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タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの能力やスキル、経験などを把握することによって人材配置を的確におこない生産性を高めることをいいます。それぞれの従業員が能力やスキルを最大限に発揮する環境を作り、有能な人材を定着させることにより人材不足対策をすることも大きな目的です。このため、労働力人口不足の対策にもなります。
従業員にとっても自分の能力が最大限に活かせる業務に就くことによって自分を成長させられるほか、評価をしてもらうことでモチベーションの向上につながります。このようにさまざまなメリットのあるタレントマネジメントですが、従業員に浸透させることで効率的に進めることが可能です。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは従業員の能力やスキルなどを経営資源として捉えることで、採用活動や人材育成に活用することで人材のパフォーマンスを最大化することをいいます。これまでは実績や結果を残している人材が対象でしたが、近年では全従業員を対象にすることが一般的です。
企業が経営目標を達成するためには人材を活かすことが重要であり、採用や育成、評価など人事に関連することすべてがタレントマネジメントにつながっています。つまり、タレントマネジメントと人事戦略はほぼ同じ内容であるととらえている企業は少なくありません。
タレントマネジメントには即効性がなく、具体的に効果測定ができるわけではありません。そのため十分な導入準備をして、長期間をかけて企業全体で取り組む必要があります。
タレントとは
タレントとは従業員のスキルや才能を意味します。しかし、タレントを持っている人は、すべての分野で優秀な人という意味ではありません。例えば、外国人客がよく来る飲食店では、外国語が話せる従業員の存在は貴重です。この場合、外国語力はタレントになります。
このように現場で必要とされる能力を持っている従業員を把握しておけば、必要なときにうまく活かすことが可能です。タレントマネジメントを成功させるためには、従業員のスキルや特性を個別に理解し、適材適所で活用する柔軟な組織運営が必要なのです。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントの最終的な目的は企業の継続的な成長です。従業員一人ひとりに向き合い、能力が発揮できる環境が整っていれば組織全体の継続的なパフォーマンス向上につながります。
人事戦略における経営目的の達成
自分の得意分野を活かせる職場環境は従業員のやる気とやりがいにつながり、従業員が意識高く業務に取り組むことで生産性が向上し、組織風土が活気あふれるものになります。
ただし、タレントマネジメントは単に働きやすい職場づくりや従業員満足だけを目的とするのではありません。人材の能力を存分に発揮させることで、最終的には経営状況を改善し、企業を発展させなければなりません。
4種類の中間目的
タレントマネジメントを経営改善につなげるためには、中間目的を達成していく必要があります。
1.人材の調達
タレントを確保するためには、人材を調達しなければなりません。組織の外からの採用や、組織内に埋もれている人材を発掘する方法があります。
2.人材の育成
研修などの能力開発プログラムによって自社が求める人材へと育成します。全社一斉の研修などではなく、従業員のすでに持っている能力や特性を伸ばす意識が大切です。どのような分野で成長していけるかを見極め、個人にカスタマイズした育成方法を設定します。
3.適材適所による成果の最大化
人材が持つ能力とその能力を発揮できるポジションのマッチングは重要です。従業員がいきいきと働けるのはどんな場所か、従業員との面談を通じて検討します。配属先にも従業員のスキルや得意分野を共有しておくことが大切です。
4.人材の定着
育成した人材に長く活躍し続けてもらうためには、やりがいの創出、モチベーションの維持、継続的なキャリア開発などが必要です。定期的な面談を通して従業員のキャリア志向を確認し、能力に合った条件や環境を用意する必要があります。
タレントマネジメントが注目される背景
タレントマネジメントが最初に注目されたのは1990年代のアメリカといわれています。当時のアメリカでは成果主義が台頭し、能力や成果によって報酬やポジションが定められるようになりました。そのため、企業が従業員のタレントをしっかりと把握、管理しなければならなかったのです。
現代の日本もまた、終身雇用や年功序列など従来の文化が見直され始めています。従業員が持つタレントをよりシビアに管理しなければならなくなったといえます。
少子高齢化
少子高齢化による労働力不足は、すでに多くの業界に深刻な影響を与えています。これまでのように新卒を大量に採用し、長い時間をかけて育成していく日本企業のやり方は通用しなくなってきました。常に人材が豊富に確保できる時代は終わり、今後は自社が必要とするタレントを、必要な時に活用できる体制を整えなくてはなりません。
働き方の多様化
かつての日本では、オフィスに出社して働くスタイルが一般的でした。また、正社員と非正規社員が明確に区別され、仕事内容も異なっていました。しかし、ここ10年ほどで働き方は多様化し、さまざまな雇用関係が成立するようになっています。
労働人口が減少したことで育児中の女性、高齢者、障害者など事情を抱えた労働者の存在が認められ始めたことも、働き方が多様化している一因です。このようななか、すべてができる人材ではなく特化した能力を活かす重要性が認識され始めています。
市場競争のグローバル化
経済がグローバル化するなかで企業運営には柔軟性とスピード感が求められています。日本企業が国際市場で生き残っていくためには、日本人以外の労働者や、外国語や外国文化に精通した人材の確保、育成が必要不可欠です。このようにグローバルな能力を持った人材に活躍してもらうためにもタレントマネジメントの重要性が高まっています。
タレントマネジメントが重要な理由
近年タレントマネジメントが日本でも重要視されるようになりました。それには次のような理由が挙げられます。
- 労働人口の減少
- 人材の流動化
- 人材のミスマッチを減らす
労働人口の減少
日本では高齢化や少子化が進んでいることから労働人口が減少しています。そのため採用活動が困難になっており、これまで以上に育成に力を入れることが重要です。タレントマネジメントを導入することで、従業員のモチベーションをあげることにより離職率をさげることができます。
人材の流動化
日本は長年終身雇用や年功序列といった制度が根付いていました。しかし、近年ではより自分を成長させるため、評価してもらうための転職が珍しくありません。そのため、人材が流動する時代です。
さらに、在宅ワーカーや外国人労働者の増加など人材が多様化していることも、タレントマネジメントが求められる要因となっています。人材の多様化に合わせて人事管理の方法も変えていくことが重要です。現在では、従業員一人ひとりの能力を活かすことが陣利戦略において求められています。
人材配置におけるミスマッチを減らす
労働人口の減少や人材の流動化など、これまで以上に従業員一人ひとりを成長させる環境が重要です。しかし、人材配置においてミスマッチがあると従業員一人ひとりの能力やスキルを最大限のパフォーマンスにすることはできません。そこで、タレントマネジメントにおいて能力や経験、スキルなどを把握することによって適切な人事異動に活かすことができます。
従業員にとっても、自分の能力を最大限に活かせる職務ができ評価が上がることからモチベーションがあがり好循環となることが期待できます。
タレントマネジメントを導入する理由
タレントマネジメントを導入する理由には次の点が挙げられます。
- 企業の目標達成
- 従業員の適材適所の配置
- 従業員のモチベーションや満足度向上
- 従業員の成長につながる
企業の目標達成
タレントマネジメントを導入する最大の理由は企業の目標達成です。従業員を人的資源として、最大限に能力やスキルを活かせる人材配置を実現することで効果的に生産性を高めることで目標達成につなげることができます。
従業員の適材適所の配置
タレントマネジメントを進めるためには、従業員のスキルや業務においての経験、スキルなどを管理する必要があります。そのため、従業員一人ひとりをより理解できるため、適材適所の配置を人事異動において進めることが可能です。
さらに、評価においてもタレントマネジメントを活かすことができます。例えば、同じ能力を持った2人の従業員のどちらかを昇進させるとします。タレントマネジメントにおいて、業務に対しては同じ能力でもマネジメント能力が高い従業員であることがわかれば、効果的な人員配置が可能です。
従業員のモチベーションや満足度向上
タレントマネジメントを進めることで、従業員一人ひとりにそれぞれの能力やスキルにあった職務を与えることができるため、従業員のモチベーションや満足度向上につながります。適切な職務を与えられることで、自分の能力を発揮できる場所でないため十分な評価がされないと感じることがなくなるためです。
従業員のモチベーションや満足度が上がることにより、離職率が下がるため安定した人材の確保につながります。しかし、適切にタレントマネジメントを活用しないと逆効果になる可能性があります。
従業員の成長につながる
タレントマネジメントで出したデータは従業員一人ひとりが確認できるため、自分の能力を客観的に確認できます。自分はどのような点において評価されているのか、どのような点が足りないのかなどを把握できるため従業員の成長につながります。
さらに、自身が成長できる環境があるとして企業に対する満足感を上げることも可能です。
タレントマネジメント導入から実践までのステップ
導入の目的を設定
タレントマネジメントの導入によって達成したい目的を設定します。まず、自社が抱える課題を洗い出し、どのような状態にしていきたいかを検討します。同じ会社でも、部署やチームによって課題はさまざまです。それぞれの課題を体系化することが大切です。
タレントの把握
自社の課題を解決するためには、どのようなタレントが必要かを考えます。単に優秀な人をイメージしがちですが、必要な能力を細分化することが大切です。また、自社が抱える人材が持っているタレントを把握することも重要です。それぞれの部や課から人材情報を収集し、一元的に管理できるフォーマットを作成します。
人材の採用、能力開発の構想
人材確保の手段を検討します。新たに採用するか方法のほか、すでにいる従業員の能力開発に力を入れるのも効果的です。
一般に、自社が必要とするタレントを持つ人材を採用した方が手っ取り早いといえます。組織が抱える問題にどの程度早急に対応する必要があるかによって、タレント確保の方法を考えます。
人材の配置、活用
確保、育成した人材について能力が発揮できるポジションや報酬を与えることが大切です。従業員に適した職場環境を見極め、長期的な視点でキャリアプランを立てる必要があります。
評価体制の最適化
従業員が持つタレントについて、しっかりと評価できる体制を整えます。通常の評価項目のほかにタレントに関連した成果、意欲なども評価項目に加えます。従業員が自身のタレントを伸ばし、活かしていくことに明確な意味を与えることが大切です。
タレントマネジメントにおける注意点
タレントマネジメントを導入するうえで、次の点に注意する必要があります。
- 正確なデータがないと意味がない
- 浸透までに時間がかかる
正確なデータがないと意味がない
タレントマネジメントは、従業員一人ひとりの正確なデータを集めて初めて効果が現れます。そのため、データが間違っていると誤った評価や異動をすることになるので注意が必要です。正確なデータを集めるためには、従業員全員がタレントマネジメントを導入することや目的を理解している必要があります。
浸透までに時間がかかる
タレントマネジメントは従業員に浸透していなければ効果が出ません。しかし、浸透するまでに時間がかかります。タレントマネジメントを導入するためには社内の制度を改善したり、内容を設定したりするなど手間もかかります。そのうえ、効果が測定しにくいデメリットがあることから、途中で挫折をする企業は少なくありません。
タレントマネジメントに即効性はなく、具体的な数値に現れるわけでもありません。そのため、導入計画をしっかりと立て、長期間かけて導入することが重要です。
まとめ
タレントマネジメントとは、従業員のスキルや資質、経験、才能などをデータとして管理し分析することで最適な人材配置ができます。さらに、人事戦略として育成や採用にもつなげることが可能です。
従業員のスキルや能力などにあった適材適所の配置をすることにより、従業員のパフォーマンスを最大限にし生産性を高めることができ、経営目標の達成に近づきます。さらに、従業員にとって客観的な評価を知ることで成長につなげることができる点や、自分の能力を最大限に活かせる業務に就くことができる点からモチベーションの向上を期待することが可能です。このことから、従業員の満足度があがり離職率が下がる効果が期待できるなどタレントマネジメントの導入はさまざまなメリットが挙げられます。