2023.10.20

信頼されるAI(Trusted AI)とは

信頼されるAIとは、倫理性や不具合によるリスクを最小限に抑えられるAIのことです。近年AI技術が進化し続け、自動運転やスマートスピーカーなどさまざまな分野でAIが活用されるようになりました。しかし、AIが期待通りの動きをしないことで大きなトラブルになる可能性があるため注意が必要です。

AIを活用するためにはAIに倫理、データガバナンス、安全性などが求められます。そのため、信頼されるAIの需要が年々高まっています。文部科学省でも課題として挙げており、日本全体で信頼されるAIに取り組むことが必要です。

信頼されるAIとは

信頼されるAIとは、頑健性や説明可能性、公平性、プライバシーなどに取り組んでいるAIのことです。倫理性や技術面のトラブルなどを最小限に抑えることが特徴です。AIは利便性が高くさまざまな分野で利用でき、企業にとって業務効率化につながるほか、日常の生活でも利便性が高いことからAIが導入されるケースは少なくありません。しかし、間違った情報が出回ったときの対応や情報漏えい対策などAI導入にはさまざまな課題点があります。

そこで、AIの信頼性を追求する信頼されるAIが必要です。信頼されるAIを確立することは、AI技術の発展と社会的に信頼されることにおいて非常に重要です。AIの導入において、安全性と透明性を確保することは信頼を築く基盤となります。信頼されるAIは、企業や機関の評判を高め、ユーザーの信頼を獲得するために不可欠です。

AI活用における問題点

AI活用の問題点として、安全性対策が挙げられます。安全面においては、不正アクセスや悪用、を防ぐために、強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。AIの学習データに対する攻撃やバイアスを防ぐための対策も必要です。

AIの誤った判断が広まり、企業や個人に悪影響を及ぼす可能性があるため、透明性と説明責任を持つことが重要です。そこで、信頼される高品質なAIを創出するために、次のような達成目標を設定しています。

文部科学省による達成目標

文部科学省ではAIの社会実装を推進する半面、未知ケースでのぜい弱性の克服や信頼性や安全性の確保、データ改ざんへの対策などさまざまな課題があるとしています。

(1) 現在のAI技術の限界を克服する新技術の創出
(2) AIシステムの信頼性・安全性を確保する技術の創出
(3) データの信頼性確保及び意思決定・合意形成支援技術の創出
引用:信頼されるAI(文部科学省)

AIシステムが誤った判断を下すことがあるため、信頼性を高めるための手段が重要です。また、AIを悪用してデータ改ざんをおこなう可能性に対処するための対策も必要です。データの安全と整合性を保つためのセキュリティ対策が欠かせません。

文部科学省の目的は、AI技術の進化をサポートしながらその導入に伴うリスクを最小限に抑えることです。これにより、AIの利用がより安全で信頼性のあるものとなり、社会への貢献につながることが期待されています。

信頼されるAIに分類されるカテゴリ

信頼されるAIは次のようなカテゴリに分類されます。

  1. Robustness
  2. Explainability
  3. Fairness
  4. Privacy

Robustness

Robustness(頑健性)とは、AIを誤認識させようといった攻撃に対する耐性のことです。悪意のある人によってAIが騙されてしまい、大きな問題となるケースがあります。そのため、信頼されるAIを導入するにあたって、Robustnessは重大な要素です。

具体的にはAIが誤認識されるリスクを最小限に抑えるためのセキュリティ対策を実施します。Robustnessを強化することで、AIシステムは誤認識や攻撃に対してより耐性を持ち、信頼性が向上します。これにより、安全で信頼性の高いAI環境を構築できます。

Explainability

Explainability(説明可能性)は、AIが生成した情報に対してその情報を提供した理由を解明できる能力のことです。Explainabilityがあることで、AIが間違えた回答をした場合に原因を解明や修正がしやすくなります。

さらに、AIの設計に説明ツールや可視化ツールを導入し、AIの動作を可視化しやすくします。これにより、AIの意思決定がどのようにおこなわれているかを理解しやすくなります。説明可能性を高めることで、AIの信頼性が向上し、誤った判断や意思決定を修正する際に役立ちます。これはAI技術の進化に伴い、ますます重要性を増しています。

Fairness

Fairness(公平性)は、AIが論理的な観点で公平な判断をできるかどうかを示すものです。AIは偏りのあるデータを学習することで、偏見のある回答をしてしまう可能性があります。不公平なモデルを創り出すと、さまざまなトラブルになる可能性があります。

Fairnessには学習データからの偏りを検出して修正することが必要です。AIアルゴリズムの公平性を評価するための指標やベンチマークを開発し、不公平な結果を識別するのに役立てることも可能です。

公平性を実現することは倫理的な観点からも重要であり、公平でないモデルを使用することで差別や不平等が拡大するリスクを軽減します。AIが社会に有益な影響をもたらすためには、公平性が確保されることが欠かせません。

Privacy

Privacy(プライバシー)は、AIが予期せぬ情報漏洩を防ぎ、個人情報の保護を確保する重要な概念です。AIは多くのデータを学習する際、そのデータに含まれる個人情報を無意識に抽出する可能性があります。個人情報の漏洩やプライバシー侵害は深刻な問題となりえます。

Privacyを守るためには、個人情報の取り扱いに関する法的規制やコンプライアンスに従い、プライバシー保護の規定を遵守することが必要です。さらに、データ匿名化やデータアクセス制御:などさまざまな対策が求められます。

信頼されるAIの研究例

信頼されるAIには次のような研究例が挙げられます。

  1. AI技術の限界を克服
  2. データの信頼性を確保

AI技術の限界を克服

信頼性の高いAIを構築するために、AI技術の進化とその限界を克服する取り組みがおこなわれています。AIは多くのメリットがありますが、課題も存在し解決するために継続的な研究と開発が進められています。

AIの透明性、説明可能性、セキュリティ、プライバシー保護なども信頼性を高める要素であり、これらの側面に焦点を当てることが信頼されるAIの実現に向けた取り組みの一部となっています。

データの信頼性を確保

信頼されるAIを構築するためには、データの信頼性を確保することが重要です。AIはデータから学習し、その学習に基づいて判断します。したがって、データが正確で信頼性のあるものでなければ、AIの意思決定も信頼性を持ちません。

データの信頼性を確保するためには、データ収集の過程からデータの品質管理までさまざまなプロセスで注意が必要です。信頼されるAIは、データの品質と透明性に基づいて構築され、その信頼性が企業や個人にとって大きな価値を提供します。

まとめ

AIを効率的に活用することで業務効率化につながります。企業がAIを活用する際には、倫理、データガバナンス、安全性など多くの要素を考慮し、適切な対策を講じることが不可欠です。そこで、信頼性のあるAIを運用することで、AIの導入に伴うセキュリティ、透明性、倫理的な配慮を強調し、社会に対して信頼感を高めることができます。これにより、AIのポジティブな側面を最大限に引き出し、リスクを最小限に抑えながら成果を上げることが可能です。

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