- 経営戦略
オープンイノベーションの成功事例と失敗事例
他社の技術や製品情報を自社のサービスに反映させ、自前主義から抜け出すために重要なオープンイノベーション。自社の新たな可能性を見出す施策として、多くの企業が注目し、取り組んでいます。
オープンイノベーションの成功には、有名企業をはじめとした多くの企業がどのような取り組みを進めているか知ることが必要です。他社の成功事例と失敗事例を参考に、自社に適したオープンイノベーションを進めてください。
また効果的なオープンイノベーションの取り組みには、成功と失敗につながるポイントを押さえておくことも重要です。これから取り組む企業だけでなく、すでに取り組んでいる企業も、オープンイノベーションの成功事例と失敗事例をご覧ください。
オープンイノベーションの成功事例
オープンイノベーションに成功した、以下5つの企業が取り組んだ内容を紹介します。
- ソフトバンク
- 日立製作所
- ソニー
- セコム
- プリングルズ
それぞれの成功事例を参考に、自社に適したオープンイノベーションの取り組みを進めてください。
ソフトバンク
ソフトバンクでは、ONE SHIPというビジネスプログラムによりオープンイノベーションを加速させています。ONE SHIPとは、他社との情報交換やパートナー化などを目的としたプログラムです。
新規事業の開始前にONE SHIPを利用することで、自社にないアイデアやノウハウを身につけることが可能になりました。
日立製作所
日立製作所はオープンイノベーションの取り組みとして、2015年に研究開発の体制を再構築しました。日本だけでなく、中国や北米、欧州にイノベーション協創センターを立ち上げます。
グローバル化する昨今の市場にあわせて、顧客と共に課題を解決していく体制を確立したことで注目されています。
ソニー
ソニーは2014年に、ライオンと京セラでも取り組まれていたスタートアップ企業を支援するプログラムを開始しました。ソニーをはじめとした3社はこのプログラムを通じ、Possiという仕上げ用の電動歯ブラシを開発します。
スピード感のあるイノベーションを意識して取り組んだことで、市場への迅速な流通が実現しました。
セコム
警備システムで有名なセコムは、オープンイノベーションを推進する担当者の配置を開始しました。主な取り組みとして挙げられるのは、今後の社会に関する議論を交わす継続的な機会の導入です。
またセコムは外部の情報を積極的に取り入れることで、迅速かつ持続性のあるオープンイノベーションを実現しています。
プリングルズ
ポテトチップスで有名なプリングルズ(P&G)でも、オープンイノベーションの成功事例があります。同社では、売上低迷をきっかけにポテトチップス一枚ずつに絵やクイズの印刷を開始しました。
結果、プリングルズならではの新たなポテトチップスの需要を生み出すことに成功しています。
オープンイノベーションを成功させるためのポイント
以下で紹介する成功のポイントを押さえ、自社のオープンイノベーションを成功に導いてください。
戦略・目的の明確化
企業としてどのようなオープンイノベーションを実施するのか、戦略や目的を明確化してください。ただ外部のノウハウを取り入れたいという理由だけでは、オープンイノベーションの成功にはつながりません。
自社をどのように成長させたいかを明確にしたうえで、他社の情報をもとに現実的な戦略を立案してください。
DX化との並行
自社のDX化が遅れている実感がある場合は、オープンイノベーションと並行して進めておく必要があります。昨今のビジネスシーンでは、DX化が必須とされています。
DX化を無視してオープンイノベーションを進めようとしても、思うような成果は期待できません。他社や顧客がデジタル技術を積極的に取り入れていることを前提に、自社のDX化を推進してください。
特定の担当者を任命
オープンイノベーションを担当する人材は、固定化しておくことが必須です。外部情報の収集や連携が必要な業務であるため、担当者が固定化されていないと円滑なオープンイノベーションは期待できません。
オープンイノベーションの導入が決定したら、同時に担当者の任命や育成を進めておく必要があります。
オープンイノベーションの失敗事例
オープンイノベーションの取り組みに失敗してしまった事例もいくつかあります。
- Apple
- セグウェイ
- デロリアン
上記5つの事例を参考に、オープンイノベーションの失敗を防ぐ必要があります。
Apple
Apple社は、1992年にアップルニュートンという、世界初の携帯端末を発表します。画期的な手書き機能が備わった製品だったものの、本体価格が高すぎたため売上は伸びませんでした。
また、サイズが大きすぎたためポケットに収められず、不便に感じるユーザーも多くいました。結果的にiPhoneの元祖として現代の市場に貢献するものの、発表当時のオープンイノベーションとしては失敗といえます。
Googleは、AR(拡張現実)への参入を目的としたGoogle Glassという製品を発表します。革新的なシステムとして注目を集めますが、価格やプライバシーの観点で問題視され、市場には浸透しませんでした。
また、Google Glassの機能はスマートフォンで事足りてしまうため、成功に至らなかったという背景もあります。
セグウェイ
立ち乗り二輪車セグウェイも、オープンイノベーションとしては失敗事例に該当します。新たな交通手段として売り出されたものの、発売当時の価格が約60万円だったことで、一般市場には浸透しませんでした。
また、速度が遅かったことも市場に浸透しなかった理由のひとつです。発売当時の最高速度はわずか19キロだったため、交通手段として決して便利とはいえませんでした。
デロリアン
デロリアン社は、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーで知られる車両を一般流通させました。映画に登場した車両に乗れるということで、画期的なオープンイノベーションとして注目されます。
しかし、発売当時は自動車業界そのものが低迷していたため、生産が中止されます。デロリアンの安全性が疑問視されたことも、オープンイノベーションとして失敗に至った原因です。
大手SNSとして有名なFacebookは、2013年に新たなスマートフォンのリリースを発表します。しかし、GoogleやMicrosoftと比較してハードウェアが劣っており、ユーザーからの評価は得られませんでした。
また、スペックに反比例して価格が高かったことも、成功に至らなかった原因として挙げられます。
オープンイノベーションが失敗する原因
オープンイノベーションの失敗を未然に防ぐためには、失敗の原因をあらかじめ把握する必要があります。
トップダウン
トップダウンでオープンイノベーションの実施そのものが目的になっては、意味がありません。オープンイノベーションがなぜ必要なのか、本質を見極めたうえで実施する必要があります。漠然としたオープンイノベーションでは、かえって時間やコストを無駄にしてしまうため、注意しなければなりません。
期待と実態のギャップ
オープンイノベーションに過度な期待を持ちすぎてしまうと、失敗につながりやすいといえます。社内で補いきれない革新を他社のノウハウを活用して実施するものですが、自社の成功を確実にするわけではありません。
自社の現状やスペックを把握し、期待と実態のギャップが少ないオープンイノベーションの実施が重要です。
まとめ
他社のノウハウを吸収し、自社の新たな可能性を見出すためのオープンイノベーション。実施する際は、成功事例と失敗事例を事前に確認しておくことを推奨します。
他社と自社の違いや、自社で現実化できる内容を見極めることも大切です。今回紹介した成功、失敗につながるポイントも把握したうえで、自社に適したオープンイノベーションを実施してください。