- 経営戦略
コモディティ化とは
コモディティ化とは、類似商品やサービスが同時に提供され、市場価値が低下してしまうことを指します。商材間の違いがなくなり、他社との差別化が困難になることもコモディティ化の特徴です。
どの企業の商材を購入しても同様の満足感を得られるため、ユーザーに大きなデメリットはありません。しかし、市場競争を勝ち抜くことが最優先事項とされる企業にとって、コモディティ化は早急に解決すべき課題といえます。
コモディティ化とは
コモディティ化とは、商材の一般化を表す言葉です。新しいものとして注目されていた商材が、競合の参入などを理由に付加価値が下がってしまうことをあらわします。同品質のサービスをより低価格で提供することにより、差別化を図る傾向が見られています。
商材の価格が下がることでより安いものを選んだうえで購入できるため、ユーザーにとっては大きなメリットです。しかし、市場競争を勝ち抜かなければならない企業にとっては、いかに他社との違いを明確にするかが課題になります。他社との差別化を図れない商材は市場に埋もれてしまうため、企業全体の先行きを曇らせる原因にもなります。
市場価値の差別化を図るためには、コモディティ化の脱却を前提とした開発や改革が重要です。
コモディティ化による懸念
コモディティ化の問題点には次の3つがあります。
- 営業戦略への影響
- 商材の均質化
- 利益率の下落
営業戦略への影響
コモディティ化により商材を差別化できなくなるため、営業での提案がむずかしくなります。他社との細かい違いをアピールできれば差別化を意識した提案は可能です。
しかし、自社が勧めるポイントを顧客が明確な差異として受け取るかどうかはわかりません。顧客が自社の商材にオリジナリティを感じられる営業戦略の工夫が必要です。
商材の均質化
コモディティ化の問題点には、他社との違いに特化した商材を開発しづらいことが挙げられます。他社にないアイデアの創造を前提に、独自性のある商材の開発に特化した戦略を立てなければいけません。
利益率の下落
商材が均質化することでユーザーはより安くて良いものを求めるようになります。差別化を図るために商材を値下げすると、売上は確保できても利益率アップにはつながりません。
また、コモディティ化対策に価格調整を実施する企業も多いため、価格競争が起こるのも問題点として挙げられます。
コモディティ化しやすい商材
コモディティ化の影響を特に受けやすい商材は以下の通りです。
- コーヒー(コンビニ)
- 回転寿司
- 物販コンサル
- 飲料水
- 文房具
- 冷蔵庫・テレビなどの家電
- ガソリン
- 電気
- 時計
上記は日々の生活において、均質化と価格競争の背景が見えてくるような商材です。身近に感じる商材にこそ、コモディティ化の影響が出ているといえます。
なぜコモディティ化が生じるのか
コモディティ化は、以下7つの原因により生じます。
- 市場主義
- 思考の平均化
- 価格競争
- 価格破壊
- 情報流通の活性化
- 技術レベルの向上
- モジュール化
市場主義
市場主義とは、多数派のニーズに対応した商材の開発に特化し、商材の独自性がなくなることです。多数派のニーズに応えることは経営戦略において重要ですが、少数派をターゲットにした商材を開発することも忘れてはいけません。
思考の平均化
企業の思考が無難なものになることで、コモディティ化が起こります。いわゆるハズレは生み出さないものの、大ヒットには至らない凡庸な商材ばかりが開発されます。思考が平均化する企業が多くなることは、商材の均一化や価格競争などの問題を加速させる要因です。
価格競争
商材の価格を下げて市場競争を勝ち抜こうとする企業も多いことから、安くて均一なサービスが増加します。価格競争が加速することは供給過多にもつながり、価値の低下した商材が流通する原因にもなります。
価格破壊
近年、価格の安い輸入品を取り入れることでコストカットを図る企業が増加傾向です。輸入品の入荷により仕入れ面でのコストは解決するものの、同じ施策を打つ企業も多くなるため価格破壊につながります。価格競争を勝ち抜くために価格破壊を起こしてしまい、結果的にコモディティ化するという悪循環です。
情報流通の活性化
現代の日本では、ビジネスに関する情報が容易に入手できる時代になりました。その結果、他社が商材の差別化を図っているという情報も広まりやすくなっています。自社でコモディティ化対策をしても、他社に情報が伝わって差別化対策を打たれるといった、いたちごっこを繰り返しやすくなります。
技術レベルの向上
高度経済成長の影響を受け、昨今の日本では技術レベルの水準が向上しています。高水準の企業が増えたことで、多くの企業が高いレベルの商材を生み出せる現状になりました。技術面での圧倒的な違いがなくなったことで、均質化や価格競争が発生します。
モジュール化
モジュール化とは、新しい商材を既存のパーツで開発することにより、開発コストの削減につながる有効な手法です。ただし、モジュール化を実現するために取り入れるパーツが均質化してしまい、結果的にコモディティ化の原因になることもあります。商材の価格も酷似しやすくなります。
コモディティ化を避ける方法
コモディティ化を回避するための方法には、営業戦略の差別化が挙げられます。また、商材の新たな切り口やコンセプトを確立することも有効です。
営業戦略の差別化
コモディティ化対策でもっとも有効かつ優先すべきことは、自社ならではの付加価値を生み出すことです。コモディティ化の現状を受け入れたうえで、あえて希少性を高めることなどが例に挙げられます。商材のバックボーンを訴求し、ブランディングの角度を変えてみるのも有効な手法です。
また、単に商材を紹介するだけの営業戦略では、他社以上の魅力は伝えられません。商材が持つ可能性を徹底分析し、他社にない差別化要素を洗い出してください。そのうえで、ユーザー自身が気づいていない潜在的なニーズにアプローチする戦略を考えなければいけません。
商材の新たな切り口・コンセプトの確立
価格や性能以外に、新しい角度でのアピールポイントがないか見直してください。ユーザーにとって本当の価値がどこにあるのか、徹底的に分析することが差別化につながります。商材のコンセプトやブランディングを明確にすることも大切です。
また、昨今では商材そのものが持つ価値だけでなく、商材を通じた経験で経済を活性化させる経験経済が注目されています。
接客や店舗の内装など同じような商材だけど、ここで買った方が満足できるという観点を意識した施策を立案することが、経験経済につながる観点です。
市場とは物ではなく、経験を買うことだという認識を改めて持つ必要があります。
コモディティ化は商材だけではない
コモディティ化は商材だけではなく、人材にも起こっています。競争心や野心を持たずに日々の仕事をこなすだけの人材が増えることが、企業内で人材のコモディティ化が起こる原因です。
人材のコモディティ化は企業だけでなく、人材にとってもデメリットがあります。自分の価値を伝えて評価を上げたいと思っても、周りと同じ仕事をしていては差別化ができません。コモディティ化した人材は給与や待遇面の向上も期待しづらいため、モチベーションダウンにつながります。
人材のコモディティ化を防ぐためには、企業にはコモディティ化を防ぐ教育体制、業務の割り振りが求められ、人材には周りにない自分の価値を見つめ直す習慣、他人が持っていない独自の視点が求められます。
コモディティ化は人材にも起こりうることを前提に、自社の体制や個人の見解を見つめ直す意識が重要です。
まとめ
商材やサービスの差別化が困難になり、市場価値に影響を与えるのがコモディティ化の特徴です。コモディティ化の影響を受けると、営業戦略や商材の均質化など、市場競争を不利にしかねない要素を発生させます。
また、コモディティ化は商材だけでなく、人材にも起こりうる現象だと認識しておく必要があります。コモディティ化を防ぐためには、自社の商材・サービスの魅力を分析したうえで他社との差別化を図らなければなりません。
物ではなく、経験を買う経験経済が注目されていることも視野に入れ、自社ができる最大限のコモディティ対策を実施してください。