COLUMN
EV新規事業開発におけるプロジェクト体制の極意
新規事業開発においても、取組む事業の方向性によって、スピード感やプロジェクト体制を最適に整備することが不可欠です。正解のない世界を進んでいく必要のある新規事業開発においては、適切な判断を行い、素早く意思決定することが大事ですが、その人数や体制もある程度の正攻法は決まっていると考えます。
新規事業創出のステップ
新規事業創出のステップを6段階で整理したものが図1です。ファーストステップにあたるステップ0では、まずプロジェクトチームの組成から行いますが、その形態には大きく2種類あります。すでに取り組むべき新規事業の方向性がある程度決まっているケースと、ゼロから構想してスタートするケースです。
新規事業の方向性が定まっているケース
新規事業の方向性が定まっているケースでは、既存事業との親和性が高いことが多いため、その事業に関わっているメンバーが集まる場合が多いかと思います。そのメンバー構成のほうが事業理解もスムーズなので、スピード感を持って事業開発に取り組めるでしょう。
ゼロから構想するケース
一方、ゼロからスタートする場合は、注意が必要です。特に関連性の強い既存事業があるわけではないので、部署横断で人材が集まってくるケースが多いのですが、新規事業の方向性も何も決まっていないために、人数が多くなる傾向があります。既存事業と親和性のある事業開発であれば、5〜6人いても同じ事業に携わっているので、相手のことを理解しやすくうまくいきますが、ゼロスタートだと5〜6人でも多過ぎるくらいです。一つひとつ考えをすり合わせて確認し合いながら進めていかなければならないので、コミュニケーションコストが非常にかかってしまいます。スピード感を求められる新規事業開発では、これは大きなマイナス要素になるでしょう。
ゼロから始める新規事業開発の立ち上げメンバーは、3人がベストだといわれています。3人であれば、コミュニケーションコストは低く抑えられますし、方向性を握りやすく、軌道修正もしやすいといえます。それなら2人のほうがいいと思うかもしれませんが、2人ではアイデアの引き出しが少なくなってしまうため、お勧めはできません。3人の構成は、プロジェクトを客観視できる経営企画部といった部署と現場よりの部署、あとは両者のバランサーとなれる人や社内のネットワークをたくさん持っている人を選ぶとバランスのいいチームになるかと思います。その3人を中心に他の部門のメンバーとリレーションを取りながら事業開発を推進していく形が望ましいといえます。
新規事業創出時のスピードの重要性
新規事業創出においてスピードの重要性は語るまでもありません。メンバーもそのことを理解し迅速化を図ろうとしているものの、スピードが上がらないということは少なくありません。原因の多くは、自分たちで何でもしようとしてしまうことです。新たな事業を生み出し、会社の未来を自分たちの手で創造する(新規事業開発)というミッションがまとう華やかな雰囲気に気負ってしまい、あれもこれもと抱え込んでしまうのはよくあることです。
新規事業開発の意思決定
しかし、正解のない世界を進んでいく必要のある新規事業開発においては、プロジェクトメンバーの役割は、適切な意思決定をすることです。そのため、私たちは、役割分担メソッドという手法をお勧めしています。
これは、適切な外部化によって自分たちが本来やるべきミッションに集中できる体制を構築する手法です。新規事業開発では、各種リサーチや企画設計、社内説明やリソースの確保、アセットの棚卸し、関係各所の巻き込みなど、多岐にわたる業務が降りかかってきます。そのすべてを自分たちで対応するのではなく、自分たちの役割を「自社の強みや価値に基づいた意思決定」に特化し、この役割に当てはまらない業務は割り切って外部に振り分けてしまいます。そうすることで判断のスピードを高めていくことができます。
意思決定できる組織 | 意思決定できない組織 |
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新規事業における外部の活用とパーパスとの整合性
また、新規事業開発の経験がないメンバーばかりの場合、新規事業開発を進めていくうえで、どのような落とし穴があり、何を見落としてはいけないのかといった経験則でしか培うことのできないリスクを見逃してプロジェクトが失敗してしまうこともあります。特に、何の形も見えていないステップ0は、未経験者だけで乗り切ろうとすると失敗の確率を高めてしまう恐れがあるため、積極的に外部のリソースを活用するのがいいでしょう。
プロジェクトチームが立ち上がったら、最初に会社全体の方向性やポジショニングの整理を行っていきますが、新規事業の方向性とパーパスとの整合性を図っていくためにも、経営層の描く将来像をきっちり理解しておくことは大切なことです。パーパスの考え方や全社的な事業戦略の方向性などは中期経営計画などに記載されているものですが、そこに落とし込まれていないものがある場合は、マネジメントインタビューを行い、経営者の頭の中を確認してから新規事業計画の構築に移りましょう。
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- UPDATE
- 2023.06.02