2022.09.27

ベンチャー型事業継承とは

ベンチャー型事業継承とは家業で保有してきた経営資源を後継者が活用して新規事業の領域へ参入し、新しいビジネスを展開することです。既存事業が安定した状態で新規事業の開拓に成功すれば、事業規模の拡大だけでなく、安定した経営の実現が可能です。

ベンチャー型事業継承は通常のベンチャー企業とは異なり、業界への深い知見や既存事業の功績による信頼が数多くの方から寄せられるメリットがあります。しかし、事業継承の成功は簡単ではないため、ポイントをおさえつつ、支援制度を利用した取り組みを進める必要があります。

ベンチャー型事業継承とは

ベンチャー型事業継承とは、会社を引き継いだ後継者が家業で培ってきた経営資源を用いてこれまでとは異なるほかの領域に参入し、事業拡大に向けて新しいビジネスを展開することです。一般社団法人ベンチャー型事業承継により提唱されたものであり、近年は取り組みを進めている企業が見受けられます。

事業継承のあと、そのまま同じ事業を続けるわけではなく、新規事業に力を入れる姿勢が見られます。ベンチャー型事業継承には、これまで事業を拡大し続けてきた功績や業界への知見があり、数多くの方々から信頼が寄せられるため、通常のベンチャー企業とは異なり優位で新規事業に参入できます。既存事業が安泰な状態で新規の事業に取り組むことで、より安定した経営を実現可能です。

ベンチャー型事業継承のメリット

ベンチャー型事業継承のメリットは次のとおりです。

  1. 業界に対する知見がある
  2. すでに商流と信用がある
  3. ストーリーを作成しやすい

業界に対する知見がある

親族内から後継者を選定する場合、身近で現経営者の働きぶりや仕事内容について見ながら育っているため、業界への深い知見が期待できます。技術を有していれば即戦力になりますが、技術がなくても深い知見により、スムーズに業務を進行可能です。

親族内の後継者を教育すれば、さらに能力を引き延ばすことができるため、ほかの企業よりも事業に詳しい状態で事業継承できます。ほとんどのベンチャー企業はゼロから事業をはじめることとなるため、ベンチャー型事業継承は優位に立った状態で取り組みを進められます。

すでに商流と信用がある

通常のベンチャー企業はまだ大きな実績がないため、ほかの企業や取引先から信頼を獲得することがむずかしい傾向にあります。一方で、ベンチャー型事業継承であれば、既存事業の功績があるため、多くの方々から信頼を得やすく、多くの資金と幅広い人脈から新たな市場への参入もしやすい状態であるため、優位に事業拡大への取り組みを進められます。

ストーリーを作成しやすい

ベンチャー型事業継承は商品やサービスを通したストーリーを作成しやすく、ストーリーはほかの企業や商品との差別化に大きく役立つため、自社オリジナルの体験を顧客へ届けることができます。

魅力的であるほど多くの方からストーリーに共感してもらえる可能性は高まるため、利益や事業の拡大につながります。共感を生むほど実績も大きくなり、多くの方からの信頼を獲得可能です。

ベンチャー型事業継承を成功させるポイント

ベンチャー型事業継承を成功させるポイントは次のとおりです。

  1. 早期から取り組みを始める
  2. 後継者の育成に時間をかける
  3. 専門家へ相談する
  4. 税金対策をおこなう
  5. 取引先へ説明する

早期から取り組みを始める

事業継承には後継者選定や教育、経営状態における問題解決など、数多くの作業量と時間がかかります。経営者が倒れてから経営権を誰かに譲渡する形では遅いため、早期の段階で事業継承の取り組みを進める必要があります。早い段階で取り組みを進めていれば、万が一急に事業継承をする事態が起きても、柔軟な対応が可能となり、事業を存続させることが可能です。

後継者の育成に時間をかける

事業を引き継いだとしても、後継者に会社を経営できる能力がなければ廃業や業績悪化につながります。そのため、現経営者は長い期間をかけて後継者の育成に力を入れる必要があります。教育期間は5年〜10年とされているため、早期の段階から取り組みを始めるのが最適です。

専門家へ相談する

専門家へ相談することで事業継承に関係する多くの課題を解決できるため、事業継承をスムーズに実現可能です。特に日頃から事業継承の業務に取り掛かっている専門家に依頼すると、効果的な施策を進められます。

税金対策をおこなう

事業や資産を引き継ぐ際、大きな損害を生まないために税金対策をおこなう必要があります。本来支払う必要のない税金にコストをかけるのはもったいないため、節税や税金優遇制度を利用して、税金に費用をかけすぎないよう注意することか大切です。

ただし、税金の支払いは国民の義務であるため、規則を知らずに税金を支払い忘れていたなどの事態は許されません。税金面について分からない点が多い場合は、税理士などに相談すると良いです。

取引先へ説明する

事業継承すると経営権は後継者へと引き継がれるため、取引先や金融機関へ報告と説明が必要です。双方とは信頼関係で成り立っているため、常に情報共有を怠ってはなりません。

特に事業継承は自社だけでなく、周りの取引先にも大きな変化の影響を与える可能性があるため、説明は必須といえます。万が一何も報告せず事業継承をおこなってしまった場合、信頼関係が崩れ、最悪の場合は取引の中断も考えられるため注意が必要です。

ベンチャー型事業継承に役立つ支援制度

ベンチャー型事業継承に役立つ支援制度は次のとおりです。

  1. 事業承継補助金
  2. 事業承継税制
  3. 相談窓口

事業承継補助金

事業承継補助金は事業継承にかかる経費を負担する制度です。人件費や外注費、設備費、広報費と幅広い費用を対象としており、大きな負担を軽減可能です。事業承継補助金には、親族内や外部から後継者を選定して経営者の入れ替えを支援する経営者交代タイプと、事業統合などの新しい取り組みを支援するM&Aタイプの2種類があります。

事業承継税制

事業承継税制とは後継者の引き継いだ資産が、円滑化法に基づいて都道府県知事の認定を受けることで、相続税と納税の猶予、もしくは免除される制度です。以前は条件が厳しく、条件に該当する企業が多くありませんでしたが、近年は条件の緩和により多くの企業が事業承継税制を活用しています。

相談窓口

事業継承にはさまざまな専門知識を必要とします。経営者が独断で事業継承の準備を進めようとしても、分からない点が多いうえ、膨大な時間が必要です。分からないことはすべて相談窓口に相談するのが最適です。

相談相手として挙げられる支援サービスは次のとおりです。

  1. 事業継承・引継ぎ支援センター
  2. コンサルティング会社
  3. 税理士

事業継承・引継ぎ支援センターは各都道府県に存在する事業継承に関して相談できる窓口です。疑問をすべて解決してもらえるため、事業継承の取り組みに行き詰った場合に利用すると良いです。

一方で、事業継承のサポート業務に強いコンサルティングに相談するのも、疑問を解決するひとつの手段です。また、税理士は日頃から税金や会計業務に取り組んでいるため、税金対策や簡単な事業継承の手続きに精通しています。

まとめ

ベンチャー型事業継承とは、家業で保有してきた経営資源を後継者が活用して既存事業ではない領域へ参入し、新たなビジネスを展開することです。ベンチャー型事業継承には業界への知見がある、すでに多くの方からの信用があるなどのメリットがあり、通常のベンチャー企業と比較して優位に新規事業への取り組みを進められます。

安泰である既存事業と新規事業を掛け合わせることで、事業や利益の拡大が見込めるうえ、安定した経営体制の構築にも期待できます。ただし、事業継承には多くの課題があるため、事業承継税制や相談窓口などの支援制度を利用して、事業継承への取り組みを進めると良いです。

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