2022.05.26

経験経済とは

経験経済とは、商材などをモノとして売るのではなく、コトを販売することです。ユーザーがお金をかけて購入したいという意欲をかき立てるために、経験を通じたリアルな情報が求められています。

類似製品が多く流通する市場で重要なのは、商材の購入により得られる経験での差別化です。経験経済は、市場競争を勝ち抜くために必要な概念であり、意識すべき施策ともいえます。

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経験経済とは

経験経済とはユーザーにとっての経験が価値として残るように提供し、ビジネスを展開する方法です。Experience Economy(エクスペリエンス・エコノミー)と呼ばれることもあります。情緒・感性に根付くことを意識し、ユーザーの心に届く販売戦略などを展開するのが経験経済の特徴です。

経験経済は類似するサービスが多く展開されている現在の日本市場において、他社との差別化を図るための重要な観点といえます。市場競争に負けないためにも、押さえておくべき要素です。

従来の経済との違い

ただモノを売るだけでなく、モノを売り続けるためにコトの重要性も取り上げているのが、経験経済と従来の経済との違いです。

これまでの経済のなかで当たり前にあった、サービス・産業・農業それぞれの経済が発展したことで経験経済の概念が生まれました。商材そのものを届けることに注視していた経済が、商材を届けることを通じて得る経験にフォーカスするようになります。

商材さえよければ売れたこれまでの経済から、ユーザーの選択肢が経験によって左右される経済に変化したといえます。

経験経済の進化

従来の経済から経験経済へと進化し、経験経済もまた進化を続けています。経験経済が進化する背景にあるのは、テクノロジーの発展です。テクノロジーが発展することにより、ユーザーはさまざまな入口から経験を入手できるようになりました。

経験経済の背景にあるコモディティ化

経験経済が注目される背景には、類似製品の差別化が困難になり、市場価値が低下してしまうコモディティ化があります。経済が発展し、さまざまなサービスが展開されるようになった市場において、いわゆる類似製品の差別化は非常に困難です。類似製品のわかりやすい例には、コンビニのコーヒーや文房具などが挙げられます。

コモディティ化が生じる原因は市場主義や思考の平均化、価格競争などです。営業戦略の差別化やオリジナリティの確立などを実施しなければ、コモディティ化は避けられません。コモディティ化の進行は営業戦略への悪影響や、利益率の低下につながるため注意が必要です。

経験経済に関係する経験価値とは

経験価値とは、モノの消費からコトの消費に重要性が切り替わった現代において、ユーザが得た経験に価値があるという考え方です。経験価値に焦点を当てた、経験価値マーケティングを実施する企業も増加しています。

経験経済と同様、商材そのものではなく、商材を通じることで何を得られるかにフォーカスしているのが特徴です。コモディティ化が課題となるビジネスシーンにおいて、必ず押さえておくべき観点といえます。

経験価値を構成する5つの要素

経験価値は、以下5つの要素で構成されています。

  • SENSE
  • FEEL
  • THINK
  • ACT
  • RELATE

SENSE

SENSEとは感覚的な経験価値のことで、商材を通じてユーザーが感じた経験に対して訴求するという考え方です。SENSEにおいては、以下を通じた経験を重視します。

  • 視覚
  • 味覚
  • 聴覚
  • 嗅覚
  • 触覚

いわゆる五感を通じて得られる経験が該当します。商材の味や店舗の外装、BGMなどが例に挙げられます。

FEEL

FEELとは情緒的な経験のことです。従来の商材になかった独自性や画期的な発見などを通じ、好奇心を刺激することなどが該当します。新しい商材を生み出す意識を持つことで、顧客満足度の向上だけでなく、企業の成長にもつながります。

THINK

THINKとはユーザーが商材に触れた際の感動を想起させる創造的、認知的な経験が該当します。商材に期待・興味を持ってもらうための経験です。

ACT

ACTとはユーザーが実体験を通じ、ライフスタイルや体に変化を感じることで得られる経験のことです。美容室やエステなど、効果を実感しやすい商材が該当します。

RELATE

RELATEとは交流を通じた経験のことです。所属意識に訴えかけ、共感を得ることで商材を広める目的があります。商材を通じたユーザー同士のコミュニティなどを通じ、仲間意識を芽生えさせることを指します。

経験経済の成功事例

経験経済の成功例として挙げられるものの代表には次のようなものがあります。

  • スターバックスコーヒー
  • adidas
  • バルミューダ

スターバックスコーヒー

スターバックスが提供しているのは、種類が豊富なコーヒーそのものの価値だけではありません。コーヒーを飲む場所や空気を演出することで、ユーザーに経験価値を与えています。

スターバックスでパソコンを開いて仕事をしたいというユーザーのニーズは、スターバックスの店内でしか満たせません。店内の雰囲気を味わいながらコーヒーを飲む時間を過ごすこと自体に、スターバックスの価値を感じる方もいます。

スターバックスではこれらのニーズに対し、サードプレイスの提供という観点で応えています。自宅や職場では味わえない日常を提供することで、ユーザーにとっての新たな価値を実現しました。スターバックスでコーヒーを飲むことそのものに価値を見出した、経験経済の成功事例です。

adidas

adidasでは、体験型店舗のオープンによる経験経済の事例があります。サッカーボールを蹴りながらスパイクを試し履きできるという、新しい取り組みが注目されました。

試し履きの導入によりスパイクそのものの履き心地はもちろん、サッカーボールを蹴るリアルな感覚を試せるようになりました。商材の価値を、実際に使用するシーンに則って体験できるという価値がユーザーの満足度につながっています。

また、adidasが実施する経験経済の効果は、売上アップだけに留まりません。実際に試し履きして商品を試せるという、ブランドロイヤリティの向上にも一役買っています。

バルミューダ

家電メーカーのバルミューダでは、自社の商材を活用して調理した料理を提供する店舗をオープンしました。いわゆる体験型店舗として経験を提供し、経験を通じて得たおいしいという感情を価値としてユーザーに与える手法です。

バルミューダの家電で作れる料理を提供することで、商材が持つ価値を高めることに成功しています。

自宅で使用することの多い家電を、あえて店舗という形でアピールすることにより、他社との差別化にもつながりました。お店の味を自宅でも再現したいという、ユーザーのシンプルなニーズにも応えられる施策です。

経験経済の提供によるメリット

経験経済を実現させることで、以下2つのメリットがあります。

  • 他社との差別化
  • ユーザーの愛着度向上

他社との差別化

経験経済の実現には、企業ごとのオリジナル戦略が重要視されます。他社と異なる独自性の強いアイデアを生み出すことで、自社ならではの価値をユーザーに提供できます。他社との差別化を目的とした経験経済の実現は、モノではなくコトを売る前提で、他社にない商材・戦略を考えなければいけません。

ユーザーの愛着度向上

経験経済は実際に商材に触れたユーザーの実体験により成り立つのが特徴です。経験を通じて購入した商材には愛着が湧きやすいため、顧客としての定着が期待できます。ファッションアイテムの試着や、先ほども紹介したスターバックスやadidasでの体験が例に挙げられます。

まとめ

モノのみに価値を求めるのではなく、モノを通じて得られるコトを経験として重視するのが、経験経済です。コモディティ化が問題視される現代において、他社との差別化を図るために重要な観点といえます。

商材が持つ特徴だけでなく、ユーザーが満足するポイントがどこにあるのかを見極めなければいけません。激化する市場競争を勝ち抜き、企業を発展させるためにも、経験経済の概要や重要性の把握は重要です。

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