2022.09.20

コ・クリエーション戦略とは

コ・クリエーション戦略とは企業と顧客、もしくは他社とともに新しい価値を生み出すための戦略です。変化の激しい現代では、多くの企業が競合よりも優位に立とうと日々事業成功の機会を狙っています。しかし、移り変わりの早い消費者のニーズを的確に捉えるのはむずかしいのが現実です。

コ・クリエーション戦略では消費者と企業が対等な立場で商品を開発するため、消費者のニーズに応えられます。消費者の声を聞き入れる商品開発が事業成功の壁を握ると多くの企業では予測され、コ・クリエーション戦略には注目が集まっています。

コ・クリエーション戦略とは

コ・クリエーション(共創)戦略とは企業と顧客がともに協力し、新たな価値を生み出すための戦略を意味します。2004年よりアメリカのビジネススクールに在籍する教授が提唱した戦略です。

現代において、消費者は商品自体ではなく、商品を通して得られる体験を重視する傾向にあります。技術レベルの発展により質の高さではほとんど商品を差変別化ができなくなりましたが、企業と顧客の共創により得た体験は唯一無二のものであり、競合他社との差別化が可能です。そのため、コ・クリエーション戦略はさまざまな企業から注目を集めています。

コ・クリエーション戦略の重要性

コ・クリエーション戦略の重要性は次のとおりです。

  1. 競争激化により市場が縮小している
  2. 消費者ニーズが多様化している

競争激化により市場が縮小している

技術レベルの飛躍的な発展により、長期間にわたって市場を独占していた大手企業は、スタートアップ企業に顧客を取られていく事態が起きています。スタートアップ企業が販売する製品は単に性能が優れたものではなく、顧客の満足度を高めるものです。そのため、ライバル企業の多い市場では競争が激化しています。

しかし、市場での競争で優位に立つよりも、業界を飛び越えて新規顧客の獲得を優先した企業は他業界に進出し業績を伸ばしています。他業界へ進出する企業が増えることで市場のシェアは縮小し続けているため、他社に負けない新たな企業戦略が必要です。

消費者ニーズが多様化している

インターネットの普及によって、従来は目にすることのなかった商品やサービスを消費者は認識できます。そのため、消費者のニーズは多様化し続けており、企業は売上を伸ばすために変化するニーズへの対応が求められています。

しかし、1人ひとりのニーズを細かく把握するのはむずかしく、消費者のニーズを具体的に把握するため、企業と消費者が共創する取り組みが注目されています。

コ・クリエーションのタイプ

コ・クリエーションは以下の3つのタイプに分類分けできます。

  1. 双方の関係
  2. 連携の関係
  3. 共有な関係

双方の関係

双方の関係とは企業と消費者が生み出すコ・クリエーションです。企業から商品を一方的に提供する関係ではなく、ともに新しい価値を生み出すためのつながりともいえます。

消費者の声を商品やサービスに反映できるため、多角的な観点から新しい価値を生み出す可能性を秘めています。企業は共創する消費者を顧客と考えず、対等な立場と認識することが大切です。

連携の関係

連携の関係とは企業がお互いの不足部分を補い合い、新しい価値を生み出すコ・クリエーションです。自社での取り組みだけでは技術や人材の不足が原因で商品開発が進みません。

リソースの不足に頭を抱える企業同士が、規模や業界に関係なく他社と協働して新しい価値を生み出すことを目的とします。自社に足りない部分を補うため、企業規模が小さいに関わらず、さまざまな企業が連携の関係を築きます。

共有な関係

共有な関係とは企業や団体、政府などが自由に意見を共有し合い、新しい価値を生み出すコ・クリエーションです。企業がさまざまな組織とコミュニティを形成したうえで話し合いの場を設けます。

テーマを共有したら、それぞれが持つ知識を用いて新たな価値を生み出すための議論を開始します。話し合いの際は視点に偏りがでないよう対等な関係が必要です。

コ・クリエーション戦略のメリット

コ・クリエーション戦略の利点は多々ありますが、まだメリットに気付いていない方は少なくありません。他社との競争に勝つためにも、コ・クリエーションのメリットの把握は必要です。

コ・クリエーションのメリットは次のとおりです。

  1. 消費者の声を商品に反映できる
  2. ファンを獲得できる
  3. 新しいアイデアの誕生が期待できる

消費者の声を商品に反映できる

企業は消費者とともに商品開発をおこなえるため、消費者の声を聞き入れながら取り組みを進行できます。しかし、消費者が遠慮して正直な意見を言えない場合があるため、遠慮せずに意見を出し合える環境づくりが大切です。

ファンを獲得できる

ともに商品開発を進めるなかで、企業と消費者の間に親近感が生まれます。親近感は商品開発への取り組みに関わった分だけ高まるため、特に積極的に取り組んだ消費者は商品に対して強い思い入れを持つはずです。結果、共創者のファン化が期待できるうえ、唯一無二の新しい価値提供につながります。

新しいアイデアの誕生が期待できる

消費者や他社とコ・クリエーションすると、それぞれの立場における特有のアイデアが生まれる可能性があり、形を実現することで新しい価値を生み出せます。まだ開拓されていない市場のニーズと合致すれば、多額の利益獲得が期待できます。

コ・クリエーション戦略におけるリスク

コ・クリエーション戦略には自社だけの取り組みだけでは考えられないリスクがあるため注意が必要です。リスクの把握はコ・クリエーション戦略失敗の防止につながります。

コ・クリエーションにおけるリスクは次のとおりです。

  1. 共創相手に依存してしまう
  2. ルールが複雑化する
  3. 情報が漏洩してしまう

共創相手に依存してしまう

コ・クリエーション戦略において、開発するサービスが相手企業のアイデアであった場合も、ともに開発をおこないます。しかし、生み出されるアイデアが連続して相手企業側であった場合、自社のアイデア力は失われます。相手のアイデア力に依存してしまい、自社は技術を提供するだけになってしまうため注意が必要です。

ルールが複雑化する

企業同士でコ・クリエーション戦略に取り組む場合、トラブルを防ぐためにお互いの利益や権利におけるルールを設定します。しかし、企業間でのルール設定はお互いの利益向上に向けておこなう必要があるため、内容は細かく決めなければならず、ルールは複雑化します。

情報が漏洩してしまう

コ・クリエーション戦略ではお互いの不足部分を補い合うため、相手側の技術や情報を利用するケースもあります。信頼できる相手であれば特に問題ありませんが、なかには情報を盗み、流出させてしまう怪しい企業もあります。そのため、自社では技術や情報の管理を徹底する必要があります。

まとめ

コ・クリエーション戦略とは企業と顧客がともに新しい価値を生み出すための戦略です。競争激化による市場縮小化や消費者ニーズの多様化が背景となり、コ・クリエーション戦略は注目を集めています。

コ・クリエーション戦略では消費者と企業がともに商品開発をおこなうため、変化の激しい現代でも消費者のニーズに応えられます。しかし、コ・クリエーション戦略は良い面ばかりではありません。特に共創相手への依存は企業における発想力を大きく低下させてしまうため注意が必要です。

一覧に戻る

関連コラム