2022.10.04

ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは

ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは、ビジネスモデルの構造を可視化するために用いられるフレームワークのひとつです。BMCは、複雑なビジネスモデルの構造を9つの要素に分割し可視化することでビジネスとしての不足や弱点を浮き彫りにします。

ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは

ビジネスモデルキャンバス(Business Model Canvas、BMC)とは、ビジネスの構造を可視化する際に使用するフレームワークのひとつです。

BMCを生んだのは、スイス学者であるアレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールのふたりです。2010年発行の著書「ビジネスモデルジェネレーション」のなかで提唱され、新規のビジネスはもちろんのこと、既存のビジネスの見直しに取り入れる企業が増えました。

構造化されているビジネスを、9つの要素に分けることでビジネスにおける弱点を見つけて改善したり、他社のビジネスを分析したりすることも可能です。

ビジネスモデルキャンバス(BMC)の目的とメリット

ビジネスモデルキャンバス(BMC)の目的

BMCは新しい事業を始める際に多く活用されています。自社ビジネスの新規立ち上げの際、想定する顧客や収益の獲得を具体的に設定することで効率的かつ円滑に事業を進められます。また、競合他社のビジネスを分割して分析することも可能です。

既存ビジネスにおけるBMCでは、そのビジネスの弱点を洗い出し利益の向上を狙ったり、ブラッシュアップさせたりする目的もあります。

ビジネスモデルキャンバス(BMC)のメリット

ビジネスは多くの要素が絡み合い非常に複雑な構造です。構造の複雑化しているビジネスを9つの要素に分けることで、全体像を把握しやすくなるだけでなく、チーム間での認識のズレを防げるメリットがあります。

既存のビジネスにも活用できるため、他社のビジネスを分析し、他社がどこに重きをおいているか、顧客は何に価値を見出しているかを理解できます。すると、自社ビジネスと競合他社とを差別化し、より魅力的なビジネスモデルの確立を目指せます。

ビジネスモデルキャンバス(BMC)を構成する9要素

BMCは、ビジネスの複雑な構造を9つの要素に分割しているのが特徴です。ビジネスを構成する9要素を理解し、埋めていくことで、弱点を減らし効率的なビジネスモデルの構築ができます。

  1. 顧客セグメント(CS:Customer Segments)
  2. 提供価値(VP:Value Propositions)
  3. チャネル(CH:Channels)
  4. 顧客との関係(CR:Customer Relationships)
  5. 収益の流れ(RS:Revenue Streams)
  6. リソース(KR:Key Resources)
  7. 主要活動(KA:Key Activities)
  8. パートナー(LP:Key Partners)
  9. コスト構造(CS:Cost Structure)

1.顧客セグメント(CS:Customer Segments)

顧客セグメントとは、いわゆるターゲットのことを指します。ターゲットとは、商品の提供を想定するグループのことで「都内に住む20代男性」や「子育て中の主婦」というような属性です。ペルソナほど具体的かつ詳細に決める必要はありません。商品やサービスを提供する相手を考えなければ、商品の開発や収益の獲得方法も決められません。誰に売るかが重要な昨今では、はじめに決めるべき項目といえます。

2.提供価値(VP:Value Propositions)

ターゲットを定めたらターゲットが抱えている課題や悩みは何かを考え、そのニーズを満たすにはどのような価値が必要であるかを決めます。また、他社にはない唯一無二の価値を見出すことも欠かせません。

3.チャネル(CH:Channels)

定めたターゲットに商品やサービスをアピールする方法および提供方法のことです。アピール、つまりPRには雑誌や新聞の広告掲載やSNSやテレビの利用といったものがあります。提供においてはオンラインや店舗販売が挙げられます。顧客セグメントや商品にあわせてどのような媒体を選ぶのかは重要なポイントです。

4.顧客との関係(CR:Customer Relationships)

サービスや商品を通した顧客との関わり方と関係の構築方法、その後の維持について考えます。たとえば、店舗を持つ場合はオフラインでの対面関係でありその場限りの関係といえます。反対に、店舗を持たないオンラインかつ物理的な商品ではないサービスを提供する場合、サービス販売後も継続した関係をもつことも考えられます。

5.収益の流れ(RS:Revenue Streams)

ビジネス全体のお金の流れを決定します。小売の場合は、顧客が商品にお金を払うことで企業側に収益が発生します。映像や音楽などのサブスクリプションの場合は、顧客が毎月定額を企業側に支払うため、解約しない限り継続した収益を得られます。顧客が何に、いつ、どのようにお金を払うのか、具体的に決めていくのが収益の流れで考える内容です。

6.リソース(KR:Key Resources)

ビジネスに必要な資源を指します。資金はもちろんですが、ビジネスで使用する道具や機械、人材など事業経営に不可欠なものすべてです。

7.主要活動(KA:Key Activities)

ビジネスモデルの実行における、重要な活動のことを指します。価値観の提案や差別化など、企業にとって重要な活動にフォーカスするのが特徴です。主要活動は以下に挙げているとおりです。

  1. 市場調査
  2. 採用
  3. 製造
  4. サプライチェーンマネジメント

8.パートナー(LP:Key Partners)

自社のビジネスモデルを構築するサプライヤーとのネットワークを、パートナーとして記載します。また、代替のいない協業社を記述することがあるのも特徴です。顧客セグメントと重複しないよう、金銭の支払いが発生する相手のみをパートナーに分類してください。金銭をいただく相手の場合は、顧客セグメントに分類します。

9.コスト構造(CS:Cost Structure)

ビジネスモデルを運用するうえで発生するコストを、すべて書き出します。コスト構造を書き出す際は、以下を参考にしてください。

  1. マーケティングコスト
  2. インフラコスト
  3. 運用コスト
  4. 人件費
  5. 経費

ビジネスモデルキャンバス(BMC)の注意点

BMCを作成し、運用していく際は、以下3つの注意点を理解しておくことが大切です。

  1. 9要素すべてを埋めること
  2. 定期的に更新すること
  3. シンプルにまとめること

上記を意識しておかないと、効果的なBMCの作成や運用につながりません。今回紹介した目的やメリットなどもふまえたうえで、自社にとって最適なBMCを意識してください。

まとめ

ビジネスの構造を可視化できるフレームワークとして知られているのが、ビジネスモデルキャンバスです。ビジネスにおける弱点などを客観的に把握できるのが特徴です。新規事業におけるネックの解消や、既存ビジネスの活性化にもつながります。

チーム間での認識のズレを防ぐ効果も期待できるため、多くの企業においてメリットのある仕組みといえます。9つの要素についてそれぞれ把握し、テンプレートなどを活用して自社にとって最適なものを作成してください。

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