コンサル支援で事業拡大を推進するとともに 出資を通じて「ともに歩む仲間意識」を醸成す
PROJECT

事例概要

1.リブ・コンサルティングは、ラフールの事業内容やビジョンに共感し、同社に向けた投資を実行。コンサルティングでは営業・マーケティングを中心とした戦略策定、実行を支援。このプロジェクトは、当社にとって投資とコンサルティングの両方を行う初のケースとなった。

2.「第二の創業」ともいえる事業の方向転換を推進するためにコンサルティングを活用。「ラフールサーベイ」を軸とする事業モデルを定着させるとともに、事業展開や意思決定のスピードが向上。

3.事業展開が早く、経営層が考えるビジョンが常にアップデートされ、現場の実行が追いついていないこともあった。そこでコンサルタントが間に入り、ビジョンを具体的な戦略・戦術に落とし、実行までサポートすることで事業スピードを上げることが出来た。

事業内容と出資背景について



権田 ラフールの事業について教えてください。

結城 当社はメンタルヘルスとテックの掛け合わせを通じて企業の健康経営を実現する会社です。企業でのストレスチェック制度の実施が義務付けられて以来、メンタルヘルスの重要性や、生産性への影響などについての理解は広まっています。
ただ、多くの企業でストレスチェックが形骸化し、何が生産性の低下につながっているかを把握できずにいます。このような状況を踏まえ、当社は大学や医師などの専門家による知見を取り入れた、プレゼンティズムを見える化する、ただ一つののサーベイ『ラフールサーベイ』によって、企業の組織課題を多角的に分析し、「どこで何が問題になっているのか」を見える化させることで生産性を診断します。これまでお取引してきた3000社・18万人のメンタルヘルスデータをもとに、 健康診断や、ウェアラブルデバイスによるデータの収集と分析、生産性向上に向けた要因特定研修やカウンセリングなどの対策を提供し、企業の生産性向上を実現、働き方改革や健康経営を促進しています。

権田 メンタルヘルスの分野はどのように変わっていくのでしょうか?

結城 30年後の地球では、人類が100億人に達し、同数のAIロボットが活躍するといわれています。その頃には医療が発達してフィジカル面でのストレスは減っているはずですが、多くの仕事がAIに代替されることなどが原因となり、メンタル面のストレスは増えるだろうと予想できます。
そのときに人類を救える解決策を提供できるように、現在『ラフールサーベイ』を通じてビッグデータ集めているところです。また、突拍子のない話に聞こえるかもしれませんが、AIは人間の100倍のIQを持ちますので、AIがメンタル疾患を起こす可能性があります。IQの差が大きくなるほど人間とロボットの共存も難しくなります。その課題を解決し、鉄腕アトムやドラえもんと共存するような世界にしていくために、AIのメンタルケアやAIに道徳をインストールするといったロボット向けのメンタルヘルスの研究も重要になっていくだろうと考えています。

権田 ラフールは、CVC(corporate venture capital)のスキームを通じて当社を含む複数の事業会社から投資を受けています。その背景について教えてください。

小梨 当社は2年前に社名を変え、事業の方向性を変えました。当時の事業はうまくいっていたのですが、30年後の人類貢献を本気で目指すのであれば、目先の売上や利益を追うのではなく、新たな資金調達をしてでも、ビッグデータの研究、解析、利活用を行っていく必要があると考えたからです。
また、われわれが手がけるメンタルヘルスは幅広い分野で他企業とシナジーを創出できます。そのため、エグジットに重点を置くVCからの資金調達よりも、ビジョンを共有し、シナジー創出に関心を持ってくれる企業からCVCで資金調達しようと考えました。
リブ・コンサルティングから出資を受け、同志的結合の関係が築けた背景にも、貴社の「100年後の世界を良くする会社を増やす」ミッションと、われわれが目指す30年後の人類貢献がマッチした部分が大きいと理解しています。

事業の方向性と今後について



権田 2年前、ラフールにとって第二の創業といえる大きな転換点を迎えたと思います。その後の変化について教えてください。

小梨 メンタルヘルス×テックを軸として組織の土台を固め始めたのが2年前です。社内の変化としては、この方向転換に伴ってそれまで勤めていたスタッフの辞職が続きましたが、一方で、テック系の人財採用を進めました。結果、プロダクトを磨いていく体制ができ、サーベイが完成します。営業活動においても、それまではメンタルヘルス研修の提案がメインでしたが、『ラフールサーベイ』の完成後は、経営課題の見える化や、ストレスチェックツールを使った分析などが増えました。ITカンファレンスなどに参加した実感として、「ラフールといえばメンタル×テック」と認識される機会が増えたと感じます。

権田 社会的にもこの数年間でメンタルヘルスの捉え方が変わったのではありませんか。

結城 変わったと感じます。8年前に創業した当時は、研修などを提案しても「メンタルヘルスって何ですか」といわれることがほとんどでした。2015年にストレスチェック制度が義務化された時も、とりあえず義務化に対応するという意識が強く、多くの企業が、必要最低限の機能を安く導入したいと考えていました。
われわれはメンタルヘルスが生産性や経営にもたらす影響を周知したいと思っています。経営層にも、自分や社員たちのメンタルヘルスに目を向けてほしいと思っています。しかし、そのような提案をしても提案先には響かず、「結城くんは性善説」「そんなところにお金かけられる会社はない」と言われていた時期があったのです。

権田 根気よく提案を継続できたのはどうしてですか。

結城 ブラック企業、過労死、パワハラといったニュースがよく取り上げられるようになり、社会全体がこの分野に関心を持つようになりました。その結果、導入を検討してくれる企業が増えたことが支えになりました。
また、私自身も25歳の時にメンタル疾患を起こした経験があります。それまでは、まさか自分が患うと思っていなかったのですが、誰でもなる可能性があるとわかったのです。そのことを多くの経営者に伝え、知ってもらおうと取り組んでいたことも心の支えになったのだと思います。

リブのコンサルティングについて



権田 2018年から事業拡大に向けて当社が支援させてもらっています。感想を教えてください。

結城 コンサルタントは組織の外側から意見を言う立場ですので、一種の偏見として、コンサル活用の効果にも限界があるだろうと思っていました。ところが、リブ・コンサルティングの場合は全く違いました。当事者意識が強く、ラフールのことを好いてくれているのがとてもよくわかります。
常駐で支援してもらっていることもあり、たまにリブさんのコンサルの人を「うちの人だっけ」と錯覚することもあるくらいです。率直な感覚としては、コンサルというより仲間という感覚を持っています。契約で成り立っている関係ではあるのですが、ビジョンを共有していること、CVCを通じて投資してもらっていることも含めて、今後も同志的結合の関係を継続していきたいと思っています。

権田 ラフールへの出資は当社CVCのロールモデルであり、この事例を通じて他のベンチャー企業にも出資とコンサルティングを合わせた経営参加型支援の活用価値を広めたいと考えています。ベンチャー起業にとってはどんなベネフィットがあると感じますか?

小梨 ベンチャー企業は、創業者が何もないところからサービスを作り出し、同時進行で売っていくことが求められます。作りながら走るため、スピードが早く、先回りして手を打っていくことも増えます。それは会社を成長させていく上で重要なことなのですが、経営層が考えていることと、社員に任せている実務の間に溝を生む原因にもなります。
例えば、30年後の人類貢献というミッションが、社員にとって突拍子もない発想に映る場合があるのです。この乖離を埋めるためには、経営層の発想を社員にわかりやすく翻訳する必要があります。また、どんなプロダクトを、どのタイミングで、どういうふうに作るかといった設計図に落とし込む必要もあります。その部分を任せられるのがコンサルタントなのだと思います。

結城 もう1つ重要だと思うのは、コンサルタントが持つ経験と知見を踏まえながら会社の土台を作れることです。ベンチャー企業の創業者は、良くも悪くも自分が究極だと思っているところがあります。そのため、外部の人が課題や改善点などを指摘しても、その声を素直に受け入れにくいのです。しかし、経営者の持つビジョンを確実に実現するために、経営者だけではなく、現場とも伴走し、圧倒的な当事者意識で動いてくれるコンサルであれば、そのような指摘を受け入れやすくなります。
同志的結合によって一緒に土台を固めていけば、経営者1人で旗振りするよりもスケールしやすくなりますし、社員を守ることにもつながります。サービスやプロダクトづくりと、組織づくりの両面で、コンサル支援はベンチャー企業に大きな効果をもたらしてくれると思います。