- 営業戦略
セールスファネルとは
セールスファネルは商品・サービスに対する顧客の関心度を分析し、購入に至るまでのプロセスを段階化します。潜在顧客から見込み客、継続客まで分類することで適切なアプローチ方法がわかるため、社内リソースの最適化にも役立ちます。
セールスファネルの設計は、段階ごとに顧客の反応を予測していかなければならないため、自社の商品・サービスへの正しい理解が必要不可欠です。一方で、顧客の思考を的確に分析することで、効率的な営業・マーケティング活動を実現することが可能です。
セールスファネルとは
商品やサービスを売り出そうとするとき、ターゲット層のなかから潜在顧客を設定します。しかし、見込み顧客全員が実際の顧客になるわけではありません。また、顧客のなかからファンになってくれる人はさらに減ります。
このように、潜在顧客が継続的な顧客になるまでは、段階分けすることができます。これをセールスファネルといいます。プロセスを経るにつれて人数が減っていくことから、セールスファネルは逆三角形の形になります。
この逆三角形が漏斗(ファネル)に似ていることから、このように呼ばれています。
セールスファネルの形態
商品やサービスを展開しようとする時、セールスファネルの設計は必要不可欠です。セールスファネルは、ビジネスの設計図とも言い換えることができます。
セールスファネルの縦軸は顧客の関心度であり、商品やサービスの人気を測る物差しです。横軸は顧客の数を指し、ファネルの下に行けば行くほど顧客の数は減ります。ファネルの一番下に残った一握りの顧客は商品やサービスのファンとなる訳です。
トップ・オブ・ザ・ファネル
トップ・オブ・ザ・ファネル(TOFU:Top of the Funnel)は、セールスファネルの入り口のことです。認知フェーズであり、関係性が始まったばかりの顧客や潜在顧客を指します。
この段階では、商品やサービスの認知を促すことが重要です。
TVCMやWEB広告、SNSの活用により、できるだけ多くの人に情報を届けることで、トップ・オブ・ザ・ファネルに属する顧客の絶対数は増やすことができます。
まだ購買までの距離は遠いため、さまざまな施策で商品・サービスとの関わりをつくっていくことが大切です。
ミドル・オブ・ザ・ファネル
ミドル・オブ・ザ・ファネル(MOFU:Middle of the Funnel)は、見込み顧客の層です。
商品・サービスについては認知しており、関心をもってはいるものの、まだ購入するか迷っている段階を指します。面談や商品説明をして、購入に至らなかった人が該当します。
この段階では、購買意欲を高めるための施策が有効です。営業担当者によるアプローチが結果に結びつきやすい段階ともいえます。
ボトム・オブ・ザ・ファネル
ボトム・オブ・ザ・ファネル(BOFU:Bottom of the Funnel)は、セールスファネルのなかでも、もっとも関係性の構築が進み、信頼関係が成熟している段階です。商品やサービスの購入・契約をゴールに設定する場合もありますが、商品やサービスの形態によっては継続顧客になってもらうことをゴールとする場合もあります。
ここでは、顧客に長く自社の商品やサービスを愛してもらえるよう、より丁寧できめ細やかな対応が必要です。
セールスファネル作成によるメリット
セールスファネルを作成することで、営業やマーケティング部門にはさまざまなメリットがあります。
効果測定の効率化
営業・マーケティング活動は、顧客の段階に応じた目標を設定しなければなりません。セールスファネルを設定することで、各フェーズごとの目標が明確になります。
例えば、トップ・オブ・ザ・ファネルに属する潜在顧客にアプローチする部門に対して、売上・契約数を目標に掲げるのは少し無理があります。トップ・オブ・ザ・ファネルでは、顧客の認知や興味関心を高めることを目標とすれば、営業担当者も取り組みやすく、効果も測定しやすいはずです。
成約率の向上
まだ商品のことを知りもしない人に価格を提示して売り込んでも、すぐには購入には至りません。一方で、商品に興味があり、前向きに購入を検討している人に対しては、より踏み込んだアプローチが必要です。
セールスファネルを活用することで、それぞれの顧客の段階に応じたアプローチができるため、成約率の向上につながります。効率的な営業活動は営業担当者の負担を減らし、生産性を向上させることが可能です。
リソースの最適化
セールスファネルの活用で、営業担当者の抱える案件の透明度が上がるため、一人一人に適した業務量を割り振ることができます。すべての見込み客へのアプローチを同様の手法でおこなうことが可能になるため、成果を予測しやすくなります。
また、顧客に対しもっとも効果を発揮するプロモーションも明確になります。プロモーションへの反応に応じて次の施策に移行する際も、セールスファネルが整えられていれば適宜自動化することも可能です。
クリックユーザーへのWEB広告配信や、そこから得た登録ユーザーへのメール送信が自動で行えれば、ひとりでに顧客が増えていく状況を作ることも可能です。
セールスファネルの課題
セールスファネルは、自社の商品やサービスとそれを取り巻く顧客層全体を俯瞰して設計する必要があります。ここではセールスファネルを作成するにあたって課題となることを解説します。
部門間の連携
セールスファネルには、さまざまな部門が関わります。トップ・オブ・ザ・ファネルは主にマーケティング部門が担いますが、購入や契約に近いファネルでは営業部門が担当します。また、ボトム・オブ・ザ・ファネルに近づけば、カスタマーサポート部門やカスタマーサクセス部門が中心になっていきます。
セールスファネルを業務に活かすためには、セールスに関わる様々な部門同士が連携し、顧客データや施策の内容を共有しなければなりません。
また、それぞれの部門間において、顧客情報を共有することが重要です。説明の重複や連携不足による不備は顧客離脱の原因となってしまいます。
データ管理
セールスファネルを用いて営業やマーケティング活動を効率化するためには、さまざまな顧客データを適切に管理しなければなりません。顧客の氏名、電話番号などの基本情報だけでなく、これまでどういった反応をしてきたか、商品への関心度はどれくらいかなども大切な情報ですから、一人の顧客データだけでも膨大な量になります。
セールスファネルは、見込み客の分析と管理がものをいう取り組みなので、顧客管理システム導入のようにデータ管理に注力する必要があります。
スコアリング
見込み客がファネルのどの段階にいるのか知るためには、関心度を正しく評価しなければなりません。営業担当者の主観によって、顧客の温度感は高くも低くも報告されますが、必ずしもそれが正しいとは限りません。できるだけ平準化され、社内で統一された条件設定が必要です。誰がみても顧客の状況がわかるようスコアリングすることが重要です。
まとめ
セールスファネルの作成は自社の商品やサービスとそれを取り巻く顧客層を理解することから始まります。どのようなきっかけで関心を持ち、どのようなきっかけで購入や契約に至るのかしっかりと分析することで、それぞれの段階における顧客の特徴が明確になります。
顧客層全体への理解を進めることで、段階に応じた適切なアプローチが可能になり、効果の薄い営業やマーケティング活動、営業担当者の負担を軽減することができます。