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デプス調査とは
デプス調査とは市場調査の方法の1つで、消費者と1対1でインタビュアーと対話をすることです。企業活動をするときにおこなう市場調査において、アンケート調査では行動の傾向までを分析することができても理由まで把握することはできません。
そこで、消費者と1対1のインタビューをすることで、消費者に対して行動の理由まで聞き取りをすることができるのがデプス調査です。比較的長い時間をかけて調査をおこなうことが特徴で、第三者により対象者の行動や表情まで分析することができます。
デプス調査とは
デプス調査(Depth Interview、DI)とは市場調査の方法の1つで、消費者と1対1でインタビュアーと対話をすることです。対象になった人が行動を起こした理由を深堀することが目的で、ときには消費者本人が自覚をしていないことを引き出すこともあります。
デプス調査のメリット
デプス調査には次のようなメリットがあります。
- 人前では話しにくいことも話せる
- オンラインで調査できる
- 本音を聞くことができる
人前では話しにくいことも話せる
デプス調査は1対1でおこなうため、人前では話しにくいような内容のテーマに向いています。特に金融関連や病気関連などをインタビューする際に効果的です。
オンラインで調査できる
デプス調査はオンラインでおこなうことができるため、場所を問わないことから対象者を集めやすいのが特徴です。対象者は自宅など、自分がリラックスできる場所で話をすることができるため、本音を話してもらえる可能性が高まります。
本音を聞くことができる
デプス調査は1対1のインタビューで、充分に時間をかけることから、参加者は本音で自分の意見を述べることができます。 対象者が本音を話してくれるためにも、インタビュアーがうまく誘導することも大切です。
デプス調査のデメリット
デプス調査のデメリットには次の点が挙げられます。
- 時間がかかる
- コストがかかる
- 議論は広がらない
時間がかかる
デプス調査は1対1のインタビューであり、一度のインタビュー時間が長いことがデメリットです。そのため、大量のサンプル数を集めることはできません。しかし、サンプル数として少なくても10件ほどは必要であるため、消費者の時間の取りやすい週末を使って一気に調査をおこなうと効率的です。
コストがかかる
デプス調査は一度の調査に時間がかかるため、1日に多くの調査をすることはできません。そのため、分析をするのにデータを集めるだけで時間がかかります。デプス調査のデータを分析する場合はスケジュールに余裕を持たせることが必要です。
議論は広がらない
グループ調査の場合は、1つのトピックから議論が膨らんでいく可能性がありますが、デプス調査では話題が広まることはありません。また、デプス調査で得られるデータは、あくまで個人の意見であり代表性がない場合もあります。
しかし、デプス調査の目的はあくまで、個人の行動に対する理由や思考などの深層心理を深めることです。デプス調査で得られたデータを使い、仮説を設定することにより、定量調査にてどれくらいの回答者から共感を得られるか調査することができます。
エスノグラフィー調査との違い
デプス調査と同じように、調査対象が1人で1時間以上おこなう調査にエスノグラフィー調査があります。デプス調査とエスノグラフィー調査の違いは次の2点です。
- 調査の目的
- 調査のテーマ
調査の目的
デプス調査の目的は消費者の行動に対しての理由や思いなどの過程を理解することです。それに対してエスノグラフィー調査は、行動をおこす前の潜在意識を見つけることです。
調査のテーマ
エスノグラフィー調査は消費者が行動を起こす前に、知っておきたいデータが向いています。例えば、新商品や新サービスを開発しているときにどのような意識で購入、利用するのかを知るための調査です。
デプス調査は行動してからその理由を聞くため、病気やお金などのなかなか聞きにくいテーマが向いています。
デプス調査の流れ
デプス調査をする流れは、以下のようになるのが一般的です。
- 調査対象者を決める
- 報酬額を決める
- 設問の決定
- インタビューフローの設定
- インタビューの開催
調査対象者を決める
まず、調査の対象者を事前のWEBアンケートから決めます。ここで対象者を選定する基準がわからないようにすることが重要です。WEBアンケートをする人は、報酬が欲しくて事実と違うことを話す可能性があるからです。
報酬額を決める
グループ調査よりも1対1の調査のほうが報酬額の設定は高く、60分で5,000円〜8000円位が相場です。専門職や管理職などにあたる人が対象の場合は、さらに報酬が高くなることがあります。
設問の決定
調査で質問する内容をリストアップし、優先順位を決めていきます。60分〜90分と長めの設定ではありますが、会話の内容によっては聞きそびれる可能性があります。
そのため、調査の進み具合によっては優先度の低い質問は利用しない可能性があります。
インタビューフローの設定
インタビューフローの設定では、適切な質問であるか、深堀できるような質問になっているか、時間配分ができているかなどの見直しをおこないます。必ずしも時間通りに調査が進むとは限りませんので、臨機応変に質問を変えられるようにある程度シミュレーションしておくことも求められます。
インタビューの開催
1度の調査で1人だけ、さらに1度の調査が60分〜90分と時間がかかるため、1日で調査できる人数は限られています。それでも、サンプルとして10名程度は欲しいため、土日などに集中してインタビューをすることが一般的です。
デプス調査で対象者に本音で話してもらうためには
デプス調査はデータをとるために、対象者に本音で話してもらう必要があります。そのためには次のようなコツがあります。
- 聞き役になる
- 共感する
- 話しやすい質問を準備する
聞き役になる
対象者に本音で話してもらうためには、インタビュアーは聞き役に徹する必要があります。対象者が話しやすい環境を作ってこそ、本音を引き出しやすくなります。無理にデータを取ろうとしていろいろ聞こうとすると、本音を聞けなくなる可能性があります。
共感する
特にデリケートな話題を話すとき、共感してくれる相手には落ち着いて話しやすくなります。そのため、相手を否定するようなことはNGです。インタビュアーが違う意見を持っていても、決して反対するようなそぶりを見せないことが重要です。
また、インタビュアーが先入観を持っていては対象者と共感することはできません。そのため、対象者の話すことに対して興味を持つことが重要です。
話しやすい質問を準備する
いきなり回答しづらい質問をしてしまうと、対象者は余計に話しづらくなります。1対1のインタビューは対象者も緊張していることを忘れてはいけません。特に病気や金融関連などデリケートな質問をする場合は、答えやすい質問からすることが大切です。
最初の質問は出身地など、インタビューとは全く関連のない内容であっても問題ありません。
まとめ
デプス調査とは市場調査の1種で、1対1または60分〜90分と長い時間を使って調査をおこなうことです。主な目的は行動をしたあとに、その理由や思考を掘り下げて調査することで、金融関連や疾患など他の人にはなかなか話せないようなことを、質問することが一般的です。
深層心理を聞き出すために、いろいろと聞いてしまいがちですが、インタビュワーはあくまで聞き役であり、対象者が話しやすいような環境作りが重要です。