2022.09.26

事業継承におけるトラブル

事業継承は会社を存続させるために重要なことです。万が一事業の引き継ぎに失敗してしまうと多くの損害を生んでしまううえ、従業員の生活を苦しめることにもつながってしまいます。しかし、事業継承にはさまざまなトラブルがあるため、企業では数多くの課題が残されています。

事業継承に関するトラブルは早期から準備に取り掛かる、専門家へ相談するなど、しっかりと対策を取ることで解決可能です。そのため、事業継承におけるトラブルの解決策を把握し、取り組みを進める必要があります。

事業継承におけるトラブル

事業継承におけるトラブルは次のとおりです。

  1. 後継者がいない
  2. 後継者の能力が足りない
  3. 準備が遅い
  4. 資金が足りない
  5. 誰に対しても相談しない

後継者がいない

会社を引き継ぎたい意志と資質を持った親族や従業員がいる場合、後継者を見つけることは簡単です。しかし、経営者としての大きな責任感などから後継者になりたいと考える人が現れず、後継者が不在である場合は事業継承がむずかしくなります。

また、経営者が自身の経験を重ね合わせ、後継者に経験した苦労をしてほしくないために、事業継承に対して消極的になるケースも考えられます。後継者がいないと経営者が高齢化して事業継承の機会を失ってしまうため、後継者の不在は死活問題といえます。

後継者の能力が足りない

親族内継承では、後継者としての能力が足りないケースが多い傾向にあります。理想的な後継者は従業員や親族に対して丁寧に接することができる優しさや、将来を考え不必要な事情を打ち切れる厳しさを持った人物です。

また、経営者は常にリスクがあるため、経営戦略など事業を展開する知識を学ぶ姿勢のある後継者が理想でもあります。後継者の能力が足りない状態であると、会社の業績が低くなる、まわりの従業員が不満を感じて退職者が増加するなどの可能性があるため、しっかりとした教育が必要です。

準備が遅い

経営者が会社の経営理念を承継できるか不満を感じることで、事業継承をためらってしまい、引き継ぎの準備が遅くなるトラブルもあります。事業継承の準備が遅いと段階的に経営権を委譲できない、余計な費用を払わなくてはならないなどの問題が発生してしまいます。

また、準備不足のまま経営者に突然の体調不良が起こると、会社を経営できる人材がいなくなるため、事業を継続できません。代理となる人物を用意できたとしても、うまく会社の経営判断を下せない、実力不足から従業員から反感を買うなど、経営の安定の確保がむずかしくなります。

資金が足りない

事業継承するにあたって事業や資産以外に設備投資による借金などがある場合は、その負債も引き継ぐことになり、後継者にとって大きな負担になるため注意しなければなりません。特に負債が多額の場合は返済に大きな負担がかかります。

また、金融機関から借り入れをしている場合は、経営者の個人保証が引き継がれることにも注意する必要があります。負債や個人保証などの問題があると後継者が会社を引き継ぎたくないと感じてしまうため、現経営者は問題解決に向けた対策が大切です。

誰に対しても相談しない

会社の引き継ぎを段階的に進めていくためには、従業員や後継者などの周りの人たちに対して事業継承の内容を理解してもらうことが大切です。後継者不足や相続問題などを誰にも相談しないと事業継承が円滑に進まず、周りの人たちが困惑してしまう可能性があります。

そのため、事業継承は従業員に個別に話すことなく、多面的に相談するのが最適です。会社経営に深刻な問題がある場合は専門家と相談し、適切なタイミングで従業員へ説明する場を作ることが大切です。

事業継承に失敗した場合

事業継承に失敗した場合は次の事象につながります。

  1. 廃業になる
  2. 業績が悪くなる
  3. 退職者が増える

廃業になる

事業継承をおこなう理由としては業績の改善が挙げられ、うまくいけば事業の拡大につながり、経営状況が良くなります。しかし、事業継承がうまくいかない場合は想定していた相乗効果を得られないなどの事態が起こり、事業の衰退に陥る可能性があります。事業継承による廃業は、自分や従業員の生活、今まで努力して事業の拡大をしてきた事業のためにも1番避けるべき事態です。

業績が悪くなる

業績改善のために行った事業継承では、タイミングなどの影響でうまくいかず、企業の業績が悪くなるケースがあります。廃業を避けられた場合でも、事業の継続には限りがあるため、存続はむずかしくなってしまいます。

しかし、事業継承では後継者の育成などの準備に多くの時間を必要とするため、事業継承がスムーズにおこなえない可能性は高いです。無計画で事業継承に向けて動き出すと、かえって業績が悪化し続けるため、事業継承には多くの時間をかけることと計画を立てることが大切です。

退職者が増える

事業継承によって会社の経営方針が大きく変わることで、従業員が混乱して退職する場合が考えられます。特に今まで長く前経営者の下にいた古参従業員は、新しい経営方針に納得できずに退職するケースは少なくありません。また、事業継承の失敗から人件費が抑えられることで、退職をせざるを得ない状況になる可能性もあります。

事業継承でトラブルを避けるポイント

事業継承でトラブルを避けるポイントは次のとおりです。

  1. 後継者の意思を確認する
  2. 後継者の教育を十分におこなう
  3. 早期から準備を進める
  4. 専門家へ相談する

後継者の意思を確認する

後継者は前経営者がおこなってきた事業を発展させるうえ、従業員や取引先との信頼関係を築かなければならないため、意思の確認は事業継承において大切なことです。経営者という立ち位置はもっとも重要であるため、曖昧な意思では後継者として任せられません。経営者としての立ち回りや事業を続けるうえで必要なことについて後継者へ説明し、意思確認を丁寧に行うのが最適です。

後継者の教育を十分におこなう

事業継承を成功させるためには、後継者に対して多くの経営体験を積ませることが大切です。会社経営を体験していないと事業継承後の業績が悪化してしまう可能性が高くなるため、事前に体験させておくと事業継承の成功につながります。しかし、後継者の育成には社内教育や経営者としての経験を必要とするため、約5から10年と多くの時間がかかってしまう欠点があります。

早期から準備を進める

後継者不足の問題や後継者育成には多くの時間が必要であるため、早期から事業継承の準備を進めることが大切です。早期の段階で後継者に多くの経営体験をさせると、事業継承後に安定した経営を実現できます。しかし、早期からの準備が間に合わななければ廃業となる場合があるため注意が必要です。

専門家へ相談する

事業継承を自分だけで進めようとすると、税務や法務などのリスク管理を含めた業務に手が回らないため、事業継承の専門家に相談することが大切です。相談しても問題は解決しないと考える経営者もいますが、専門家に相談することで、事業継承の成功率が上がるのは間違いありません。事業継承を成功させれば継承後も安心して生活を送ることができるため、専門家をうまく活用すると良いです。

まとめ

事業継承には後継者不在や教育不足などさまざまなトラブルが存在しています。事業継承に失敗すると廃業や業績悪化といった問題が発生してしまうため、従業員の生活を守る責務がある経営者としては避けるべき事態といえます。

多くのトラブルは早期の段階から事業継承の準備をする、専門家へ相談するなどの対策をおこなうことで解決可能です。そのため、事業継承を成功させたいのであれば、一刻も早く事業を引き継ぐ準備を進める必要があります。

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