2022.09.20

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードとは企業統治のために記述されたガイドラインです。金融庁と東京証券取引所によってはじめて公表されたあと、2度にわたって内容が改訂されています。

2021年に改訂された内容には、採用人材における多様性の推奨やサステイナビリティを囲む課題解決などが含まれており、社会の変化に対応できる組織づくりを目的としています。コーポレートガバナンス・コードへの取り組みは強制ではありませんが、上場企業は対応が必要です。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードとは企業統治に向けたガイドラインです。利害関係を持つ顧客や従業員、株主と良い関係を築いたうえで、企業が公正で迅速な対応ができる仕組みについて記述されています。2015年にはじめて金融庁と東京証券取引所からコーポレートガバナンス・コード原案が公表されました

2018年に内容が改訂され、より実用的な新しい指針へと変更されています。さらに、パンデミックやDX(デジタルトランスフォーメーション)の影響を受け、2021年に再度改訂がおこなわれています。

2度目の改訂では新しい項目が追加されました。内容は人の持つ能力を資本として考えるヒューマンキャピタルや持続可能性への課題などです。コーポレートガバナンス・コードは日本取引所グループのWEBサイトで確認できます

コーポレートガバナンス・コードの法的拘束力と適用対象

コーポレートガバナンス・コードは東京証券取引所のガイドラインです。そのため法的拘束力はなく、適応対象も限られます。

法的拘束力

コーポレートガバナンス・コードには法的拘束力はありません。違反しても罰せられることはないですが、東京証券取引所の公表措置の対象とされるため注意が必要です。

違反した事実が公表されると評判は落ち、企業価値が薄まります。企業の損害につながるため、対象となる企業はコーポレートガバナンス・コードの対応を求められます。

適応対象

適応対象は基本的に東証に上場した企業のみです。東証第一部と第二部の上場企業の場合だと、コーポレートガバナンス・コードは基本原則、原則、補足原則の3段階で構成されています。マザーズとJASDAQの場合だと、基本原則のみを遵守範囲としています。

基本原則は名前の通り、基礎レベルの原則であり、原則は基本原則より具体性のあるものです。補足原則は原則の実現に向け、具体的な行動レベルにしたものです。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則

コーポレートガバナンス・コードに記述される内容は5つの基本原則と原則、補足原則で構成されています。コーポレートガバナンス・コードが伝えたい内容を理解するには基本原則を把握すると良いです。

基本原則は次のとおりです。

  1. 株主の権利と平等性の担保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

株主の権利と平等性の担保

株主は企業にとって重要な存在であるため、上場企業には株主の権利と平等性を担保するための対応が求められます。具体的には株主の声を聞き入れることや判断に役立つ情報を提供することが該当します。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

株主以外に顧客や従業員など、ステークホルダーは数多くいるため、適切な協働が上場企業には求められます。あらゆる立場の人と協働することで、企業価値の向上や成長の促進に向けて効果的な取り組みをおこなえます。

適切な情報開示と透明性の確保

上場企業はさまざまな方から投資対象とされています。そのため、企業としての信頼度や価値向上に向け、情報開示と透明性の確保が求められています。情報開示では主体的な取り組みであることと分かりやすい内容であることが大切です。

取締役会等の責務

取締役会は企業における重要な意思決定や取締役を監視する役割を持ちます。企業の今後を左右する重要な役割であるため、実効性の高い取締役の任命が上場企業には求められています。

株主との対話

会社と株主は株主総会で対話する機会がありますが、別で話し合う時間を設けると企業の価値向上や成長につながると指摘されています。そのため、コーポレートガバナンス・コードは株主との会話の促進に向けた取り組みを開示するよう企業に求めています。

コーポレートガバナンス・コード改訂の理由

コーポレートガバナンス・コード改訂の理由は次のとおりです。

  1. 社会の変化が激しい
  2. 市場区分が変更となる

社会の変化が激しい

社会の変化が激しいため、多くの企業にはコーポレートガバナンス・コードへの迅速な対応が求められています。2020年に起きたパンデミックの影響を受け、企業は働き方の改善やDX化に力を入れるようになりましたが、事前に対策を練っていれば大きな損害を防げました。そのため、どんな問題にも対応できる持続力と、持続力がもととなり向上する企業価値に向け、企業では経営戦略を見直す必要があります。

市場区分が変更となる

コーポレートガバナンス・コードは3つの市場区分で構成されています。それぞれ規模の基準や範囲が異なるため、変更の際はコーポレートガバナンス・コードの改訂が必要です。

市場区分とは以下を指します。

  1. グロース市場
  2. スタンダード市場
  3. プライム市場

グロース市場、スタンダード市場、プライム市場の順に市場の規模や基準は大きくなります。市場区分の変更により、企業は優れた管理体制を構築できます。

コーポレートガバナンス・コードにおける課題

コーポレートガバナンス・コードにおける課題は次のとおりです。

  1. すべての企業に貢献できていない
  2. 企業との考え方にズレが生じる

すべての企業に貢献できていない

コーポレートガバナンス・コードは中長期における生産性向上と収益性の実現をもとに、企業が変化の激しい社会へ対応できる仕組みづくりを目的として公表されています。しかし、一部の企業ではコーポレートガバナンス・コードの効果が感じられていません。コーポレートガバナンス・コードがすべての企業に良い影響をもたらすには、まだ改善の余地があります。

企業との考え方にズレが生じる

持続的に成長する仕組みづくりを促したのはいいものの、一部の企業では対応に負担がかかる、企業とコーポレートガバナンス・コードの考えにズレがあるなどが課題となっています。どちらの考えが正しいという訳ではありませんが、どのような措置が適切かどうかは企業側が決定する必要があります。

コーポレートガバナンス・コード改正における変更点

コーポレートガバナンス・コード改訂における変更点は次のとおりです。

  1. 取締役会の機能を強化する
  2. 管理職の多様性を推奨する
  3. サステイナビリティを囲む問題を解決する

取締役会の機能を強化する

企業における重要な判断を下すには実効性の高い取締役が必要です。そのため、コーポレートガバナンス・コードは監視と意思決定の実効性を高めるための体制の構築を求めています。資格を有する独立した取締役を任命することで、取締役会の機能を強化できます。

管理職の多様性を推奨する

コーポレートガバナンス・コードでは女性や外国人、中途など採用する人材の多様性を実現するため、人材育成方針と実施状況の開示を企業に求めています。人材の多様性が実現すると、企業には新しい取り組みに挑戦できる力が身に付き、成長の促進が期待できます。

サステイナビリティを囲む問題を解決する

現代ではSDGs(持続可能な開発目標)やパンデミックによるビジネス環境の激しい変化への対応が世界中から求められています。そのため、サステイナビリティを取り囲む問題の解決に向けた、自社での取り組みの開示を求めています。

まとめ

コーポレートガバナンス・コードとは企業統治に向けて金融庁と東京証券取引所により公表されたガイドラインです。これまでに内容は2度改訂されており、社会の劇的な変化へ対応できる組織づくりを目的としています。

コーポレートガバナンス・コードは上場企業が対象であり、法的拘束力はないため違反しても罰を受けません。しかし、違反は公表措置の対象とされるため、企業の信頼度低下を防ぐためにコーポレートガバナンス・コードへ対応する必要があります。

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