- 経営戦略
事業性評価とは
事業性評価とは、主に金融機関が企業と経営相談をするうえで、事業の内容を確認し成長の可能性を適切に評価することをいいます。一般的に金融機関は通常の審査に加えて事業性評価をおこなうため、事業性評価だけで融資を得られるかどうかを判断するわけではありません。
それぞれ金融機関ごとに事業性評価の仕方は異なるため、融資をするために企業に求めていることは一定ではありません。
事業性評価とは
新規事業を立ち上げるときに、融資を受ける必要がある場合が一般的です。そこで金融機関に審査をしてもらうのですが、通常の審査に加えて事業性評価を加味することができます。
事業性評価の仕方ですが金融機関に経営理念、企業の強みや弱みなどを含めた経営戦略を説明した書類を提出し評価をします。この評価結果を基準として、現在の企業における課題や今後の具体的な活動計画などを提出することが一般的です。
事業性評価が広まった背景とは
2015年までは金融庁は金融機関に対して、財務体質の改善を求めてきました。このため事業に成長性があったとしても、依頼している企業の債務区分が低い場合は積極的に融資をすることはできませんでした。
しかし、2015年に森信親氏が金融庁長官に就任して、それぞれの金融機関に判断を委ねることを発表しました。また、企業の財務状況、担保だけではなく、事業内容や将来性を適切に評価するようになりました。
事業性評価の目的とは
金融機関において融資先の事業性評価を点数化することにより一定以上の点数がある場合のみ営業店長に委譲、もしくは信用格付けに連動するなど融資の評価基準にするケースが一般的です。
借り入れ申込の時に、通常の借り入れ申込書に加えて事業性評価を踏まえた経営発展プランを提出することにより、判断基準を増やすことができます。借り入れを希望する金融機関にて、経営ビジョンシート(企業の特徴や理念、強みや弱みなどを記載したもの)を提出すると、金融機関が事業性評価を審査しフィードバックしてくれます。
このフィードバックを基に、今後の経営戦略や具体的なプランを金融機関と一緒に検討することにより、経営発展プランを作成することができます。
事業性評価融資とは
一般的な企業に対する融資とは、企業の財務状況と保証や担保によって融資ができるかどうかを判断します。2015年までの日本はこの一般的な融資をする金融機関がほとんどでした。
しかし、2015年以降に取り入れられたのが事業性評価融資です。事業性評価融資とは、事業内容や企業が成長する可能性を的確に評価することによって、融資できるかどうかを判断する融資の方法です。
これまでは事務的な判断をしていたのですが、金融機関の担当者が審査をおこなうようになりました。それだけでなく事業性評価をするために、金融機関の担当者がサポートをするようになったのです。
政府ではこの変化にあわせて、ローカルベンチマークとよばれる事業性評価に関するツールを作成しました。
事業性評価にて活用できること
事業性評価を金融機関にしてもらうためには、次の点を活用することができます。
- 事業性評価シート
- ローカルベンチマーク
- SWOT分析
- サプライチェーン分析
事業性評価シート
金融機関に事業性評価を依頼するときに、事業性評価シートを利用するのが一般的です。事業性評価シートはそれぞれの金融機関が、A41枚くらいのサイズで作成します。シートには主に次の点を記載する必要があります。
- 業種の説明
- 事業内容
- SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)
- 経営者情報
- 将来性
- 業界動向
- 業界内での位置
- サプライチェーン分析
ローカルベンチマーク
ローカルベンチマークとは無料で使うことができる企業向けの経営診断ツールで、経済産業省が提供が提供しています。企業と金融機関の両方が企業の経営状態を明確にわかるような枠組みとなっており、事業性評価のサポートをすることができます。
SWOT分析とは
自社の強みや弱み、機会、脅威といった内部環境分析、外部環境分析はほとんどどの金融機関であっても必要になります。経営をしていくうえで、自社をより理解するためにもおこなっておきたいフレームワークです。
内部環境分析 | 外部環境分析 | |
---|---|---|
ポジティブ要素 | Strength(強み) | Opportunity(機会) |
ネガティブ要素 | Weakness(弱み) | Threat(脅威) |
サプライチェーン分析
在庫管理、倉庫管理、フルフィルメントなどオペレーション関連のデータを基にアナリティクスを活用し、サプライチェーンの分析をすることで予測分析ができます。これらの業種に当たる場合は、事業性評価においても活かすことが可能となります。
事業性評価融資の関連商品
さまざまな金融機関において、事業性評価をすることで優遇金利、その他のサービスを提供している金融会社が増えています。このように金融機関では、積極的に事業性評価融資をおこなっています。
飯田信用金庫
飯田信用金庫では、事業評価の内容により優遇金利で応えてくれる事業性評価高度化資金ロングパートナーを提供しています。
資金の用途 | 事業評価(将来性や成長性など)により、財務データや担保・保証に過度に頼らず事業の発展・成長に資する設備投資に関わる資金ニーズ |
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申込の条件 | 3期分の確定申告がなされている法人、個人事業主、その他飯田信用金庫所定の条件 |
融資額 | 500万円以上 |
融資期間 | 設備資金:5年以上20年以内、運転資金:7年以内 |
経営サポート | Ai-biz(事業性評価検討チーム)による事業性評価、経営アドバイス、現場訪問等 |
きらぼし銀行
公益財団法人東京都中小企業振興公社が提供している事業可能性評価事業に関連して、事業の可能性ありと評価されるなど、対象となった企業や個人事業主に資金提供しています。きらぼし銀行が融資をする対象となる企業または個人事業主は、次の6種類いずれかに該当している場合です。
(1)公益財団法人東京都中小企業振興公社の「事業可能性評価事業」において「事業の可能性あり」と評価された方
(2)公益財団法人東京都中小企業振興公社の「ニューマーケット開拓支援事業」の支援対象となった方
(3)公益財団法人東京都中小企業振興公社の「海外販路開拓支援事業」の支援対象となった方
(4)助成限度額1千万円以上の「開発」または「設備投資」に係る助成金・補助金の採択を受けた方(採択金額は問いません)
(5)「経営革新計画」の承認を受けた方
(6)ToKIめき応援ファンドの出資を受けた方
出典:事業可能性評価融資制度「事業のチカラ」(きらぼし銀行)
まとめ
企業や個人事業主が開業して融資を金融機関に申請するとき、通常の申請以外に事業性評価を認めてもらうことで、審査項目に追加をすることができます。必ず審査が通るとは限らないですが、事業性評価を認めてもらえれば審査に通る確率は上がります。
事業性評価を認めてもらうためには、自社のSWOT分析や業界での位置、市場の状況を説明したうえで、なぜどのように将来性があるのかを明確に伝えることが重要です。そのためには、十分な自社分析、市場の分析が必要になります。
これまで、日本では財務状況の担保がとれるかどうかで、融資をできるかどうかが決まっていました。しかし、近年企業の業務内容や成長性を的確に評価して融資する金融機関が増えています。そのためにも、事業性評価がより重要になります。