2022.03.11

人事評価制度とは

長年日本では年功序列制度により従業員を評価していました。 しかし企業のグローバル化や長い間の経済状況の悪化など、社会の環境が変わるにつれ人事評価制度により従業員を評価することが増えています。

人事考課制度により社員を評価するということは、長い間勤めるだけで評価されるわけではなく、企業への貢献度によっては若くても役職につけるチャンスが増えるということです。しかし人事評価制度が明確でなければ、 逆に従業員のモチベーションを落とす結果にもなりかねません。

人事評価制度とは

人事評価制度とは、従業員の成績やチームに対する貢献度をはじめとする、企業の業績を上げるために必要な行動を評価する制度のことです。評価に際しては、従業員の成績を評価する「業績評価」、スキルを評価する「能力評価」、仕事に対する姿勢や態度を評価する「情意評価」の3つを軸として制度設計が行われます。

人事評価制度を導入し、一定の基準に基づいて評価し人材育成をくり返すことで、企業全体の生産性を向上させる効果があります。

参考:人事評価制度構築コンサルティング

人事評価制度は人事制度の1つ

企業には人事評価制度以外に、報酬制度や等級制度といった人事関連の制度があります。そのため人事評価制度だけで成り立つのではなく、強化をすることで賞与や昇給などが決定し、また等級制度にも反映させることができます。

等級が上がると役職が上がり、結果的に報酬も上がるといった仕組みになっています。また企業によっては人事評価制度、報酬制度、等級制度の3つを分けずに人事制度と呼ぶ場合もあります。

人事評価制度の期間

人事評価制度は企業により、1年、半期、四半期などの期間を設定しています。そのため定期的に従業員を評価することになります。

人事評価制度の目的

人事評価制度は従業員を明確に評価することにより、結果的に企業の生産性向上や業績向上につなげることが大切です。年功序列型の評価が崩壊しつつある中、人事評価制度がより企業や従業員の成長に欠かせない制度となっています。

生産性向上につながる

人事評価制度の評価項目や評価基準は企業によって異なりますが、その企業の理念やビジョン、目指す方向性、求める従業員像などが強く表れています。企業が成長するためには、従業員の成長が欠かせません。

同時に従業員の方向性や目標が会社の方向性と同じベクトルに向かっていることも必要です。人事評価制度は最終的に生産性向上や企業業績の向上につながることが重要です。

能力の開発の推進

また、人事評価制度は、専門的な能力の開発を促進するものでもあります。 従業員の能力や企業への貢献度や、企業が設定している目標への達成度などを明確に評価することにより従業員のモチベーションを上げることができます。

人事評価制度により従業員一人ひとりの強みや弱みを把握し、研修の導入や適切な配属などさまざまなことに活用することができます。そのため人事評価制度は人材育成にもつながっています。

従業員の評価

長らく日本では年功序列制度や終身雇用制度が導入されていました。しかし企業のグローバル化に伴い、従業員に対しての評価の手法も変わりつつあります。 それぞれの企業では年功序列制度から人事評価制度をもとに賃金を設定することが一般的になりつつあります。

従業員とのコミュニケーション

人事評価制度を活用し評価内容に対して従業員一人ひとりにフィードバックを行います。そのため従業員にとって上司とのコミュニケーションの場となり、信頼関係の構築につなげることができます。また上司にとって部下の考えていることを理解することができ、従業員の満足度をあげる機会になります。

人事評価制度の手法

人事評価制度において、従業員一人ひとりに対する目標設定、または部署全体で目標設定して達成度合いに対して評価をすることが一般的です。さらに業務内容によって能力評価や情意評価が導入されることもあります。さらにその他にもコンピテンシー評価を導入する企業も増えています。

MBO(目標管理制度)

MBOは、経営学者ピーター・ドラッカーが業務管理や生産性の向上を目的として提唱した手法です。企業目標と連動していることを前提として従業員自身が個人の目標を決め、どのくらい達成できたかによって人事評価します。

「従業員の個人目標達成=企業目標の達成」という考えのもと100%達成を目指し、上司や人事担当者と共有することが多いのが特徴です。

OKR(Objectives and Key Results)

OKRは、高い目的を達成するために用いる目標設定・目標管理の手法です。業務管理や生産性の向上を目的としているMBOと異なり、企業と従業員が同じ目標に向かって挑戦的に取り組むことが目的であるため、達成基準は60〜70%と低く設定されています。

企業のOKR実現のために部署のOKRが設定され、部署のOKR実現のためにチームや個人のOKRが設定されるというように連動性があることも特徴です。

360°評価

360°評価は上司だけでなく、同僚や部下など複数の立場の従業員が評価する手法です。様々な視点から客観的に評価を受けることで、評価される側の従業員も納得感を得やすいことが特徴です。

一方で評価する側とされる側の人間関係の悪化も懸念されており、匿名で評価するなどといった工夫が求められる場合もあります。

能力評価

目標管理制度(MBO)は業績が基準となるため営業職などに向いています。しかし企画職のように個人一人ひとりのスキルが求められる仕事には、能力評価をすることがあります。企画力のような個人のスキルが大幅に影響する仕事内容に対して、正しく成果を評価する制度です。

情意評価

情意評価は主に事務職など個人のスキルや業績に直結しづらい部門で使われることが多く、仕事に対してのモチベーションを評価します。一人一人の勤務態度や協調性、積極性などが対象となります。また管理職に対して役割使命感や貢献意欲などを評価する場合もあります。

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは企業の業績アップに貢献をしている従業員の行動特性をいいます。企業に貢献をしている行動には共通点があり、その共通点に沿って評価する方法です。 企業に貢献している従業員の行動を分析することから、目標達成するために最善の方法を分析することにもつながります。

バリュー評価

バリュー評価は、従業員が企業の一員としての価値観や行動基準(バリュー)をその程度発揮できたかを評価する手法です。同じ部署やグループの中で相対的に評価され、昇進や昇給に反映されます。

たとえ業績が良くても、バリューに沿った行動でないと判断されれば高い評価が受けられないことが特徴です。そのため、組織力向上や従業員の行動力が養われる手法だといえるでしょう。

ノーレイティング

ノーレイティングは数値やランクを使って評価せず、上司との面談で都度評価を行う手法です。一般的に面談は半年や1年といった単位で行われますが、ノーレイティングでは目標に対してその都度フィードバックを実施して評価が行われます。面談では過去の評価だけでなく、未来に向けたフィードバックを原則とされていることも特徴の1つです。

ピアボーナス

ピアボーナス(商標権者:Unipos株式会社)とは、従業員同士がお互いに感謝の気持ちをこめてポイントや手当として少額の報酬を送り合う手法です。評価基準の中にピアボーナスを導入することで、同僚から賞賛されている従業員を目に見える形で評価できるため、納得できる適正な評価につながります。

人事評価制度の成功事例

次に前述した人事評価制度を工夫して取り入れたことによって、従業員の評価に対する満足や企業の組織力向上に効果があった成功事例を紹介します。

「人事評価制度の手法が様々あるということはわかったが、どのように導入したらよいのかわからない」と悩まれる企業も多いことでしょう。ぜひ3社の成功事例を参考にしてみてください。

株式会社メルカリ【OKR/バリュー評価/ピアボーナス】

株式会社メルカリ(以下、メルカリ)では、「グループ全体」「事業部」「部署」「チーム」「個人」の順にそれぞれ3ヵ月ごとにOKRを設定し、互いのOKRを共有できる仕組み作りを行いました。短いスパンでOKRを行うことによって企業と個人の温度差が減り、メッセージが伝わりやすくなる効果がありました。

またメルカリのバリュー評価では、評価時期に被評価者が書いた3ヵ月分の頑張りに対して評価者が評価をしていました。

しかしどうしても直近の行動に評価が引きずられてしまう現状があったそうです。現在バリュー評価に対する労力削減や客観性を担っているのは、ピアボーナスです。ピアボーナスの導入によって従業員同士のやり取りが可視化され、より具体的な行動をもとにバリュー評価を行えるようになりました。

株式会社ディー・エヌ・エー【360°評価】

株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)では、半期に1度人事評価を行っています。評価のポイントは「成果(業績)」と「発揮能力(成長度合い)」。

どちらも上司と面談する中で強みを伸ばすことを目標を設定します。成果はボーナスに、発揮能力は基本給に反映されます。2つの軸を基準に給与が決まるため、従業員の納得感向上につながっています。

また、部下の伸びしろを引き上げる役割のマネージャーには360°評価を採用しました。DeNAの360°評価は記名式で行っており、誰からの評価なのかを分かるようにすることで改善につなげやすくしています。また、実際に改善して評価が上がったマネージャーは社内報に掲載することで、モチベーションの維持にもつなげています。

アドビ株式会社【ノーレイティング】

アドビ株式会社(以下、アドビ)では、以前上司が従業員の1年間の働きに対し、上位・中位・下位のランク付けを行う評価を行っていました。

しかし、なぜそのような評価がされたのかが明かされず評価のみ伝えられていたため、評価への納得感やアドビに対する満足度は50〜60%と低下する一方だったそうです。

そこでアドビは、「チェックイン」という名でノーレイティングを取り入れました。チェックインでは、3ヵ月に一度を目安に従業員と直属の上司が面談し、その都度個人目標に向けて成長したところや改善すべきところを話し合います。その結果、社員満足度は80%台にまで上昇。評価に対する透明性が成功につながりました。

人事評価制度を取り入れる際の注意点

人事評価制度を取り入れることによって従業員の評価に対する満足度や納得感が高まり、企業にとってよい側面があることが分かりました。しかし、効果のない取り入れ方をしてしまうと良い方向には進みません。ここでは、人事評価制度で注意したい点を2点あげます。

明確で具体性がある人事評価制度の確立

評価項目や基準、おこなう時期や方法は企業全体で共有する必要があります。評価項目や基準が従業員に明確に伝わっていない場合、従業員は目標設定の仕方や評価につながる行動が分からないまま働くことになります。そうなると企業への不満に繋がってしまい、人事評価制度はうまく生かされません。

人事評価は客観的におこなう

人事評価は、誰しもが納得できるような客観的な評価であることが非常に重要です。先述した明確さや具体性ともかかわってきますが、「なぜこのような評価になったのか」を部下に説明できなければいけません。

個人的な仲の良さや立場を重視した主観的な評価になってしまわないよう研修を行うなどの工夫が必要な場合もあります。

まとめ

人事評価制度が明確でなければ従業員のモチベーションを下げることになります。また従業員が企業の掲げている目標などを把握しづらく、人材育成をしやすい環境であるとはいえません。

人事評価制度が明確であり、かつ、公正であることにより従業員と経営者が企業の目標を共有でき、従業員のモチベーションを上げることによって企業の業績や生産性を高めることになります。

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