- 経営戦略
中期経営計画見直しの必要性と事例
大手企業のホームページには、企業のビジョンの他に中期経営計画が掲載されることが多くなっています。ビジョンが長期の目標であることに対して、中期経営計画は3〜5年後の目標であり、具体的な数値や施策などを明確にするケースが多くあります。
そのため、中期経営計画を見るだけで、その企業がどのような方向性で、どのようなことをしているかがはっきりします。しかし、外部環境の変化や計画の進み具合によっては、中期経営計画見直しの必要性がある場合があります。
中期経営計画の一部を修正する場合と、また一から計画を作成しなおす場合があります。
中期経営計画見直しの必要性
中期経営計画は、定期的に計画の進捗情報を確認することが大切です。以下のような理由において、中期経営計画の見直しが必要になる場合があります。
- 業績の変化
- 外部環境の変化
- 計画途中での計画の達成
業績の変化
中期経営計画は、3〜5年後に目指す売り上げをはじめとした数値目標を設定しています。そのため、業績が大幅に変化し、目標達成が明らかにむずかしくなった場合は計画内容の変更が必要になる場合があります。
計画内容を変更する手法のほかに、また最初から中期経営計画を作成する場合もあります。
外部環境の変化
法改正や規制緩和、業界動向の変化、経済成長など外部環境は常に変化するだけでなく自社で対応することができません。このため、常に外部環境の変化を確認して、戦略に反映させることが大切です。なかでも競合他社の動きはよく把握しておく必要があります。
また、新型コロナウイルスや東日本大震災など、予期できなかった経営計画に大きな影響を与えるような外部環境の変化にも対応する必要があります。
計画途中での計画の達成
計画の進捗状況が遅れていると計画の見直しをする必要があります。しかし、計画以上に進捗状況が進んでいることもあり、計画途中で達成する場合も考えられます。このようなときには最初から中期経営計画を作成することが一般的です。
中期経営計画見直しの方法
中期経営計画見直しの方法として、以下の3点が挙げられます。
- 定期的なモニタリング
- 大きな外部環境の変化があったとき
- 市場の動きを確認
定期的なモニタリング
中期経営計画を立てたあとも、定期的にモニタリングをすることが大切です。設定した目標に対する行動が実行できない場合や目標を達成できなさそうな場合、逆に短期間で目標が達成できそうな場合などさまざまなケースが考えらえます。
もし中期経営計画を提出し融資を受けているときは、目標を達成できなさそうな場合は金融機関と話し合いをする必要があります。しかし、十分挽回できそうなときは計画の修正は必要ありません。
大きな外部環境の変化があったとき
新型コロナウイルスや東日本大震災など、外部環境の影響により中期経営計画に大きな影響がある場合は見直しが必要になることもあります。新型コロナウイルスの影響もあり、2020年に発表された中期経営計画を見直した企業は前年比で7割増えています。
市場の動きを確認
競合他社の新しい動きや新たな競合他社の出現など常に市場の動きは確認しておく必要があります。また、ユーザーのニーズは市場の動きによっても大幅に変化することがあり、常にアンテナを張っておくことが大切です。
中期経営計画見直しの事例
さまざまな理由で中期経営計画を見直している企業3つを紹介します。
マツダ株式会社
マツダ株式会社では2020年に創立100周年を迎えることで、次の100年後の企業の姿を考え、2030〜2040年の目標を描いています。この目標を達成するために、2020年3月期~2025年3月期においての中期経営計画を設定していました。
しかし、新型コロナウイルスの影響により経営環境が大幅に変わったことから、対応策を含めた施策を見直し中期経営計画の見直しを発表しています。
具体的には次のようなコロナ禍における外部環境想定の変化を加味したものです。
- グローバルの環境規制強化と加速
- CASE時代の新しい価値創造競争
- 働き方の変化や効率化の両立
- 販売やサービスへの顧客要望・行動の変化
株式会社アテクト
株式会社アテクトでは昨今の事業環境の変化に合わせて、新しく5年計画、さらにその先の5年計画を策定しました。新型コロナウイルスの影響により減収となっていたのですが、需要が回復し売上高が創業以来過去最高となったことが大きな要因です。
●基本方針
- 現有戦力(ヒト・モノ・カネ)により収益拡大させることによる財務健全化
- 4大製品投入による成長戦略の推進 ※PIM製品のみならず、全事業、新分野へ新製品を投入
- 成長事業への選択と集中⇒事業ポートフォリオの再編
- 経営体制刷新(執行役員制の導入)
- ESG経営⇒事業活動を通じたSDGs達成への貢献
●2025年度経営目標
- 連結売上高:40億円以上(目標50億円)
- 連結営業利益:5億円必達
- 連結営業利益率:10%必達
NTTグループ
NTTグループは2018年11月6日に発表した中期経営戦略の見直しをおこないました。見直しの背景は、「経済安全保障の重要性の増大や世界規模での自然災害の激甚化」といった外的要因の変化です。
NTTグループでは社会的課題の解決を目指していることも、中期経営戦略の見直しにつながりました。
見直しをしたのは、特に以下の点です。
①国内/グローバル事業の強化
- 新生ドコモグループの成長・強化
- IOWN開発・導入計画の推進
- グローバル事業の競争力強化
- B2B2Xモデル推進
- 新規事業の強化
②新たな経営スタイルへの変革
NTTグループは、afterコロナの時代を見据えて、様々な業務変革やDXを推進するとともに、様々な制度見直しやIT環境の整備を進めることで、リモートワークを基本とする新しいスタイルへの変革を図っていきます。③企業価値の向上
Well-being社会の実現に向けて、以下のようなESG(Environment、Social、Governance)への取り組みによる企業価値の向上をめざします。
- 新たな環境エネルギービジョン
- 災害対策の取り組み
- 株主還元の充実
まとめ
中期経営計画は3〜5年後に企業がなるべき状況を、数値的な目標や目標を達成するための手法を設定したものです。しかし、経営状況をはじめとした内部環境や競合他社、経済状況、トレンドの移り変わりなど外部環境の変化により中期経営計画を見直す必要があります。
企業によって求めている目標が異なり、見直す必要性もそれぞれです。中期経営計画は企業を運営していくうえで基準となるものなので、定期的に効果測定をおこない、修正が必要な場合は早めに対応することが大切です。
経営状況が大幅に変わっているのに、中期経営計画が見直しされていないと従業員や取引企業、融資をしている金融機関の信頼を失う可能性があります。