- 営業戦略
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとは、営業活動において成果を高めることを目的とした営業組織の強化や改善をするための取り組みです。セールスイネーブルメントを導入すれば、会社全体の営業能力の向上やそれぞれの施策で得た成果の可視化につながります。
また、セールスイネーブルメントを成功させるためには、会社全体で営業ノウハウを共有して社員全員が同じ営業を再現できるようにしたり、社員の行動や能力を定期的に評価したりする必要があります。
セールスイネーブルメントとは、企業の営業活動を向上させるための業務改革を伴っている営業支援の取り組みのことです。たとえば、営業ツールの開発やマーケティング活動など営業組織の強化や改善につながる活動は、セールスイネーブルメントに含まれます。
また、セールスイネーブルメントは人事採用や顧客流入経路など各部門で実施される施策が売上に占める割合を把握したうえで、改善策を練る必要があります。各部門の施策がそれぞれ売上にどのような影響を与えたのかを数値化し、売上を徐々に高めていくことが大切です。
ほかにも、セールスイネーブルメントでは営業ノウハウを共有してどの社員が業務に携わっても同じ成果が得られるように工夫したり、個別に成約件数を高めるためのトレーニングをおこなったりします。
セールスイネーブルメントが注目される理由
セールスイネーブルメントは世界中で注目されている取り組みで、Firth Annual Sales Enablement Study(CSO Insights)によると、2019年時点で調査企業のうち61.3%がセールスイネーブルメントに取り組んでいることが明らかになっています。
出典:Firth Annual Sales Enablement Study(CSO Insights)
つまり、セールスイネーブルメントは世界規模で注目されている取り組みなのです。セールスイネーブルメントが世界規模で注目されている理由としては、以下の2つが挙げられます。
- 営業力を高められる
- 施策ごとの成果の貢献度の可視化をする
営業力を高められる
セールスイネーブルメントが注目される理由として、営業力を高めることが挙げられます。営業職に求められる仕事量は、ビジネスのグローバル化や情報化社会の急速な進捗によって増加してきたため、営業職に携わる人々はさまざまなITツールの使い方やマーケティングの知識を取得する必要が出てきたからです。
業務量が増加すると、さまざまな業務を限られた労働時間にこなさなければいけないため、それぞれの業務が属人的になってしまいます。業務が属人的になってしまうと、その業務ができる人物が病欠したり、退職したりした場合に業務を進められなくなって非効率的です。
しかし、セールスイネーブルメントを活用すれば、営業ノウハウが社員全員へ共有されているため、欠員が出たとしても問題なく効率的に業務を進めていけます。
施策ごとの成果の貢献度の可視化をする
セールスイネーブルメントが注目されるもう1つの理由として、施策ごとの成果の貢献度の可視化ができることが挙げられます。セールスイネーブルメントはITツールを用いてデータ分析をし、裏付けされたデータをもとに施策ごとの成果を確認できる効果がある取り組みだからです。
たとえば、CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)を導入すれば受注率や売上予測、案件進捗率などのさまざまな情報を可視化できるため、売上を高めるための改善計画が練りやすくなります。裏付けされたデータをもとにした改善計画であれば、適切な改善対策がおこないやすくなります。
セールスイネーブルメントの導入手順
セールスイネーブルメントの導入手順は以下のとおりです。
- 全体の業務イメージの計画を設定する
- 営業ノウハウを可視化して全体に共有する
- CRMツールを導入する
- 営業部門とマーケティング部門を導入する
- コンテンツを最適化する
1.全体の業務イメージの計画を設定する
セールスイネーブルメントを導入する際は、全体の業務イメージの計画を設定してください。全体の業務イメージがつかないままセールスイネーブルメントを導入したとしても、適切な効果は得られません。
たとえば、セールスイネーブルメントの導入完了時期やどれくらいの頻度で改善施策を業務に取り入れるのかなどの全体の業務イメージを細かく設定しておく必要があります。この全体の業務イメージに沿ってセールスイネーブルメントをおこなうため、必ず実行できる計画設定をしてください。
2.営業ノウハウを可視化して全体に共有する
次のセールスイネーブルの導入手順は、営業ノウハウを可視化して部署全体に共有することです。以前まで個人がもっていた営業ノウハウを全体に共有することで、部署の全社員がすべての営業段階の業務に取り組めるようになります。営業ノウハウを可視化することで、教育時間の削減やチームの営業能力の均衡化につながります。
3.CRMツールを導入する
営業ノウハウを全体に共有できたら、CRMツールを導入してください。CRMツールとは、自社の社員と顧客との関係性を把握し、変化する顧客のニーズに対応できるようにするためのツールです。
たとえば、CRMツールを導入すれば、メールマガジンで定期的に顧客へ情報発信をしたり、顧客からの問い合わせ内容を蓄積してホームページでよくある問い合わせをまとめておけば、リソース削減につながります。顧客に沿った営業活動をおこなうためにも、CRMツールの導入は大切です。
4.営業部門とマーケティング部門を連携する
営業部門にセールスイネーブルメントを導入完了したら、マーケティング部門と連携するとよいです。マーケティング部門は商品やサービスが売れ続ける仕組みづくりをおこなう部署であるため、見込み顧客が得たい情報を提供しやすくなるからです。ちなみにマーケティング部門の主な仕事内容は、以下の5つです。
- 市場調査
- 新商品や新サービスのコンセプト立案
- 商品やサービスのネーミング決定
- 商品やサービスの価格設定
- 流通チャネルの選定
営業部門とマーケティング部門と連携することで顧客に寄り添った営業ができ、会社の業績向上につながります。
5.コンテンツを最適化する
最後にセールスイネーブルメントを導入する際は、コンテンツを最適化してください。一般的にコンテンツの最適化はマーケティング部門の業務内容といわれていますが、営業部門でも生み出せるコンテンツはあります。営業部門が生み出せる主なコンテンツは、以下の5つです。
- 事例研究
- ホワイトペーパー(顧客が興味をもつ内容の資料)
- 競合他社の商品とサービスとの比較情報
- 製品デモ
- 価格と割引情報
コンテンツを最適化することで、競合他社との差別化が図れるので営業効果が高まります。会社の業績を高めるためにも、コンテンツを最適化することが大切です。
セールスイネーブルメントの活用事例
SATORI株式会社
SATORIは、2019年頃からセールスイネーブルメントを導入して営業プロセスの見直しや営業時に使用するコンテンツの最適化を実施しています。SATORIはセールスマネジメントを導入し、過去の営業履歴から初回と2回目の2度の営業訪問をすることが効果的だと考えたため、実践して成果を観察しています。
また、SATORIでは営業にて獲得した顧客の受注確定度合の6段階に分類し、受注確定度合が高いA~Cは経験豊富な営業担当者、受注確定度合が低いD~Fは経験の浅い営業担当者が担当するようにしています。
トランスコスモス株式会社
トランスコスモスは、セールスイネーブルメントを導入したことで営業ノウハウの取得やコンテンツの共有化に成功しています。たとえば、営業ノウハウを取得するためのツールを導入してさまざまなシーンに沿ったセールストーク術を学べる動画を共有すれば、誰が営業しても契約をとってきやすくなるように工夫しています。
トランスコスモスでは、さらなる営業スタイルを確立するために、業界やクライアントに特化した営業手法を編み出しています。
東芝テック株式会社
東芝テックでは、セールスイネーブルメントを導入して社員同士の能力の格差を埋めました。セールスイネーブルメントツールのデジタル提案書を活用した結果、部署内の資料作成方法が統一されたため、顧客への資料の完成度のバラつきが改善されています。
加えて、東芝テックでは動画でそれぞれの場面に応じた営業トークを提供できるため、経験や得意の差も埋めています。
まとめ
セールスイネーブルメントとは、企業の営業成果を高めることを目的にした取り組みです。セールスイネーブルメントを導入することで営業力をより高められたり、施策ごとの成果への貢献度を可視化して改善対策に活用したりできます。
2023年現在、世界規模でセールスイネーブルメントを導入する規模は増加しており、多くの企業が営業能力の向上に注力しています。セールスイネーブルメントを導入すれば、全社員が同じレベルの営業能力がおこなえます。