2024.05.15

人事評価制度の種類

人事評価制度は企業の成長と従業員のモチベーション向上に欠かせない重要な仕組みですが、評価基準の選択や運用方法によって効果が大きく変わります。評価制度を適切に運用しないと、従業員満足度の低下や評価担当者の負担増大といった問題が生じかねません。

人事評価制度を効率的に運用するためには、特徴の異なる人事評価制度を理解して適切な方法を選ぶことが重要です。また、複数の評価制度を組み合わせるケースもあります。適切な人事評価制度を導入することで、従業員の満足度が向上し企業の成長にもつながります。

人事評価制度は従業員の職務能力や仕事への姿勢、成果を判断し、報酬に反映させる仕組みで、人材育成と業績向上が大きな目的です。適切な人事評価制度を導入することで従業員満足度を高め、評価担当者の負担を軽減できます。

人事評価制度には主に6種類あります。

  • 能力評価
  • 成果評価
  • 行動評価(バリュー評価、プロセス評価)
  • 情意評価
  • コンピテンシー評価
  • 360度評価

能力評価は従業員の能力を評価すること、成果評価は具体的な業績や達成度を測定することが目的です。行動評価は企業の価値観に沿った行動や仕事のプロセスを評価し、バリュー評価やプロセス評価とも呼ばれます。情意評価は従業員の態度や意欲を評価する特徴があり、コンピテンシー評価は高業績者の行動特性を基準に従業員の行動を評価し、360度評価は上司だけでなく、同僚や部下、時には顧客からも評価を受ける総合的な評価方法です。

能力評価

能力評価は従業員の持つさまざまなスキルや資質を測定する人事評価制度です。従業員一人ひとりのリーダーシップや問題解決能力、コミュニケーション力などの要素を評価し、各従業員の強みや弱みを把握することで業務適性を明確にでき、組織全体の人材配置や育成計画に活用できます。

従業員にとっても、能力評価は自身の強みを認識し、弱点を改善する貴重な機会となります。評価結果を通じて自己の成長に必要なスキルや知識を特定し、キャリア開発に活かすことが可能です。

一方で能力評価にはいくつかの課題もあります。能力の測定には主観的な要素が入り込む可能性があるため、評価があいまいになりがちです。また、創造性や柔軟性といった抽象的な能力を客観的に評価することはむずかしく、評価者の個人的な印象に左右されることがあります。

公平で効果的な能力評価をおこなうためには、明確な評価基準の設定と評価者トレーニングが重要であるほか、複数の評価者による評価や具体的な行動指標の活用など、客観性を高める工夫も必要です。定期的な制度の見直しと改善をおこなうことで、より信頼性の高い能力評価が可能になります。

成果評価

成果評価は従業員の業績を客観的に測定する人事評価制度です。営業職であれば売上高や新規顧客獲得数、製造職であれば生産量や不良品率の改善など、従業員が一定期間内に達成した成果や業績を数値化して評価します。成果評価の特徴は数値目標を設定し、達成度合いを評価することです。明確な基準があるため、評価者の主観に左右されにくく公平性が高いことから、従業員にとっても、自分の成果が明確に示されるため評価結果に対する納得感が得られやすくなります。

従業員一人ひとりの業績向上が企業全体の業績アップにつながるのも成果評価の利点です。従業員一人ひとりが目標達成に向けて努力することで、組織全体の生産性が向上することから、結果として、企業の競争力強化や利益増加につながる可能性があります。

さらに、成果評価は従業員の自発的な成長も促進します。目標達成のために必要なスキルや知識を自ら学ぼうとする意識が高まり、結果として個人の能力向上につながります。また、高い成果を上げるためにさまざまな工夫や改善をおこなうことで業務の効率化やイノベーションが生まれる可能性もあります。

行動評価

行動評価は従業員が成果を出すためにどのような行動をとっているかを評価する人事評価制度です。単に従業員の能力や売り上げをはじめとした結果だけでなく、具体的な行動を評価対象とすることで、より公平で効果的な評価が可能になります。行動評価の基準には企業全体で共通して使用する基準と部門や個人ごとに設定する個別基準の2種類があります。共通基準は組織の一貫性を保つために重要で、個別基準は各従業員の役割や目標に応じて設定されることが一般的です。

評価項目の例として、目標達成のための行動、サポート、影響力などが挙げられます。自発的なアクションや具体的な施策の実施、チームメンバーとの協力や顧客ニーズへの対応、提案力やコミュニケーション能力などが行動評価の対象です。

行動評価の導入により従業員の成長や成果の向上を目指します。具体的な行動を評価することで従業員は自身の改善点を明確に理解し、成長につなげやすくなります。一方、企業にとっても、成功につながる行動を組織全体に浸透させることができ、業績向上が期待できます。行動評価は、業務プロセスを重視する評価方法であり、能力評価とは異なります。能力評価が知識やスキルの保有度を見るのに対し、行動評価は実際の行動そのものを評価することが特徴です。

情意評価

情意評価は、従業員一人ひとりの内面的な部分を評価基準とする人事評価制度です。具体的には働く意欲や姿勢など、数値化がむずかしい要素を対象としています。情意評価の特徴は結果よりもプロセスを重視する点にあります。目標達成の数値だけでなく、目標に向かって努力する姿勢や、困難に直面した際の対応力なども評価の対象となります。

ただし、情意評価は評価者の主観に左右されやすいという課題があります。評価基準を明確にし、具体的な行動指標を設定することで、より公平な評価をおこなうことが可能です。
情意評価は、従業員のモチベーション向上や、組織の雰囲気改善に効果があるとされています。数値で表せない貢献を評価することで、従業員の多様な能力や努力を認める機会となります。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は企業で高い成果を上げている人材の行動特性を基準とした人事評価制度です。優秀な社員がどのような行動をとっているかを分析し、評価基準として設定します。評価基準の設定方法には2つのアプローチがあります。1つは企業理念や事業戦略から導き出す方法であり、もう1つは、実際に高い成果を上げている従業員ををモデルにする方法です。

コンピテンシー評価の特徴は、抽象的な能力ではなく具体的な行動を基準とすることであり、実際の業務で発揮される行動を評価することです。また、評価結果を基に具体的な改善点を示すことができるため、効果的な人材育成にもつながります。導入にあたっては、評価基準の設定や運用方法の検討にむずかしさがありますが、適切に実施することで組織全体の生産性向上が期待できます。

360度評価

360度評価は従業員を多角的に評価する人事評価制度です。上司や部下、同僚など、さまざまな立場の人が評価をおこなうことが特徴です。MBOやOKRといった数値目標による評価とは異なり、360度評価では人物の能力や行動を多面的に捉えます。

360度評価は評価者が多岐にわたるため、1人の評価者の主観に偏ることを防ぎやすくなります。上司からの評価だけでなく、日常的に接している同僚からの評価も加えることで、より客観的な評価が可能になるほか、部下からの評価を含めることで、マネジメント能力についても適切に評価できます。

360度評価は従業員の成長を促す効果もあります。さまざまな立場の人からフィードバックを受けることで自身の強みや弱みを多角的に把握できることから、自己啓発や能力開発への意欲が高まり、組織全体の生産性向上につながります。

まとめ

人事評価制度は企業の発展と従業員の士気向上に不可欠な重要システムです。効果的な運用のためには特性の異なる評価制度を理解し、適切な方式を選択することが重要であるほか、複数の制度を組み合わせる場合もあります。

人事評価の運用は、従業員一人ひとりの能力や仕事に取り組む姿勢、貢献度などを報酬に反映させるほか企業全体の業績向上が目的です。ただし、評価基準や内容に偏りがあると従業員満足度が低下するため、バランスの取れた評価制度の構築が求められます。適切な制度設計と運用により、公平な評価と効果的な人材育成が実現し、企業の持続的成長につながります。

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