2022.03.11

人事評価制度を廃止にする理由

人事評価制度とは従業員一人ひとりのスキルや能力を評価するための制度です。企業によっては、人事評価制度により従業員のモチベーションがあがるケースがあります。しかし企業によっては、従業員が評価に満足できずモチベーションを落とすなどの課題があります。

さらに市場のニーズが目まぐるしく変化する現在において、評価制度自体を設定するのがむずかしい場合がありアメリカでは人事評価制度自体を廃止する動きがあります。

参考:人事評価制度構築コンサルティング

アメリカで人事評価制度が廃止になっている理由

アメリカの人事評価制度は長らく個人の成果がベースとなっており、報酬に反映させるのが一般的でした。MBO(Management by Objectives)と呼ばれる成果主義をもとに導入された手法が長らく使われており、日本でもMBOを導入している企業は少なくありません。

さらにMBOをより細かい評価方法にしたコンピテンシー評価が日本で導入されつつありますが、コンピテンシー評価もアメリカが発祥です。しかしアメリカでは2010年以降、評価制度が見直されています。

ランク付けをやめる

これまでアメリカでは従業員一人ひとりに対して、成果に対してランク付けをおこない報酬を決めていました。しかし2010年頃からランク付けをする人事評価制度が廃止されつつあります。

さまざまな業界において多種多様な能力が求められることにより、可視化できる成果以外にも判断するべきことが増えています。そのためランク付けだけで従業員を評価するのがむずかしくなっています。このことにより人事評価自体が廃止されつつあります。

評価基準の複雑化

2010年以降IT化やグローバル化が進むなど、従業員に求められる能力が多種多様化しています。そのためこれまでの決められた項目に対しての評価方法では対応できなくなっています。また時代の流れに対してこれまでと同じ人事評価制度では、正しく従業員を評価できないことから、従業員のモチベーションの低下に繋がることも少なくありませんでした。

廃止された人事評価制度に変わる評価制度

人事評価をやめるといっても、評価をしなければ報酬を決めることができる企業や従業員の成長にもつながりません。そこで人事評価制度が変わりつつあるアメリカにおいて、導入されているのがノーレイティングと呼ばれる評価方法です。

ノーレイティング方式とは

ノーレイティングとは項目ごとに点数をつけるのではなく、目標に対してのプロセスを評価する方法です。そのため結果だけではなく目標に対しての進捗状況や行動の内容などを、定期的に1on1ミーティングを導入して面談をすることによって評価します。

ノーレイティング方式のメリット

ノーレイティングは日常的に上司と1対1で面談を行うことから、コミュニケーションが取りやすい方法です。日常的な業務内容の中で目標設定することができ、その都度調子がフィードバックをしていきます。そのため従業員とって現在の課題を把握しやすく、問題改善をすることができます。

日常的にフィードバックできることから、外部環境が変わった場合でも対応しやすいのがこれまでの人事評価制度と大幅に違う点です。従業員は定期的にフィードバックをもらうことから、自分が必要としていることを把握しやすくモチベーションを上げやすい環境にあります。

このため生産性が良くなり、長期スパンで考えても従業員が育ちやすいため企業が成長する環境を作ることができます。

ノーレイティング方式のデメリット

ノーレイティングの一番のデメリットは、上司が定期的に面談をする必要がある点から負担が大きくなることです。時間や手間がかかるだけでなく常に部下に対して気を配っている必要があります。

また定期的な面談においてコミュニケーションがうまく取れてなければ、従業員のモチベーションが下がることになります。ノーライティング方式が成功するかどうかは、上司のコミュニケーション能力に大きく関連します。

また企業として上司に負担をかけすぎないような仕組みを作ることも大切です。

ノーレイティング導入成功のカギ

ノーレイティング導入を成功させるためには、企業として十分な準備をする必要があります。

企業の課題を分析する

現状の企業として人事評価制度の課題を把握していないと、ノーレイティングを人事評価制度として機能するのがむずかしくなります。ノーレイティングはあくまで、これまでの人事評価制度の課題を解決するための施策であることを理解することが重要です。

管理職への対応

ノーレイティングにおいて、管理職や上司が定期的に従業員一人ひとりと面談をおこなうため管理職の負担が大きくなり、管理職の負担を減らすような企業の対応が必要になります。特に現場としての業務をしているプレイングマネージャーが面談をおこなうのは無理が生じる可能性があり、管理職側の分析力やコミュニケーション能力が必要となるため、管理職に対しての研修が必要になる場合もあります。

全従業員に周知

全従業員に対して今後どのように評価をしていくのか、明確に説明をする必要があります。従業員が納得した上で導入をしないと、面談においてうまくコミュニケーションがとれないことにつながります。

特に半年や1年に1回評価をしていた企業の従業員は、いきなり定期的に直接上司から評価されることになるので目標を見失う可能性もあります。またモチベーションの低下にも繋がることもあるのです。

アメリカの人事評価制度の移り変わり

アメリカは長年成果中心の評価をしておりました。しかし2010年以降、業務内容が複雑になり、これまでの評価方法では対応できなくなりつつあったのです。そこで目標に対するプロセスや人物を評価する方法に変わっていきました。

人事評価制度廃止の目的は複雑な業務内容に対して評価エラーをなくすことです。評価エラーは従業員のモチベーション効果に直結するため、早急に見直す必要がありました。そこでアメリカが導入したのはノーレイティング手法とよばれるプロセスを評価する方法です。

アメリカではGE、Google、Microsoft、アクセンチュアなどが次々にノーレイティング方式を導入しています。特に9ブロック(9個の項目でランク付けする評価方法)を生み出したGEが、ノーレイティング方式を導入したときは全世界に影響をもたらしました。

ノーレイティング方法は頻繁に面談をおこなうことにより、改善するべきことや従業員のストロングポイントが明確になり、従業員の満足度を高めることができます。さらに定期的に上司からフィードバックをもらうことにより、従業員の成長へとつながります。

よく人事評価制度廃止といわれますが、従業員の評価をやめるわけではありません。従業員を項目ごとにわけたランク付けを廃止することが時代の潮流となっています。評価が低い従業員のモチベーションの低下、多様化する業務内容に評価しきれないなどの問題が発生しました。

これらの問題を解決する方法がノーレイティング手法なのです。上司と従業員が定期的に1対1の面談を行うことにより、従業員のモチベーションを保つことができます。

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