事例概要
1.manabyは、ITスキルを習得できる独自のeラーニングコンテンツを利用した障害者の就労支援を行っている。支援方法に関するコンテンツとノウハウは蓄積してきた一方、より多くの人を、そしてよりよい環境での就労の支援するためには事業を拡大していく必要があり、その方法やノウハウが不足していた。
2.事業拡大の方法についてリブ・コンサルティングに相談。自社だけでは思いつかないような複数の選択肢をともに検討しながら戦略を練り方向性を固めたことにより、限られたリソースを有効活用しながらスピード感ある事業展開の実現を目指している。
事業内容と会社設立の背景について
大島 manabyの事業内容と会社設立の背景について教えてください。
岡崎 当社は「自分らしく働く」ことをコンセプトとした就労支援事業を行っています。身体、精神などの面で障害を持つ方々に対して、ITスキルを学べる独自開発のeラーニングコンテンツ利用した支援を提供しています。
大島 就労支援を行う会社は複数ありますが、現在の事業モデルに至った背景を教えてください。
岡崎 私は大学在籍時に障害害の就労支援を行う企業にてインターンを経験したことがあり、それがきっかけとなって2009年に就労移行支援の施設を作りました。当時の就労移行支援の方法はどの企業でもほとんど同じで、当社の事業内容も、働く意思がある人に訓練機会を提供し、出口として就職先を紹介するというものでした。そこである方との出会いが今のサービス設立のキッカケになったと思います。
その方はある専門技術をお持ちだったのですが、当時事業所のあった青森には、その技術を活かせる就職先がなく、就職活動のために上京しました。しかし長距離の移動や人混みで体調を崩し、東京での就職を断念。その後われわれが紹介できたのは、掃除会社の仕事だけでした。
大島 その方の持つスキルや意向に合わないお仕事だったのですね。
岡崎 はい。当時も今も、われわれが就労支援する方は障害の中でも精神障害を抱えた方が8割くらいです。身体障害や知的障害を持つ方と比べると、精神障害の方は後天的に発症するケースが圧倒的に多いという特徴があります。
つまり、身内、友人、職場の人などとのコミュニケーションが負担となり、それが精神障害の原因となったわけです。そのような方々にもともといた社会(環境)に復帰させようとしても、働き続けるのは難しいでしょう。結果、長続きせずに辞めてしまうことになるのです。
大島 もともといた場所(環境)や、一般企業に勤めることが就労支援のゴールになるとは限らないということですね。
岡崎 はい。就職先のマッチングは就職支援のゴールの1つかもしれませんが、働き方は1つではありません。会社員として働いている人は、上司、同僚、後輩と一緒に働くことが当たり前だと思ってしまいますが、それが当たり前ではない人がいます。そういう方に向けて自分らしく働ける方法を提案する必要があると思ったのです。
大島 そこで在宅という道が見えてくるわけですね。
岡崎 前述したエンジニアの方の例でいえば、既存の働き方の枠組みにはめ込んでしまうと、マッチングできる仕事は掃除の仕事だけになってしまいます。しかし、テレワークなどを含めて働き方の幅を広げれば仕事の選択肢が広がります。その視点で就労移行支援の新たな方法論を考え、16年にmanabyを設立することになったのです。
コンサルティング活用とリブ・コンサルティング選定理由について
大島 事業拡大に向けてコンサルティング会社を使おうと考えた理由を教えてください。
岡崎 就労支援の分野ではそれなりの知見と経験があります。しかし、会社をスケール(事業拡大)させ、事業所を増やしていくことなどについては専門外ですので、コンサルティング会社の力を借りようと考えました。当社はベンチャー企業ですのでリソースが不足しています。自分たちだけでできることには限界があるという前提に立って、よりスピード感を持って成長していくために周りに協力してもらおうと思ったのです。
大島 具体的にどんなコンサルティングを希望していたのですか。
岡崎 事業をスケールする戦略立案です。スケールするためには経営判断としてアクセルを踏み込む必要があります。間違った方向に進まないようにするために、アクセルを踏む前に方向性をしっかりと決めたいと思いましたし、そこには資金と時間をかけようと思いました。
大島 リブ・コンサルティングにご依頼いただいた理由を教えてください。
岡崎 経営者の会で関社長と出会い、とても優秀な方だと感じたことが依頼に至った理由です。コンサルティング会社に依頼するのは初めてのことでしたが、関社長が信頼できる人だと感じたため、他社との比較はしませんでした。その後、実務を担うコンサルタントの方々と話し、戦略づくりの面で協業していくのですが、想像した通り皆さん誠実で、リブ・コンサルティングに依頼して正解だったと感じます。
大島 戦略はどのように作っていったのですか。
岡崎 スケールの方向性にはいくつかパターンがあり、全ての事業所を直営で増やしていく方法があれば、フランチャイズのような方式でノウハウを提供しながら事業展開していく方法もあります。そのような選択肢を出してもらいながら、当社の強みや外部環境などを踏まえて、われわれにとって最適な戦略を判断していく流れでした。
その際に感じたのは、選択肢を出すスピードが速いということです。戦略のアイデアは自分たちでもある程度は思い浮かびます。その中から実現性が高いものや成果が見込めるものを絞り込んでいくのですが、リブ・コンサルティングからは、自分たちが絞り込んだ上位何個かの案と並ぶくらい洗練された案がすぐに出てきます。その中には、自分たちには思いつかないような案もあり、その案を検討した方が良い根拠として、必要な情報も揃えてくれました。最適な戦略を取るためには、まず十分な選択肢がなければなりません。その点から見て、リブ・コンサルティングの支援はさまざまな選択肢を示してくれた点がよかったと感じます。
大島 選択肢を並べ、その中から判断していくという方法がうまく機能したのは、岡﨑社長の経営判断が論理的だったからだと感じます。感性や感情重視の経営者の場合、選択肢の比較検討まではできますが、最終的な判断で迷ってしまうことが多いのですが。
岡崎 感性重視の経営がうまくいくパターンも多いと思いますが、私は経営判断と自分の思いなどを切り離して考えるようにしています。われわれにとって重要なのは、”世の中にとって価値ある事業を広げること”です。方法論より目的が大事ですので、目的を果たせる良い方法があるなら、自分がどう思うかは関係なく、その方法を取り入れるのが良いと思っています。
大島 コンサルティング会社を使うことも、方法より目的を重視した判断ですね。オーナー経営者の中には外部の力に頼らず、自分たちで道を切り拓こうと考える人もいます。
岡崎 どんな事業を、どれくらいのペースで展開していくかによるのだと思います。じっくり時間をかけて自分たちの思いを実現させていこうと考えているのであればコンサルティングは不要です。一方、短期間で事業を拡大したいのであれば、躊躇せずにコンサルティング会社に依頼し、必要な協力を得る方が良いと思います。
当社を含むベンチャー企業は圧倒的に後者のパターンが多いはずです。とくに外部から資金提供を受けているベンチャー企業はスケールを急ぐ必要がありますので、支援を受けながら短期でスケールしていく仕組みを有効に活用できるでしょう。コンサルティング会社を使うメリットの1つは成長にかける時間を短縮できることです。お金で時間が買えるのであれば、手持ちのキャッシュフローの範囲で買ったほうがいいと思いますし、リブ・コンサルティングのようにベンチャー企業に投資する仕組み(コーポレートベンチャーキャピタル/CVC)も魅力的だと感じます。
コンサルティングの成果と今後の展望
大島 支援内容についての成果をどうお感じでしょうか?
岡崎 コンサルタントと話をしていく中で、自分たちが考えていることが可視化され、客観的にアウトプットできたことが良かったと感じます。コンサルタントとの会話の中で「頭の中が整理された」と言ったことがありましたが、まさにその感覚で、どこを目指し、そのために何をすれば良いかがすっきりわかりました。自分たちだけで考えていると、やれる、できると信じていることがたくさん思い浮かび、そのせいで、やったほうがいいことや、集中した方がいいことが見えなくなることがあります。
しかし、コンサルタントが客観的に見てくれることで、優先順位がわかるようになりますし、結果として限られたリソースを効果的に使えるようになります。
ゴルフを例にすると、自分の身体なので我流でいろいろとフォームを考え、何となくこうかな、こうやってみようと取り組むのも良いのですが、レッスンを受けて、客観的な視点で自分の身体の使い方を指摘してもらった方が、結果として早く上達すると思います。コンサルタントとの連携はそれと似たところがあると思います。
大島 最後に今後の展望について教えてください。
岡崎 われわれが目指しているのは、一人ひとりが自分らしく働ける社会を作ることです。ゴールは変わりませんし、今後の展望という点でも、ゴールに向かって粛々と取り組みたいと思っています。
その過程では新たな課題とぶつかることもあるでしょうし、組織が拡大していく中で問題が生まれることもあります。その都度、内部、外部の力をうまく活用しながら、挑戦を続けたいと思っています。