- 事業開発
死の谷とは
死の谷とは
経営を新規で成功させるためには、死の谷とよばれる関門を突破しなければいけません。技術経営を新規で立ち上げると、まず魔の川と呼ばれる関門に遭遇します。魔の川とは研究開発に始まり製品化まで進めるプロセスにおいての関門のことをいいます。
製品化まで進めると、次に事業として発展させ売上につなげる必要があります。この工程において資金や人材などの経営資源を調達する必要がありますが、このプロセスで必要な資金は魔の川におけるプロセスよりも一桁多いことが一般的です。
売上が伴わないと事業を続けることができず、事業を続けられないと人材の確保がむずかしくなります。このように売上が立たないことにより、悪循環となることを死の谷といいます。売上が上がらないまま運営資金が足りなくなり、事業を続けることができなくなるケースは決して少なくはありません。
新規事業を成功させるためには、死の谷を乗り越えてさらにダーウインの海を乗り越える必要があります。ダーウィンの海とは、ライバル企業に勝つことをいいます。この時点で初めて新規事業が成功したといえます。
死の谷が起きる理由
死の谷が起きるのには次のような理由が挙げられます。
- 予算面においての死の谷
- 新規事業担当者が成果を出せない
- ユーザーにおいての死の谷
予算面においての死の谷
死の谷が起きるのは予算が確保できないことも原因の1つです。 予算が枯渇する理由として、新規事業者と経営層の間で、新規事業における成功基準がずれている可能性があります。新規事業の担当者は、新規事業における市場規模や競合他社の動向などを継続的に新規事業に投資をする経営層とすりあわせをすることが重要です。
新規事業は新規事業者が単独で成功基準を決めるのは容易ではないことから、事業の成果を常に経営者と情報交換することが大切です。
新規事業担当者が成果を出せない
新規事業者がなかなか結果をだせずに不安を抱いてしまい、モチベーションを低下させる可能性があります。結果的に担当者のモチベーションの低下が成果を出せない原因となる可能性があるため、成果について定期的に経営陣とすり合わせをすることが大切です。
さらに、現状報告を経営陣にして成果の基準を変更する必要がある場合もあります。
ユーザーにおいての死の谷
新しい商品を必要としているユーザーがなかなか見つからないといったことは、新規事業において起こりがちです。ユーザー分析の時点で誤って進めている可能性が高いため、ユーザーが持つ課題を解決するために新商品がどのような提供価値を持つのか分析をすることが重要です。
死の谷を越えるためには
死の谷を越えるためには次のようなことが必要になります。
- ダイバーシティ組織の設置
- コストを下げる
- 資金調達のみ頼らない
- スピーディーにPDCAを繰り返す
- ステージゲート方式で予算確保をする
ダイバーシティ組織の設置
死の谷を乗り越えるためには、ダイバーシティ組織の設置が重要です。ダイバー組織とは、実績やノウハウを持っている人材を取り入れている組織のことをいいます。SmartTimesインターウォーズ社⻑の吉井氏は、次のようにダイバーシティ組織の重要性について語っています。
デスバレーを越えIPOした会社組織には経験豊かな人材が社外役員やアドバイザーとして参加していることが多く、ダイバーシティ組織が変化に対応する役割を果たしている。ダイバーシティ組織を作ることで、現状把握から集中すべきこと、やらないことを見極め、ケイパビリティー(組織の推進能力)を高めることができる。
出典:「死の谷」を乗り越える組織(日本経済新聞)
コストを下げる
死の谷を越えられない原因の1つにコスト面で合わないことが挙げられます。そのため、消費者ニーズに合うまでコストを下げる方法があります。
資金調達のみ頼らない
資金調達だけに頼るとコスト面において継続して経営するのがむずかしくなります。これまで以上に、収益を伸ばすことに力を入れることが重要になります。収益を伸ばすためには、PMF(Product Market Fit、プロダクトマーケットフィット)につなげることです。PMFとはユーザーが製品に対して満足しており、市場に受け入れられている状態をいいます。
スピーディーにPDCAを繰り返す
収益につなげていくためには、スピーディーにPDCA(Plan、Do、Check、Action)を繰り返すことです。ユーザーのニーズを掴んで、商品に課題がある場合は迅速に対応していかないと競合他社の商品にすぐに移ってしまいます。
ステージゲート方式で予算確保をする
ステージゲート方式とは、新規事業開発をする時に、アイディアの創出から市場にでていくまでのステージを分割します。それぞれのステージをクリアするための基準を設定して、クリアしたら次のフェーズに進むといったフレームワークとなります。つまり、最終的に事業化するためには全てのフェーズをクリアする必要があります。
ステージゲート方式の特徴はそれぞれのフェーズにおいてクリア基準があり、フェーズをクリアできないようであれば早めに見切りをつけることにあります。将来性の乏しい事業に人材や時間を継続して投入することは、企業のためにならないといった考え方です。
死の谷を越えた事例は次のようになります。
- plusbenlly
- 企業の福利厚生向上に貢献
plusbenlly(プラスベンリー)
NECパーソナルコンピュータ株式会社が立ち上げた新規事業として、データを相互利用できるplusbenllyがあります。リリースの段階でキュレーションズと共同で進めることによって成功した例です。
リリースの段階から多くの企業、またユーザーを巻き込むことにより市場理解を進めることができます。さらに、担当者のモチベーションを上げたり多くの企業が参画することにより投資判断がしやすくなるメリットがあります。
一つのAPIで様々な機能やデータを簡単に相互利用できるようになる「plusbenlly」をNECパーソナルコンピュータ株式会社とキュレーションズが共同開発しました。
plusbenllyとは 利用企業が、持ちたいデータを持ってサービス提供に活用することができるツールで、一つのAPIで様々な機能やデータを簡単に相互利用できるようになります。IoTデバイス開発者・サービス提供者・サービス開発者の想いをサポートする オープンなIoT Developers Platformです。
出典:【NECパーソナルコンピュータ株式会社】plusbenlly(Curations)
企業の福利厚生向上に貢献
多くの企業において人材不足が課題となっています。そこで、従業員の満足度を上げたり、採用時に企業のメリットを出すたりするために福利厚生に力を入れている企業は少なくありません。
キュア・アップでは福利厚生向上の一貫として、薬剤師や看護師の資格を持っている禁煙指導員が、禁煙をしたい人に向けてサポートをできるアプリであるascure卒煙プログラムを開発しました。
まとめ
製品を開発したあと、事業化するフェーズで起こる問題を死の谷といいます。製品を開発する時点よりも、事業化する方が資金が必要になるため製品開発時よりも成果が上がらないと企業にとって大きなダメージになりやすいのが特徴です。
そのため、事業化に失敗しているケースが多く見られます。新規事業で成功するためには、必ず越えなければいけないフェーズであるため対策が必要になります。