COLUMN
【LiB Mobility経営 vol.4】
カーディーラーが取り組むべき 中古車事業強化の5つのステップとは
2021年5月21日、リブ・コンサルティングは「2021年中古車事業強化セミナー」をオンラインにて開催しました。
中古車事業は、カーディーラーが新規顧客獲得やバリューチェーン強化を狙える事業です。
この記事では、累積300社を支援する当社モビリティ・インダストリーグループ、
金原正尚マネージャーの講演内容を紹介します。
中古車事業は外部環境に影響を受けにくい
まずは中古車の市場動向について押さえておきましょう。
新車と中古車を比較してみると、新車は販売台数の浮き沈みが大きく、とくに直近では消費税増税とコロナ禍の影響を受けて急速に減少しました。一方、中古車は景気などの影響を受けにくく、2020年度の販売台数を見ても、新車が前年度比92.4%、乗用車に限ると88.7%であったのに対し、中古車は前年度比101.3%、乗用車が99.2%です。
次に、中古車取扱店の業態についてです。
ここではランチェスター戦略の考え方に基づき、縦軸を取扱商品に置いて、フルラインナップ戦略か差別化戦略(専門店)か。横軸を商圏に置いて、全国展開か地場密着型か、という2軸で整理しています。例えば、業界大手のビッグモーター、ネクステージ、ガリバーはフルラインナップ戦略×全国展開で成長している会社、グッドスピードはSUV特化型×東海エリア×ドミナント展開で成長している専門店分野の会社です。
私はこの4社を中古車業界のBIG4と呼んでいますが、今後は大手集約化が進行していくと考えられます。米国の中古車業界ではすでに大手集約化が進んでおり、国内においても、家電量販店業界でヤマダ電機やビックカメラなどが規模を拡大しているのと同様に、中古車業界もその方向に向かって進んでいくだろうと予測できます。
事業強化の5つのステップ
このような背景を踏まえて、中古車事業の事業化と強化について見てみます。
事業強化は5つのステップで考えるとわかりやすいでしょう。
5つのステップは、1)中古車事業の戦略構築、2)自社の仕入強化・商品化強化、3)販売促進と集客強化、4)マネジメントと営業力強化による販売強化、5)在庫と仕入れ管理による収益強化です。
では、1つずつ見てみます。
1)中古車事業の戦略構築は、大きく3つの目的が考えられます。
1つ目は、中古車専売店型モデル。BIG4のように中古車事業を単体で収益化して新規顧客開拓に結びつけていく戦略です。
2つ目は、新中併売集客強化モデル。新車ディーラーの強みである拠点数と顧客数を生かし、中古車販売を活性化させるとともに、中古車をフックにして新規顧客を呼び込む戦略です。
3つ目は、バリュチェーンモデル。新車と中古車を専売店としつつ、新車販売時の下取り車両を中古車部門で再販することによって全社で収益化させる戦略です。
事業の目的が定まっていないと、中長期の計画が曖昧になり、場当たり的な取り組みになってしまいます。これを避けるためには、目的を明確にすることが重要です。目的を定め、戦略を策定し、投資するところとしないところのメリハリをつけた取り組みを行っていくことが求められます。
2)自社の仕入れ強化では、自社の「活きた車両=活きタマ」を定義することが重要です。例えば、1台当たりの粗利で収益を確保できる車を扱うのか、あるいは、粗利が小さくても付帯商品の販売や保険提案で収益を確保できる車を扱うのか。現場が売りやすいか、仕入れやすいかといったことを見極めた上で、全社で重点的に活きタマを仕入れていく必要があります。
とくに昨今はコロナ禍の影響でオークション相場が上昇しています。単価が高くなれば利益も確保しづらくなりますので、例えば、新車購入者への早期代替アプローチなどによって下取や買取を強化していくことが大事です。
3)販売促進と集客は、チラシ、ウェブサイト(ホームページ、ランディングページ)、ポータルサイトなどの手段があります。広告宣伝費がかかるのもこの順番で、昨今は年配の方しかチラシを見ることがなく、40歳以上の人たちもインターネット経由で問い合わせする実態があることから、これから取り組むのであればウェブサイトやポータルサイトの2つが中心になるでしょう。
基本的な考え方として、自社商品に価格優位性や希少性がある場合はポータルサイトで勝負できます。それが難しいようであればウェブサイト活用になりますが、ホームページやランディングページでは、月ごとに企画を提案し、販売促進することが重要です。中古車は車両についての問い合わせもありますが、キャンペーン企画などがフックとなるケースも多いため、企画をしっかりと作り込むことが重要です。
4)マネジメントと営業力強化は、歩留まり向上につながり、販売強化に結びつきます。ポイントは、セールスストーリーから逆算した導線で展示場を作ること。具体的な施策として、展示車のPOP、車種選定、見積作成などの面で自社の勝ちパターンを構築することが重要です。当社の支援を例にすると、例えば、臨店調査や店舗ごとのインタビュー調査などを通じて勝ちパターン構築に向けたアドバイスなどを行っています。
5)在庫と仕入れ管理による収益強化は、感覚ではなくデータを踏まえた取り組みが求められます。データは、売れ筋の車種、長期在庫、価格帯、仕入ルートの分析などで、これらデータの管理と活用が収益強化に結びつきます。
ここもコンサルティングファームによる支援が効果を生み出しやすい分野です。当社の支援を例にすると、在庫管理についてはベンチマーキングがありますし、各社が持つデータを我々が分析し、在庫管理や仕入れ管理を最適化するための示唆を提供することができます。
カーディーラーは新車販売時の下取りから再販という流れを作りやすく、活きタマを効率よく確保するという点で中古車専門店と比べてアドバンテージがあります。
一方で、中古車事業の戦略策定が難しい、経営資源(ヒト・モノ・カネ)が足りない、中古車事業に特化した人材育成が難しいといった課題もあり、それが中古車事業の収益化を阻む要因になっているケースも散見されます。
これら課題を解決し、新規顧客の獲得とバリューチェーン強化を実現していきましょう。
中古車領域は専門性が高いため、中古車事業診断から受け付けています。ご関心がある企業様はお問合せください。
- UPDATE
- 2021.07.08