株式会社リブ・コンサルティング モビリティコンサルティング

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【LiB Mobility経営 vol.12】
市場縮小の時代を見据えた カーディーラー経営の深化を考える

EXECUTIVE SUMMARY

2022年2月3日、リブ・コンサルティングは「カーディーラー経営フォーラム2022春」をオンライン開催しました。
カーディーラー業界の未来をテーマとする本フォーラムは今回が2回目の開催。
既存事業の進化と深化に向けた取り組み事例やカーディーラー経営者が押さえておきたい情報やアジェンダなどを共有しました。この記事では、カーディーラーを取り巻く事業環境の解説(リブ・コンサルティング モビリティ・インダストリーグループ マネージャー 登川塁)と、持続可能なセールスプロセスの構築( 横浜トヨペット株式会社 磯西大輔氏)についてお伝えします。

株式会社リブ・コンサルティング
モビリティインダストリーグループ マネージャー
登川塁
中古車流通業者にて上級店長などを経営後、リブ・コンサルティング入社。
コンサルティング業務に従事。2021年から現職。

 

市場縮小の影響が現れ始めている

カーディーラー市場は縮小不可避です。車の主な購入層である生産年齢人口(15歳から65歳未満)は、2015年を100%とすると、2030年に86.8%、2040年には77.1%に減ると予測されています。また、車の保有台数はすでに伸び率が横ばいとなり、飽和状態に突入しています。
また、リブ・コンサルティングが独自に行ったトヨタ系ユーザー5,000人アンケートで、「全車種併売になった場合、現在お付き合いのあるディーラーを変更する可能性はどの程度ですか?」という回答を2018年の併売化直前と直近の2022年1月のアンケートデータで比較してみたいと思います。2018年段階では離反する可能性について”わからない”という回答も含めて66%であったものが、直近の2022年1月では55%でした。アンケートデータは11%離反可能性は減っていますが、市場自体が縮小しているため、保有顧客の維持・『拡大』に向けて、併売化後も「離反する可能性」があると回答した55%の方々をいかに囲い込めるかが重要となってきます。

事業拡大を見据えた磨き上げが重要

ユーザー向けアンケートの結果を見ると、ユーザーがカーディーラー選択で重視している点は、担当営業スタッフの対応、店舗としてのお客さま対応、購入条件や下取り価格、メンテナンスやサポート体制など。一方、カーディーラーにおいても、担当営業スタッフの対応と店舗としてのお客さま対応に力を入れている企業が多いことがわかっています。つまり、ユーザーが求めていることカーディーラーの取り組みがしっかり合致し、現在の取り組みの内容や方向性は間違っていないといえます。
ただし、市場縮小と併売後のユーザー離反によって販売台数が減っていく可能性があることを踏まえると、シェアの維持にとどまらず、拡大していくための取り組みが重要といえます。そのためのポイントは、デジタル化、本部機能の強化、外部活用です。従来の営業活動は営業担当者を軸として推進されてきました。しかし、顧客接点を増やし、対応の質を高めていくためには、上記3点を踏まえ、既存事業を深化させ、顧客接点を磨く事が求められています。
そこで今回は、デジタル化、本部機能の強化、外部活用を進めながら業務生産性を高め、顧客接点に磨きをかけている横浜トヨペット様の素晴らしい事例に学びたいと思います。

横浜トヨペット株式会社
統一オペレーション開発改善部 セールスプロセス室室長
磯西 大輔氏
2005年横浜トヨペット株式会社入社。
新車販売、店舗活動開発部、営業推進部を経て、現職。

店舗と本部がそれぞれの役割を担う

CASE、ダイバーシティ、コンプライアンス、ガバナンス、デジタル化など、私たちカーディーラーは時代と環境の大きな変化に直面しています。また、この変化によって、営業活動でもっとも大切なヒューマンコミュニケーション、つまり、デジタルとアナログでは語りきれない、人と人同士のぬくもりあるコミュニケーションが失われつつあると感じています。
そこで私たちは原点に立ち返り、営業の醍醐味を考え、営業とは何かを深堀して、今とこれからの時代には「持続可能なセールスプロセス」が必要だと考えました。
従来のセールプロセスは店舗が主体となって展開し、業務の優先順位付けややり方も各店舗とスタッフに任せていました。しかし、私たちはこの構造を変えて、店舗と本部がそれぞれの役割を持って、5:5のバランスで営業活動を展開していくのが良いと考えています。
店舗の役割としては、スタッフのマインドセット、やる気スイッチ、モチベーションアップが重要で、これらによってお客さまを思う気持ちと言動を磨くことができます。一方の本部側の役割では、仕組み、組立て、システムを作ることにより、お客さまが嬉しい仕組みと制度を創出できます。この掛け合わせによって、私たちが考えるお客さま第一主義が実現できます。
私たちは、日々の営業活動を店舗任せにするのではなく、本部にて販売の「型」となるサービスを軸とした活動(SJK)を作り、店舗がその型をベースとして活動しています。また、活動の結果を店舗から本部に戻し、店舗が持つ営業の技術とスキルをさらに発揮できるように、型をブラッシュアップしています。

1人あたり月6台を実現する4つの活動軸

持続可能なセールスプロセスを実現していくためには、保有の維持と拡大が不可欠です。
そのための目標として、私たちの店舗では、既存のお客さまが70%、新規のお客さまが30%を理想しています。また、4つの活動軸を展開することによって1人当たり月6台の販売台数を目標としています。
4つの活動軸の1つ目は、既存のお客さまを対象としたSJK。この取り組みの効果として1つ当たり月3台の販売台数を見込んでいます。
2つ目も既存のお客さまが対象で、新型車、クロスポイント、保険屋、au、法人訪問などに置いて適時、適正なアプローチを行い、1人あたりの販売台数で月1台を見込んでいます。
3つ目は、新規のお客さんを獲得する紹介営業。従来から紹介してくれているお客さまとは別に、新たに紹介をもらうための活動を展開して、1人あたりの販売台数で月1台を見込んでいます。ここはリブ・コンサルティングさんのコンテンツをベースにした取り組みで、2020年から活動を開始しています。
4つ目は、新規のお客さんを獲得する店頭と展示会。Web送客やショッピングセンターなどでのイベントを行い、1人あたりの販売台数で月1台を見込んでいます。

科学の視点でプロセスを改善

販売プロセスについては、私たちは、営業の販売は科学だと捉えています。カーディーラー業界では、営業は気合い、という考えが根強く、以前は私自身もそのように考えていた時期がありました。しかし、持続可能なセールスプロセスを構築していくためには情熱に科学を掛け合わせることが重要です。
例えば、事前準備からクロージングに至る販売プロセスを分けてみると、事前準備として顧客の理解、ニーズの想定、必要な情報の整理が必要です。学術論文などでも、事前準備の差がトップセールスと下位セールスの差を生み出していると論じているものがあります。また、営業は気合い、という考えが根強いのと同様に、カーディーラー業界では量を積み重ねて結果につなげる風土と風習もあります。ここにも科学が必要です。量を追うだけの営業は営業担当者に暗闇を走らせるようなもので、非常に苦しい活動になります。そのため、ゴールに至るまで最短のプロセスと、どれくらいの量を、どの程度の質で取り組むのか明確にして、ゴールから逆算する形で、指標を出し、結果に結びつくポイントを提示していくPDCAサイクルが重要です。
これができるのは本部です。科学の視点で本部が「型」を提供することで、店舗と本部がそれぞれの役割を持ち、持続可能なセールスプロセスを実現することができると考えています。
私たちの取り組み事例として、お客さまへのアプローチでは営業担当者がやることを明確にし、提案については、お客さまにとって最適なカーライフをトータルコストでプランニングできる提案システムを導入しました。査定は、従来のやり方は、査定業務、相場情報の収集、プライシングといったことに工数と時間がかかっていました。そこで私たちはAI査定を導入し、工数低減とスピード回答を実現。お客さまにとって公平感があり、競合に対して競争力ある値付けすることができるようになりました。また、受注については、SJKと適時適正なアプローチによってお客さまの購買意欲を高めながら購入が決まり、営業担当者とお客さまのマインドがクロスした瞬間に紹介営業を発動します。その方法についても、いつ、どこで、誰が、何を、どのように行うか指標とともに明確にしています。

外部連携で期待以上の結果を創出

このような取り組みの結果、月末段階での翌月の入庫予約は、SJK導入前の37.9%から62.2%に上昇。下取りは、AI査定によって査定時間が55分から16分に大幅に短縮できたこともあり、下取り率がAI査定の導入前後で64.9%から70%超となり、査定件数も月23.6件から28件近くまで上昇しました。
さらに大きな成果として、リブ・コンサルティングさんと一緒に開発した紹介獲得の取り組みにより、取り組み開始から約1年で紹介受注が1,000台以上増えました。
1人当たりの月間受注台数は、目標6台に対して直近で5.13台となり、まだ改善の余地はありますが、目標達成も、目標達成のための型の改善点も見えている状態です。
今後の取り組みとしては、持続可能なセールスプロセスを推進していくためにマネジメントの型作りとカスタマープロセス化が必要だと思っています。マネジメントの型作りでは、ファネル分析、システム設計、教育カリキュラムの作成などがポイントになり、これらが今後の私たちの課題といえます。カスタマープロセス化については、販売の型を統一し、浸透させていくとともにプロセスを細分化し、磨き上げることによって、お客さま軸でより高効率な活動を行っていきたいと考えています。
私たちにとって、コンサルティングファームなど外部企業と連携する取り組みは過去に経験がありませんでした。今回の取り組みを通じて、真剣に意見をぶつけ合うことによって改善につながる大事な原石が生まれると理解しましたし、ビジネス視点に立った物事の考え方や仕事の進め方も社内にインストールすることができました。
今後も様々なプロジェクトで支援で受けながら、業界内企業ともお客さまのカーライフを支える立場として手を取り合い、お互いに切磋琢磨しながらカーディーラーを憧れの職場にしていきたいと考えています。

▼「併売化アンケート」の調査レポート▼
UPDATE
2022.04.05
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