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【ASF/EV モーターズ・ジャパン/フォロフライ】日本発EVベンチャー3社のトップに聞く 商用EVの現在地と未来予想図

EXECUTIVE SUMMARY

2022年は日産SAKURAの販売により軽EVが普及し、2023年はメルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲンがEVラインナップを拡充し、輸入車EVが普及しました。2024年は、N-VAN e:の発売により商用領域においてのEV化の流れがより一層盛り上がるのではないかと考えております。

そこで今回、商用EV領域において先行してお取り組みをされております3社様 ASF株式会社・株式会社 EV モーターズ・ジャパン・フォロフライ株式会社(アルファベット順に表記)の代表3者に対談形式でインタビューを行いました。

プロフィール(アルファベット順)

ASF株式会社

2020年設立。
主力商品は佐川急便と共同開発した商用小型EVのASF2.0。
https://www.asf-ev.com/

代表取締役社長 飯塚 裕恭 様(トップ画像左)
1965年生まれ、1985年にヤマダ電機入社。2018年同社副社長に就任。ヤマダ電機での35年間でIT(社内システムや顧客ポイントカードなど)推進などの新規事業立ち上げに携わる。20年同社を退社しASFを設立。

株式会社 EV モーターズ・ジャパン

2019年設立。
主力商品は独自技術の「アクティブ・インバータ」を搭載したEVバスやEVトラック。
https://evm-j.com/

代表取締役社長 佐藤 裕之 様(トップ画像中央)
2009年、充放電装置のメーカーを設立し、充放電装置でトップシェアメーカーとなる。11年3月、自社の福島工場が被災。12年からEVバスの開発・実証に乗り出す。19年4月、EV モーターズ・ジャパンを設立。

フォロフライ株式会社

2021年設立。
主力商品はバンタイプ・平ボディタイプのコンパクトEV。
2024年4月には1.5~2.5㌧の積載量に対応するF2(エフツー)を発表。
https://folofly.com/

代表取締役 CEO 小間 裕康 様(トップ画像右)
1977年生まれ。京都大学大学院修了。2000年にコマエンタープライズを設立。事業部門の創再生を中心に手掛けるBPO事業で、年商20億円まで成長させる。10年にグリーンロードモータース(GLM)を設立し、国内初のEVスポーツカーでの認証を取得し、2017年に香港でのSPAC IPOを実施。スポーツカーで実践した先端技術開発のノウハウをもとに、21年に商用EVを開発販売するフォロフライ㈱を設立。

成長の余地が大きいからチャンスがある

―リブ 商用EV市場に参入した背景と狙いを教えてください。

―ASF 飯塚 私たちASFは軽商用EVの企画やファブレス製造(製品製造のための自社工場を持たない製造業 )を手がけるベンチャーとして2020年に創業しました。その背景の1つは環境問題です。軽の乗用車と比べると軽商用車の走行距離は4〜5倍ほどあり、商用車のEV化はCO2排出量の削減効果が大きいといえます。また、国内のEV市場もこれから伸びていく余地が大きく、事業を通じて社会的価値を生み出していけると考えました。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 私は30年以上にわたってリチウムイオン電池の充放電応用システム開発に携わってきました。世界的にEVが普及していく中で、最新の技術を車に搭載すれば電力消費量や寿命の面で世界最高クラスの商用EVが作れると考え、EV モーターズ・ジャパンを設立し、現在はEVバスの開発を手掛けています。日本はエンジン車で世界をリードしていますがEVは遅れをとっています。バッテリーやインバーターなどの技術を起点としてEVの日本モデルを構築したいと思っています。

―フォロフライ 小間  ESG(環境/社会/ガバナンス)の浸透によって小売大手などでは物流のカーボンニュートラルに取り組んでいます。しかし、ラストワンマイルを担うEVがなく、充電インフラも整っていません。その課題解決を目指したことがフォロフライ設立の背景です。私たちのファーストモデルはコンパクトサイズのEVです。現在のEVはガソリン車と比べて高価格ですが、私たちは開発において、大手自動車メーカーとの部品共有化によるコストダウンを実現し、ガソリン車並の低価格での提供を実現しています。また、ラストワンマイル輸送のトラックは1日100kmほどしか走らないため、長距離航行を前提とした高価なバッテリーを大量に載せる必要もありません。車庫に充電器があれば良いため、街中に充電設備を増やす必要もありません。このような利点に着目して、物流事業者のニーズに応える車を安価に提供していくことが私たちの目標です。

ユーザーの意識は着実に変化している

―リブ  国内では乗用車のEV化率が10%前後で推移しているのに対し、商用車は2%前後にとどまっています。一方では、政府、自治体、輸送関連の各団体などがEV化推進の施策を打ち出し、商用EVが普及していくフェーズに入りつつあるようにも見えます。商用EV市場をどのように捉えていますか?

―ASF 飯塚 日本はハイブリッドエンジンの性能が良かったこともあってEVの取り組みが遅れました。とくに商用EVの市場はゼロから市場を作っていく状況にあり、私たちはそこにチャンスがあると思っています。自動車業界全体でも、三菱自動車が軽商用EVの生産を再開し、ホンダは24年から軽商用EV市場への参入を発表しているなど自動車大手メーカーも注目しています。その背景には環境に配慮した各社のESG経営がありますが、私たちのようなベンチャーの動向もトリガーの1つになったと思っています。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 台数や普及率はこれからですが、ユーザーの意識は大きく変わってきましたよね。バス事業者の間では再びディーゼルには戻らないという強い意志を感じます。また、EVバスへの置き換えを想定して、充電インフラをどうするか、寒冷地対策はあるかといった導入に前向きな議論も増えています。

―フォロフライ 小間 商用EVの導入は、まずは試験的な導入で安全性やオペレーションなどを確認し、次に複数台の導入でガソリン車とのコスト比較を検証します。そして、コスト面でEVに優位性があることが実証されると本格導入が始まります。現状は2つ目のステップですが、ラストワンマイルのEV化に関しては、これからの1、2年で3つ目のステージに向かうと思っています。国内の自動車産業はガソリン車製造のサプライチェーンがあり、EV普及に向けたレガシーコストやスイッチングコストの課題もありますが、私たちのようなEVベンチャーが存在感を増していくことで市場が大きく変わっていくだろうと思います。

―リブ 直近の動向や取り組みについて教えてください。

―ASF 飯塚 私たちは2023年から販売を始め、佐川急便様やマツキヨココカラ様などにEVを導入しているほか、ダスキン様などでも実証実験がスタートしています。販売チャネルが少ないのが課題ですが、地域のディーラー系以外の中古車販売店や地場の有力企業などから私たちのEVの販売代理店になりたいと打診を受けるケースも増えています。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 2025年の大阪万博に向けて、自動運転を含む日本の技術をアピールできる車両の提供を進めています。バスの運転手は大勢の乗客の命を預かるため、体調不良などが生じた時に車が異変を自動検知し、車両を制御しての路肩に自動で減速して停めるといった機能が求められます。そのための技術を世界の市場で競争力となる日本モデルとして提供していきたいと思っています。一方では、物流の2024年問題と同様で運転士不足も課題です。日本の場合、すぐに無人運転に切り替えるのは難しいため、私たちはおしゃれで近未来的なデザインの車両を開発し、こういう車を運転してみたいと思う運転士候補を増やしていきたいと思っています。

―フォロフライ 小間 24年3月30日に、東京ビッグサイトのイベントでラストワンマイル向け中型車両のニューモデルを発表しました。日本企業の伸び悩みが懸念され、ものづくりスタートアップには赤字のイメージがあります。私たちは、国内外の自動車メーカーで共有プラットフォームの開発を進め、水平分業モデルを使いながら、開発費のシェアリングエコノミーを実現することで、自動車産業を革新し、収益性の高い新しいビジネスモデルに変えていこうと考えています。

解決しなければならない外部要因

―リブ EV普及では補助金の有効活用やインフラ整備といった課題があります。

―ASF 飯塚 そうですね。補助金は事業者にとってEV導入の追い風になりますが、その内容や補助対象をより明確にする必要があると思っています。

―フォロフライ 小間 将来的にEVが安くなっていく可能性を考えると、私は補助金はなくても良いのではないかと思います。メーカー側としても補助金なしで製品を普及させていくことが求められていると感じます。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 EVバスは補助金なしでは導入が進みづらくなるかもしれません。日本の公共交通は国ではなく地方自治体が支えているため、財政が厳しい地方に行くほど赤字すれすれの経営になります。地方で使っている20年落ちのバスはサビなどによってフレームやシャシーが劣化していることもあり、安全性の確保も問題です。EVバスの導入はこのサイクルを変えていく1つのきっかけになり、補助金によるコスト負担の軽減が必要なケースも多いと思います。

―リブ 物流事業者はEV導入のコスト負担はどう捉えているのでしょうか?

―ASF 飯塚 物流業者の収益はコロナ禍で大きく伸びたため、前年比でみると伸び悩んでいるように見えますが、長い目で見ると収益は右上がりです。ただ、EVは車両価格が高いため、簡単に導入できるわけではありません。そこで補助金が生きるわけですが、インフラ補助金制度の実態としてはEV導入を目的としたものではなくCHAdeMOなどインフラ設備自体のの工事に補助金が使われているように感じます。その点の見直しや改善も含めて、EVを使いたい人が補助金を受け取れるようにする必要性を感じます。

―フォロフライ 小間 海外では、EVへの補助金を大幅に削減した国もあります。EVのような先進技術は新規開発項目が多く、初期開発の投資が大きくなります。補助金はこのコストが賄えることがメリットですが、段階的に補助を小さくすることによって骨太の事業に育てる責任もあります。また、補助金ありきになることで、事業者が補助金の出るタイミングを待ってしまい、それが日本全体としてのEV普及の遅延につながる可能性もあると思います。

―リブ EVの運用面では充電インフラの整備も課題です。

―ASF 飯塚 そうですね。ガソリンは入れた量に応じて金額が決まりますが、電気はその点が複雑で、さらなる整理が必要だと思っています。

―フォロフライ 小間 幹線輸送など長距離輸送での運用では、高速道路などの輸送中継地点で高電圧の急速充電を整備する必要があります。日本においてCHAdeMO規格は標準となっていますが、高電圧対応のCHAdeMO2.0は、実質、提供できる商品がありません。部品メーカーなどが中心となってコンソーシアムを組み、新技術対応の開発投資をしていくことが求められます。快適で安心安全の日本基準を世界に示すには、自動車メーカーのみならず部品メーカーも関わる領域だと思います。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 CHAdeMOは日本発の企画で世界にも広がりつつありますが、世界で一番高い充電設備と言われることもあり、グローバル市場でガラパゴス化する可能性があるかもしれません。例えば、東南アジアの各国ではCHAdeMOではなくCCS規格を推奨するケースがあり、出力面では、日本では単相交流の100Vや200Vですが、欧州は3相で200Vや400Vで充電できるようにしています。商用車は電池容量が大きくなりますので、その点の整備も必要だと感じています。

自動車業界の変化を捉えて新たな事業モデルをつくる

―リブ 商用EVに参入する事業者側にはどのような課題がありますか?

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 日本の自動車産業は、営業とメンテナンスがディーラーごとに一括りとなっていることが多く、ユーザーも私たちが思っている以上にメンテナンス体制を重視します。ベンチャー企業はリソースが限られているため、メンテナンスやフォローの体制をどのように構築していくかが課題です。EVベンチャーの連携によって、合理的なメンテナンスの仕組みを構築できるのではないかとも思っています。

―フォロフライ 小間 メーカーやディーラーとのしがらみがない、または少ない独立経営の整備工場との連携を広げていくことが1つの手になると思います。EVの普及に伴って、今後はメンテナンス網も共通化していくことが重要ですが、バスや大型トラックなどは街中の整備工場がファシリティを持っていませんので難易度が高くなりますよね。私たちもこれから中型や大型のトラックを導入していきますので、スタートアップ同士やEVに取り組む大手自動車メーカ-のディーラー網との連携が重要だと考えています。これにより、我々だけでなく、今は少ないEVのアフターサービスを実施する地域企業の収益増にもつなげられます。

―ASF 飯塚 資金調達も課題ですよね。

―フォロフライ 小間 外部環境としては資金が集めやすい状況だと思いますが、創業者が経営をグリップしておくことが大事ですよね。開発にはお金がかかるのですが、安易に出資を受け入れず、5年後、10年後もスタートアップらしいスピード感ある意思決定ができるようにしておかないと意味がありません。私たちは「欲しがりません、勝つまでは」をモットーとして安くて安全な商品を作るために、今までのものづくりベンチャーが陥る無駄な開発投資を徹底して圧縮しています。シェアリングエコノミーの考え方で、開発費用を部品メーカーと出し合うモデルも検討できると思います。 

―リブ 最後に今後の取り組みについて教えてください。

―ASF 飯塚 自動車業界内の立ち位置という点で、私たちは自動車メーカーを目指しているわけではないため、商用EVの普及にも取り組みますが、車載バッテリーを利用する発電や蓄電システムの開発や、非接種型充電などでも成果を出していきたいと思っています。

―EV モーターズ・ジャパン 佐藤 米国、欧州、中国などと戦っていくためには、充電器や充電設備、インバーター、航行距離やバッテリー寿命の延長といった差別化となる技術開発が必要で、それらが今後はEV市場の中核を成す技術になっていくと予測できます。また、技術を通じたCN実現への貢献では、車以外にも船、建機、農業機械なども視野に入り、日本では災害時利用のニーズも期待されています。そのようなニーズにも目を向けて、エネルギーマネジメントの視点で技術の底上げに貢献し、成長機会を狙っていきたいと考えています。

―フォロフライ 小間 最近、街中で私たちの車や、ここにいる皆さんの車が走っているのを見て、街の風景がこうやって変わっていくのだろうなと感じました。自動車メーカーの定義が変わっていくように、EVは自動車産業の構造や事業モデルを変える力があると思っています。日本の強みである自動車産業のバージョンアップに貢献しながら、街中に新しい風景を生み出していきたいですね。

UPDATE
2024.04.24
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