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採用CX(キャンディデイトエクスペリエンス)とは
少子化による労働人口の減少、流動性が高まったことにより採用活動がむずかしくなっています。さらにSNSが普及したことから、もし企業側の不手際があればすぐに拡散してしまい、企業にとって損失になることがあります。
そこで採用CXを導入することにより、候補者に企業の取り組みや姿勢などを理解してもらうことで人材のミスマッチを減らすことができます。
採用CXとは
採用CX(Candidate Experience、キャンディデイトエクスペリエンス)とは、候補者体験といった意味です。企業への応募者に企業の取り組みや雰囲気、姿勢などを理解してもらうのが目的です。候補者が企業をよく理解したうえで、選考から採用されるまでに起こる体験のことを採用CXといいます。
候補者体験
候補者が企業をプレスリリースや公式ホームページなどで認知してから、内定するまで全てのプロセスにおいて候補者の採用CXを良くしていきます。
面接の合否に関わらず良い体験を候補者に届けることが重要であり、候補者に「この企業を選んで良かった」、「不採用になったけど対応が良かった。」と思ってもらうことが主な採用CXのゴールです。
採用企業が注意すべき点
採用CXを向上させるためには、採用担当者が応募者に対して上から目線になるのはNGです。応募者の味方となり、企業が掲げているスローガンや選考の流れ、職務内容などを一人ひとりに丁寧に説明をすることが重要です。
面接当日は応募者の多くは、緊張から十分な力を出せないケースが多くあります。採用者は応募者を力不足と決めつけるのではなく、面接に向けて十分な準備ができるように情報を提供することが大切です。
十分な準備ができれば応募者は面接へ余裕をもって臨むことができ、採用者にとっても応募者が面接で力を発揮できることにより、自社にあった有能な人材を採用できる可能性が高まります。
企業によっては面接前にWEB面談をしたり、選考の結果までをただ待たせるのではなく選考の進み具合を伝えたりするなど、応募者の企業に対する評価を高めるさまざまな手法があります。
採用CXが導入される背景
採用CXが導入される背景には、以下の3点が挙げられます。
- 少子化による人手不足
- 人材の流動性
- SNSの普及
少子化による人手不足
近年日本では少子化が続いており、人口が減少しているため企業が求職者を選ぶのではなく、求職者が企業を選ぶのが一般的になっています。そのため、これまで以上に採用CXが重要になっています。
人材の流動性
近年の日本では終身雇用制度は崩壊し、自分のスキルアップを求めて転職をすることが一般的です。さらにフリーランスや個人事業主として独立するケースも増えており、人材の流動性が高まっています。
SNSの普及
TwitterやInstagramなどSNSの利用者は年々増えています。2015年末の時点でSNS利用者は6,488万人だったのが、2019年末には7,786万人となっており、2022年末には8,241万人まで増えると予想されています。
画像出典:2020年度 SNS利用動向に関する調査(ICT総研)
求職者は企業に対して感じたことをSNSで簡単に発信できます。もし悪い印象を求職者が持てば、情報が広まることから企業のイメージが悪くなる可能性があります。
採用CXのメリット
採用CXを導入するメリットには、主に以下の3点があげられます。
- 候補者の紹介が増える
- 応募者のリピーターが増える
- ミスマッチを防ぐ
候補者の紹介が増える
候補者が企業の姿勢や雰囲気などに好印象を持てば、候補者の知り合いなどに企業の様子を伝える可能性があります。また、候補者の紹介が増えることも考えられます。候補者に紹介された人は、企業の様子をある程度わかっているのでミスマッチが減り好循環となります。
応募者のリピーターが増える
応募者が求人広告を見てから、採用活動に関連する一連の体験をよくすることで企業に対する評価が高まります。もし今回不採用になったとしても、また他の機会で応募してくれる可能性がでてきます。
ミスマッチを防ぐ
採用活動は時間もコストもかかり、研修をする必要があります。そのうえでミスマッチが起こると企業にとって損失となります。そこで採用CXを導入することにより応募者が企業の取り組みや姿勢、雰囲気などをよく理解することで入社後のミスマッチを減らすことができます。
採用CXを進める際の注意点
採用CXを進めるうえで、以下のような注意点があります。
- 従業員の応募者に対する対応
- 面接で適切な質問をしているか
- 応募者に十分な情報を提供しているか
- メールの返信や合否連絡などがスムーズか
応募者に対するコミュニケーションの取り方は採用CXに大きく影響します。採用CXにおけるタッチポイントは広いのですが、応募者に対して応援する姿勢を持つことで応募者に対してよい影響があります。
緊張や不安を感じている応募者の立場になることで、応募者にとって採用担当者や企業に対するイメージが大きく変わります。
今一度応募者に対するメールの返信、電話での対応、業務内容や企業の考え方など十分な情報を応募者に提供しているか見直すことが採用CXの向上につながります。
採用CX導入の流れ
採用CXを向上させるためには、候補者が企業を認知してから内定するまでのタッチポイントごとに、適切な施策が必要になります。
- 企業側の準備
- 認知
- 応募
- 選定
- 内定から入社
企業側の準備
採用CXは求める人材の明確化から始まります。さらに応募者に求めるスキルや経験などを、募集する職種ごとに設定することから始めます。企業側の準備の時点で採用基準を明確にすることが大切です。
認知
認知とは、応募者に対して企業の魅力や応募内容を伝えることです。採用サイトのほかに公式WEBサイト、自社イベント、プレスリリース、公式SNSなど現在ではさまざまな認知の方法があります。
応募
応募者は1社だけに応募するということはありません。複数の企業に応募しているなかで自社を選んでもらう工夫が必要になります。応募者にとってコミュニケーションをとりやすい企業が評価が高く、やり取りを迅速にできるメールやリファラルなどを利用するのが一般的です。
選定
5つのステップのなかでもっとも重要なのが選定です。面接官の対応次第で企業のイメージが大きく変わり応募者のモチベーションが大きく変わるステージです。自社が求めている人材であるかどうかの判断が重要ですが、一人ひとりに対して誠実に向き合うことが大切です。
もし仮に不採用になったとしても、企業に対していいイメージをもってもらえるような面接にする必要があります。
内定から入社
内定を出したからといって採用決定ではありません。有能な人材であれば、他社からも内定をもらっている可能性が高くなります。そこで内定を出してからのフォローで企業のイメージが大きく変わります。
このフォローは新卒だけでなく中途採用でも重要な業務になります。
採用CXの導入事例
採用CXの導入事例を2社ご紹介します。
- メルカリ
- Airbnb
メルカリの事例
メルカリはBtoCの企業であり、候補者が顧客である可能性が十分にあります。そのため採用につながらなくても、企業のよい印象を持ってもらうことが大切です。
メルカリは急成長している企業であり、採用スタッフが増えたことから、面接担当者の対応のばらつきがありました。そこで候補者にアンケートをとることにより、フィードバックをもらい面接担当者の研修に活かして採用CXの改善につなげています。
Airbnbの事例
民泊サービスを提供している企業のAirbnbは、不採用になった候補者に対してフィードバック面談をしています。候補者全員に最大限の対応をすることにより、企業に対する評価が上がっています。
まとめ
人材不足で、働き方の幅が広まった昨今、応募者に選んでもらえるような企業になる必要があります。そこで応募条件の設定から、応募者が入社するまでタッチポイントにわけて応募者の企業に対する評価を上げる必要があります。
採用CXを向上させるためには、応募者を応援する姿勢が必要です。面接において応募者のことをよく知るためには、必要な情報を事前に提供したり、電話やメール対応をよくすることで、応募者が面接で話しやすいような環境を作ることが大切です。
また内定を決めてから、入社までのフォローも採用CXに大きく影響します。