お伝えしてきたキーエンスの強さの裏側を一言でまとめると、ルールを守らせるルールの存在です。

①動き方の細かいルール+②定量化された行動KPI

キーエンスでは、この2つが細かく設定されているのです。

画像5

ちなみに、行動KPIに関しては、全ての項目でランキングを週次で配信(1位から最下位まで)されます。

さらに、全員が成果を出しやすい仕組みになっており、成果を出し、重要KPIを達成すると給与に跳ね返ります。この仕組みが日本一給与が高い会社の裏側にあります。

図解でキーエンスの裏側をまとめると、下記のようになります。

スライド46

キーエンスの裏側のルール設計を理解し、自社の経営に活かしてみてください。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

ベンチャー企業の悩みを解決したい方はこちらから詳細を御覧ください