- 経営戦略
経営ダッシュボードとは
経営ダッシュボードとは、企業における様々な活動のデータや売上情報などを一度に可視化することができるものです。
経営者は現状を把握し、状況に応じて次のプランを考える必要があります。しかし、企業におけるさまざまな情報を集めるのに時間がかかっていては、次のプランに進むのが遅れてしまいます。
経営ダッシュボードを使うことで経営者は企業の現場をリアルタイムで把握することができ、分析をすることによってアクションを起こしやすくなります。
経営ダッシュボードとは
経営ダッシュボードとは、企業における売り上げのデータや関連する活動、人事関連など経営に必要なデータを1つの場所で可視化できるようにしたものです。
それぞれのデータを部署ごとで管理していたのでは、経営者がデータを集めるだけでも時間がかかります。また、経営者が分析しようとしたときには、すでにデータが更新されており正しいデータを得ることができません。
近年では数多くのデータ(ビッグデータ)から分析をする必要性があり、リアルタイムの情報を可視化できる経営ダッシュボードの需要が高まっています。
経営ダッシュボードでまとめられるデータ
経営ダッシュボードでまとめられるデータは、主に以下4種類の情報です。
- 売上
- 生産管理
- 仕入れ
- 人事
経営ダッシュボードはデータの可視化ができていない、もしくはより効率的な情報管理の制度を導入したい企業に推奨されます。
経営ダッシュボードで実現できること
経営ダッシュボードでは、主に以下5つの実現が可能です。
- 企業データの可視化
- データの一括管理
- リアルタイムでのKPI追跡
- データをベースにした戦略の立案、アクションの実施
- 迅速な意思決定を下せる環境の整備
経営ダッシュボードは企業の現状を数値化し、リアルタイムで確認できます。経営陣がいつでもデータを確認できる環境であれば、データ管理にかかっていた時間の削減が可能です。
データ管理の時間削減を実現できれば、新たな事業戦略や既存事業の課題解決などをスピーディーかつ確実なものにできます。
経営ダッシュボードのメリット
経営ダッシュボードのメリットは次の点が挙げられます。
- ビッグデータを活用
- スムーズに状況把握
- リアルタイムの状況を把握
- KPIの追跡が可能
ビッグデータを活用
近年ではさまざまなデータを扱うことが多くなっています。そのため、スムーズな経営をするためには ビッグデータの活用が重要です。 経営ダッシュボードはGoogle Analyticsやその他の効果測定ツールなどをつなぎこむことで、ビッグデータを一元管理し、正確な数値を可視化することができます。
スムーズに状況把握ができる
経営ダッシュボードは必要な情報が可視化されているため、 経営層にとってスムーズに状況の把握をすることができます。企業はそれぞれの部署において課題を抱えているのですが、経営者はそれらを統合して把握することができないために、課題解決に時間がかかっていることが少なくありません。
しかし、経営ダッシュボードを使うことでスムーズに状況を把握をすることができるため課題解決をしたり、従業員一人ひとりを評価しやすくなったりします。
リアルタイムの状況を把握できる
経営ダッシュボードは最新情報が常に自動集計されることから、リアルタイムの状況を把握することができます。そのため、経営者はリアルタイムの状況をもとに次の戦略を検討することができます。
KPIの追跡が可能
経営目標を達成するために、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を設定している企業が一般的となっています。ダッシュボードは経営に必要な情報がリアルタイムに反映され可視化することができるため、KPIを追跡しやすくなります。KPIから大きな誤差がある場合は、迅速に対応することができます。
経営ダッシュボードに必要な内容
経営ダッシュボードに必要な内容には次の点が挙げられます。
- 最新情報が自動で反映しているか
- 必要な情報が抜けていないか
- 随時改善が必要
- 適切なグラフや図を利用
- 見やすいレイアウト
最新情報が自動で反映しているか
経営ダッシュボードで重要なことは、 最新情報が常に自動集計されるということです。計算が必要なのはリアルタイムな情報であることから、必ず最新情報が自動的に可視化できるような経営ダッシュボードでないといけません。
必要な情報が抜けていないか
必要な社内データが抜けていると、正確性やリアルタイム性を備えているとはいえません。そのため売り上げや営業活動、広報活動、経理事務、人事の情報など普段の業務など、必要な情報を全て網羅している必要があります。
必要な情報とは経営ダッシュボードを誰が主に使うかによっても変わってきます。経営者の場合は売上状況や経営に関する情報が必要であり、人事部長が経営ダッシュボードを利用する場合は、それぞれの部門ごとの役職者の割合や年齢構成などが必要になってきます。
随時改善が必要
経営ダッシュボードは一度作ればそれで終わりというわけではありません。新しい戦略や経営判断をおこなった場合、その都度経営ダッシュボードの改善が必要になります。改善を重ねるうちにより良いダッシュボードにしていくことが重要です。
適切なグラフや図を利用
経営ダッシュボードにおいて、表示する指標を決めたあとは指標を表示するグラフや図を設定します。経営ダッシュボードは直感的にデータを把握するものであり、適切なグラフや図を選ぶ必要があります。
例えば、データ数値の水位を表すためには折れ線グラフ、さまざまな割合を把握したいのであれば円グラフなど、求めている情報の内容によって、使うべきグラフや図が決まってきます。
見やすいレイアウト
経営ダッシュボードは必要なデータを可視化できることにあります。そこで、見やすくするようなレイアウトを設定することが重要です。また、色使いによっても見え方が違うため、色の有効活用をする必要もあります。
もっとも重要なデータを目立つ真ん中、もしくは上部に配置することで、より見やすいレイアウトになります。
経営ダッシュボードの作成手順
経営ダッシュボードは、以下4つの手順で作成するのが一般的です。それぞれのステップを理解することで、より実用的な経営ダッシュボードを作成できます。
- データ取り込み
- レイアウト設計
- グラフの選択、作成
- データ連動
データ取り込み
まずは、企業内に蓄積されたデータを取り込むところから始まります。エクセルやERP(基幹業務システム)など、既存のツールからダッシュボードを作成できるツールに移行してください。
レイアウト設計
取り込んだデータをどのように表示させるのか、ダッシュボードのレイアウトを設計します。企業にとって重要なデータはできるだけ上部に表示させるというような工夫が必要です。
グラフの選択、作成
レイアウト設計をもとに、データを表示するグラフの形式を選択します。グラフ表示の場合は、以下のなかから適切なものを選択してください。
- 円グラフ
- 棒グラフ
- 折れ線グラフ
- 帯グラフ
- ドーナツグラフ
- 散布図
- バブルチャート
- レーダーチャート
データ連動
作成したダッシュボードに、企業データを連動させれば作業は完了です。ここで連動させるデータには、以下が挙げられます。
- 担当者ごとの売上
- 顧客ごとの売上
- 製品、サービスごとの売上
経営ダッシュボードを活用するポイント
経営ダッシュボードは作成するだけでなく、より効果的に活用するためのポイントを把握しておくことも大切です。以下に挙げる3つのポイントを意識してください。
- 優先すべき情報の明確化
- 独自性を意識した設計
- PDCAサイクル
優先すべき情報の明確化
企業にとって可視化すべきデータの優先度が、明確になっていることが大切です。ただ闇雲にダッシュボードにまとめるだけでは、効果的な活用にはつながりません。
網羅性も重要ですが、もっとも優先したい情報を分別する必要があります。リアルタイム性も含め、自社が優先すべきものは何かを分析してください。
自社の経営目標やKPIなど指標に基づいたものを作成できているかも重要なポイントです。経営を成功させるために立案した戦略を成功に導くものでなければ意味がありません。
独自性を意識した設計
可視化したデータを企業内の人間がわかりやすく把握できる設計を意識する必要があります。社外に発信するものではないため自社での把握しやすさを第一に考えてください。
例えば、自社のデータと相性の良いグラフを使用しているかといった観点が挙げられます。データのミスや異常が視覚で判断できるシステムになっているかも重要です。また、経営ダッシュボードのデザイン自体がわかりづらいという状況も回避しなければなりません。色やレイアウト設計など、単純な見やすさにも配慮する必要があります。
PDCAサイクル
経営ダッシュボードは、一度作成すれば完了する仕組みではありません。データを可視化したにもかかわらず、思うような改善が見られない場合は改善が必要です。
リリース後に活用し、不備が見つかったら改善するといった、PDCAサイクルを繰り返さなければなりません。状況の変化に応じ、最適な状態にアップデートしていく必要があります。
たとえ不備がなくても継続的にブラッシュアップする姿勢も大切です。今ある状態からより良くするためにはどうすべきかという観点を常に持つことで、より実用的な経営ダッシュボードを作成できます。
経営ダッシュボードを効果的に運用する方法
経営ダッシュボードを運用する際は、以下に挙げる注意点についても把握しておかなければなりません。より効果的な運用につながる重要なポイントであるため、必ず押さえておいてください。
- 自社に適したKPIを設定
- 情報の絞り込み
- 運用と改善の並行
自社に適したKPIを設定
特に複数のKPIを設定している場合は、KPIの優先度を分析し直す必要があります。複数あるKPIの中でも優先度の低いものを経営ダッシュボードに表示させては、企業戦略としての成功にはつながりません。
経営ダッシュボードに反映させるKPI設定を誤ると、効果が期待できないだけでなくコストや時間が無駄になります。自社にとっての優先度や業務との関連性などを見極め、最適なKPIを設定してください。
情報の絞り込み
優先したい情報が多いからといって、すべてを取り込んでしまってはかえって見づらいダッシュボードができてしまいます。経営ダッシュボードはスピーディかつ正確な意思決定のために活用されるものです。
したがって、取り込むべき情報の取捨選択も重要なポイントといえます。可視化する情報を絞り込むことで、企業全体での活用がより現実的になります。
運用と改善の並行
一度作成した経営ダッシュボードを、運用を繰り返しながら改善を進めることも大切です。最初に作成したものをしばらく運用し、そこで抽出された課題をもとにブラッシュアップする必要があります。
運用と改善の並行は、リアルタイムで課題を発見、解決できるのもメリットです。経営ダッシュボードをもとに試行錯誤を続けることで、最適化への意識が高まります。
経営ダッシュボードを使う上での懸念点
経営ダッシュボードを使ううえで、注意するべき点は次の3点です。
- 経営ダッシュボードだけで判断
- 経営ダッシュボードを導入後放置
- 技術者が必要
経営ダッシュボードだけで判断
経営ダッシュボードは利用者にとって、必要なデータを可視化することができます。経営者が利用する場合は、売上状況や各部門の業務の状況などを把握することができ、KPIの追跡も可能です。
しかし、経営ダッシュボードだけですべてを判断して、経営を進めていると思いどおりに進まないことがあります。経営ダッシュボードの内容を把握することで、すべてを理解できていると錯覚している経営者は決して少なくありません。
例えば、経営には内部要因だけでなく外部要因もあります。あくまで経営ダッシュボードの数値は指標に過ぎません。
経営ダッシュボードを導入後放置
なかには経営ダッシュボードを作成することがゴールとなっていて、導入後運用できていないケースが見られます。経営ダッシュボードは運用しながら、組織の成長や経営状況によっては経営ダッシュボードを変化させていく必要があります。
分析ツールは柔軟であることが大きな特徴であるため、経営ダッシュボードも作成したらゴールではなく、とりあえず経営ダッシュボードを作ってから、いろいろ考えるといった方がスムーズに経営ボードを運用できます。
技術者が必要
経営ダッシュボードはさまざまなデータを繋ぎこむことで、より多くのデータを反映させ正確な情報を提供することができます。しかし、データをつなぎこむためにはコーディングやプログラミングといった専門知識が必要になるため、企業の負担になるケースがあります。ダッシュボードの運用やデザイン、さらに改善をするときなども技術者が必要です。
まとめ
経営ダッシュボードとは、さまざまな企業情報を可視化し、リアルタイムでの課題解決を実現できるシステムです。必要なデータだけを抽出することも可能であるため、情報の見える化を通じた効率化も実現できます。
企業情報を可視化できるだけでなく、データの一括管理やKPI追跡、新たな戦略を立案できるのも経営ダッシュボードの特徴です。基本的な作成手順を押さえたうえで、自社に最適なものを作成してください。
経営ダッシュボードを作成する際は、より効果的に活用するポイントや注意点も把握しておく必要があります。あくまで自社のみをターゲットにし、結果につながるものを作成しなければなりません。