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量子コンピュータとは
量子コンピュータとは従来のコンピュータよりもはるかに強力な計算能力を持つ次世代のコンピュータです。現在、人間の解くべき問題は複雑に進化しているため、次世代の高速計算機である量子コンピュータが大きく注目されるようになりました。
しかし、量子コンピュータはあらゆることを高速に実行できるわけではなく、膨大な数の組み合わせによる計算を必要とする際に抜群の効果を発揮するものです。量子コンピュータを有効活用するためには、特徴やメリット、リスクなどを理解する必要があります。
量子コンピュータとは
量子コンピュータとは、量子力学の性質を利用した次世代のコンピュータです。従来のコンピュータでは答えを導き出すために膨大な時間を要していた問題でも、量子コンピュータであれば少ない回数の計算で瞬時に答えを導き出すことが可能です。原子レベル以下の物質やエネルギーの粒が量子であり、量子力学では量子重ね合わせや量子もつれによって並列計算の状態をとることができるため、複雑な問題でも高速に解けます。
従来のコンピュータとの違い
従来のコンピュータは古典コンピュータとも呼ばれ、WindowsやMacといったOSを搭載したコンピュータです。従来のコンピュータでは、ビットと呼ばれる情報単位が0と1の2進数が採用されていますが、量子コンピュータで採用されている量子ビットは、量子重ね合わせの現象により0にも1にも2にもなる状態が生まれます。重ね合わせを利用した計算が可能である点が従来のコンピュータとの大きな違いです。
量子コンピュータにおける2つの計算方式
量子コンピュータにおける2つの計算方式は次のとおりです。
- 量子ゲート方式
- 量子アニーリング方法
量子ゲート方式
量子ゲート方式は量子状態にある素子の動きや組み合わせによって計算回路を作り、問題を解く方式です。現在GoogleやIBMなどにおいて主流で開発されているものがゲート方式であり、従来のコンピュータの上位互換として開発が進められています。
量子アニーリング方式
量子アニーリング方式は、組み合わせ最適化問題を解くことに特化した方式です。多数の選択肢があるなかで、もっとも良い組み合わせを選ぶことが可能なうえに、高速で解くことができると期待されています。量子ゲート方式と比較するとシンプルな構造であるため、ハードウェア開発がしやすい点が特徴です。
量子コンピュータの実用化によるメリットとリスク
量子コンピュータ実用化のメリット
量子コンピュータの実用化による大きなメリットとしては、これまで解けなかった複雑な問題が量子力学を用いたアプローチにより瞬時に解けるようになる点です。特に量子シミュレーションや暗号化、検索の問題など、膨大な数の組み合わせの計算に効果を発揮します。そのほかの実用化によるメリットとしては、量子ビットの数を増やせるようになればさらに複雑な問題でも解けるようになる点や、電力消費が少ないという点です。
量子コンピュータ実用化におけるリスク
量子コンピュータが実用化された場合のリスクとしては、現在一般的に利用されているセキュリティシステムを簡単に突破してしまう危険性がある点が挙げられます。パスワードなどの解析が瞬時におこなえるため、量子コンピュータの発展にはセキュリティ技術の進化も同時進行で必要になるという課題があります。また、量子コンピュータ実用化には非常に高額なコストが発生する点や、現状の量子コンピュータでは対応できる問題が限られている点などの課題も多く、実用を開始するまでには長い時間が必要です。
量子コンピュータの現状
Googleの場合
NASAと共同で量子人工知能研究所を運営しているGoogleは、量子コンピュータとAIなどの最新技術を組み合わせた研究に積極的です。Googleは2021年に量子AIキャンパスを開設し、気候変動など差し迫った難関の解決に役立てることを目指して研究が進められており、2029年までの技術完成を目標に掲げています。
IBMの場合
IBMは大規模で実用的な量子コンピュータの実現に向けてロードマップの拡張を発表し、2025年に4000量子ビット級のシステムを実現する目標を掲げています。2021年には世界初で100量子ビットを超えた127量子ビットのEagleを公開し、2023年には1000量子ビットを超えるCondorの制作を予定中です。
Microsoftの場合
Microsoftでは2022年にトポロジカル量子ビットという独自の量子ビットの生成に成功したと発表しました。トポロジカル量子ビットの方式である量子マシンは、ほかの量子ビットで構築されたものより安定性が高く、拡張性を持っている点が特徴です。また、Microsoftではトポロジカル量子の生成は、産業利用できる規模の量子マシンを構築する最速の道だとしています。
量子コンピュータ実用化で期待できること
量子コンピュータの実用化で期待されることは次のとおりです。
- 新薬開発の高速化
- 交通渋滞の解消
- AI技術の発展
新薬開発の高速化
さまざまな化学物質を組み合わせたうえで最適なパターンを探し出す新薬の開発において、量子ピュータの活用は最適です。スーパーコンピュータでも困難な大きな数の組み合わせである計算も、量子コンピュータであれば膨大なデータのなかから最適なパターンを探し出すことができます。これまで治療がむずかしいとされてきた難病などに効果のある新薬の開発が期待されます。
交通渋滞の解消
さまざまな経路と車の台数の組み合わせにより計算される交通渋滞の解消についても、量子コンピュータの活用により短時間での解決が可能です。短時間での処理が可能となれば、近い将来、交通渋滞の解消が期待されることに加え、渋滞が原因の交通事故防止などにもつながります。
AI技術の発展
量子コンピュータの特徴を活かしてAI技術の発展を促進することができます。膨大なデータ処理が可能である点やさまざまな状況をシミュレーションできる点などの特徴を持つ量子コンピュータにより、AIの高度化が実現可能です。AIによる判断の的確性が向上されると柔軟な対応ができるロボット開発も可能となり、さまざまなサービスをロボットに置き換えることができるようになります。
まとめ
量子コンピュータとは量子力学を用いて高速計算を可能にする次世代コンピュータであり、各企業で積極的に研究開発が進められています。量子コンピュータは量子重ね合わせという特徴を活かした計算により、膨大な組み合わせの計算が必要な問題も高速で解くことが可能です。現在ではまだ実用段階には至っていませんが、実用化されれば新薬の開発や交通渋滞の解消、災害時の最適避難ルートなど、人々の生活をより良く変化させることが期待されています。