- AI / DX
生成AI(ジェネレーティブAI)とは
2022年、詳細な情報を伝えるチャットボットやテキストをもとに画像を自動生成するツールの登場が国内で話題になりました。このように0からコンテンツやアイデアを創出する次世代AIをジェネレーティブAI(生成AI)と呼びます。AI技術は新たな領域に進もうとしているのです。
ジェネレーティブAIは、既存の社会構造を根本的に覆す可能性を秘めているといわれています。その影響は、世界経済フォーラムからも「社会と業界が備える必要のあるゲームチェンジャー」といわしめるほどです。
生成AIとは
生成AI(ジェネレーティブAI)は、サンプルデータからアウトプットを自動的に生成する機械学習の手法です。従来のAIと違い、0からコンテンツを生成する学習能力を備えています。
アメリカのGartner社が2021年に開催したGartner IT Symposium/Xpo 2021のなかで、2022年に市場でもっとも注目されている次世代AIテクノロジーとしてジェネレーティブAIが取り上げられました。既存のAIとは違う新しいアウトプットを生み出す強力なAIとして、注目が集まっている技術です。
0から1を生成するAIテクノロジー
ジェネレーティブAIの最大の特徴は、少ないサンプルデータからコンテンツを生み出すことです。これまで人間にしかできないとされていた「考える」や「計画する」という行為をAIが実行することで、アイデアの創出を可能とします。
幅広い分野で活躍が期待される技術
ゲーム開発や薬学など、すでに国内でもジェネレーティブAIの技術転用は幅広い分野で使われています。
画像を自動生成するStable Diffusionや質問に対する答えをテキストで自動生成してくれるChatGPT、bing AIチャットなど、2022年から注目が集まったツールもジェネレーティブAI技術の1つです。
Stable Diffusionに関してはオープンソースとして公開されているため、今後ジェネレーティブAIの技術転用が加速することが予想されます。
生成AIと従来のAIの違い
ジェネレーティブAIの登場は、世界で取り組まれている研究を新たな領域に進めると期待されています。単純な従来のAIの性能アップと違い、ジェネレーティブAIはAI自身がコンテンツを自ら生み出す革新的な性能を備えているからです。
従来のAIの役割はデータをもとに予測すること
これまでのAIでできることは、データをもととした結果の予測や、あらかじめ決められた行為を自動的に実行することでした。そのため、AIが性能を十分に発揮するには大量のサンプルデータが必要だったのです。
既存のAIは予測や自動化が役割とされていたため、AIが割り出した結果をもとに人間が具体策を考える、という流れが一般的でした。
生成AIの役割は新たなアウトプットの創出
生成AIが既存のAIと決定的に違う点は、AI自身がコンテンツを生成できることです。次世代AIとして生成AIが注目されている理由は、これまで人間にしかできないとされていた考える行為をAIで実現できるようになったためです。
生成AIがビジネスに与える影響
ディープラーニングを初めとするAI技術が医療や工学分野に革命を起こしたように、生成AIは既存のビジネスや社会構造に多大な影響を与えることが予想されます。
工数と費用の削減
開発プロセスにおいてもっとも労力を費やす工程はアイデアの創出や設計のアウトプットです。多くの企業では会議やディスカッションで開発商品の要件を定義しますが、生成AIを用いれば短時間、かつ、少ない労力でアウトプットしてくれるようになります。
従来のAI技術だと設計や案自体は人間がおこなうものとして考えられてきましたが、生成AIを活用すればその必要もなくなる可能性を備えています。多くの時間、費用、労力を必要としたアイデアがAIによって解決するので、工数や費用に対して大きな削減効果があります。
新しいアイデアの創出
人間が生み出すアイデアには、個人の思惑や先入観が混在することが多々あります。そのため、革新的とまではいかない安易なアイデアに落ち着いてしまうことも珍しくありません。
ユーザーの指示からコンテンツを自動生成するジェネレーティブAIは、ときに人間の思考とは性質の違う回答を得られます。既存のアイデアに捉われない独創性を発揮できるのも、ジェネレーティブAIの強みです。
品質の安定
AIによる作業の自動化や予測は、製造や建築など多くの分野で品質安定に貢献してきました。それはジェネレーティブAIも同じで、サンプルデータを多く学んだAIが生み出した設計案やアイデアは品質の安定につながります。
また、ジェネレーティブAIの優秀な学習能力は少ないサンプルデータでも精度の高い結果を生成します。与えるデータさえ間違えなければ初期段階から一定の品質を維持できるのが既存のAIとの大きな違いです。
生成AIを用いた技術
プロンプト(ユーザーの指示)から文章を組み立てるサービスや絵画のような画像を自動生成するゲームなど、すでに世の中には生成AIを用いたサービスやアプリケーションが次々と登場しています。
ChatGPT
人工知能研究所のOpenAIが2022年11月にリリースしたAIチャットサービスです。InstructGPTと呼ばれる言語モデルがベースとなっており、インターネット上にある大量のテキストデータを学習して質問者に回答します。
以下はChatGPTで「ジェネレーションAIってなに?」と質問した際の回答です。
ChatGPTは専門家とチャットしているかのような自然な言葉を返します。従来のチャットボットよりも自然な形で精密な回答をくれるのが特徴です。
IPhone搭載のSiriが比較対象として挙げられますが、ChatGPTはSiriと違い、専門性の高い質問に対しても答えを提示できる性能を有しています。雑談に対応できる点もSiriとの大きな違いです。
インターネット上の情報をもとに回答する特性から、ネット上の情報が充実するほどChatGPTの精度が上がります。現状ではうまく回答してくれない場合でも、データが集まれば答えられるようになるのです。
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、ミュンヘン大学が2022年に公開した画像生成AIです。入力されたテキストをもとに、AIが画像を自動生成します。
例えば「stone」のテキストを入力すると、AIが自動的に以下のような画像を生成します。
上記の画像はインターネット上にすでに存在するものではなく、AIがプロンプトとインターネット上の情報をもとに自ら生成した画像です。
これまでのAIでは、「石」というキーワードなら石に関する情報を学習して、関連性の高い画像をピックアップするものでした。しかし、ジェネレーティブAIを搭載したStable Diffusionの場合、AIが「石」を自ら学習しそれをオリジナルの画像としてアウトプットします。
DATAGRID DrugFinder
DATAGRID DrugFinderは、株式会社データグリッドが開発した創薬プラットフォームです。このプラットフォームでは、ユーザーが入力した化合物に対して、創薬に必要な化合物の最適化構造や骨格変換をAI自身が提案します。
従来では多大な時間やコストがかかっていた化合物の探索や分子設計の一端をAIが担うことで、創薬の新たなアウトプットや化合物探索の高速化が可能です。
まとめ
生成AIは精度の高い学習機能を備えた次世代型AIで、少ないデータからコンテンツやアウトプットを生み出せる特性を持っています。予測や自動化を得意としてきたこれまでの機械学習と違い、AI自らが提案やアイデアを生成するのです。
ゲーム開発やデザインのアウトプットなど、ジェネレーティブAIを用いたビジネスへの転用はすでに始まっています。生成AIは時代の中心となる可能性を秘めた技術です。