- 経営戦略
生産性向上への取り組み
生産性向上とは少ない資源を最大限に活用し、大きな成果が出せるよう業務を改善することです。実現すれば作業の効率化や従業員の負担軽減につながるため、世界中の企業で生産性向上に向けた取り組みがおこなわれています。
具体的な取り組み方として、テクノロジーの導入や労働時間の削減などが挙げられます。しかし、生産性向上に力を入れる企業が増える一方で、十分に取り組めていない企業も少なくありません。これから取り組みをはじめる企業は、ポイントや成功事例を把握し、参考にするべきです。
生産性向上とは
生産性向上とは少ない資源を有効活用し、最高の成果が出るよう業務を改善することを意味します。事業を拡大するには、コストや労働力、時間などあらゆる資源が必要です。
しかし、スケールの小さい企業は必要な資源の用意が困難であるため、少量で大きな結果を出す力や戦略が求められます。少ない資源で利益を生み出せるようになれば、企業の成長率は大幅に向上するはずです。
生産性が意識される背景
生産性向上への取り組みが注目を集めるようになった原因は、競争の激化と労働人口の減少です。現代におけるテクノロジーの進化は著しく、品質での差別化は困難であるうえ、グローバル化も進んでいます。競合他社との争いが激化するなかで、企業には勝ち抜く力が必要です。そのため、より生産性の高い取り組みが求められます。
また、労働者の減少により、企業を稼働させる働き手が不足しています。労働力のない状態では到底競争には勝てないので、少ない人材で大きな結果を出す高い生産性が必要です。
生産性向上への取り組み
生産性向上に向けた取り組みは数多く存在し、すべてを取り上げたら切りがありません。数ある施策のなかでも特に効果が大きい取り組みを次に示します。
- 現状を分析する
- 作業工程を見直す
- マネジメントを工夫する
- テクノロジーを導入する
- 労働時間を長くしない
- 個々のスキルアップを目指す
- コミュニケーションを円滑にする
現状を分析する
現状確認は生産性を向上させるうえでもっとも重要です。課題のある箇所を改善することで作業効率が向上しますが、現状を把握していないと、取り組みのどこに課題があるのか分かりません。現時点でのレベル確認により、課題の発見や改善点の把握が可能です。
作業工程を見直す
作業効率を高めるためには無駄な工数を省く必要があるため、作業工程の見直しは必須です。今の工数で問題ないと感じていても、従業員の取り組み方や一連の流れのどこかに課題が存在しています。
特に長期にわたり同じ工程で作業に取り組んできた企業は、改善点が数多く見つかるかもしれません。工数のチェック後は、どうすれば今よりも効率的に作業が進むのか施策を考えると、より生産性の向上を目指ざせるはずです。
マネジメントを工夫する
生産性向上にはマネジメントの工夫が必要です。マネジメント担当者は、目標達成に向けた作業のスケジュール管理、従業員の活動ペースの決定など取り組む業務が多々あります。確実に目標を達成するための細かいゴール設定やパフォーマンス向上に向けた作業状況の一元化など、マネジメント業務を少しでも工夫すると企業の生産性は向上します。
テクノロジーを導入する
デジタルツールやAIなどのテクノロジーを導入します。近年における技術レベル進化は目覚ましく、導入により生産性が向上するのは間違いありません。費用はかかりますが、生産性を飛躍的に向上させるためにさまざまなテクノロジーの導入を検討するべきです。
労働時間を長くしない
残業や長時間労働は避けるべきです。生産性には従業員のやる気も関係するため、向上を目指すには最高のパフォーマンスを発揮してもらう必要があります。労働時間が長いと従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下し、生産性の低下につながるので勤務形態の見直しは必須です。
個々のスキルアップを目指す
企業全体における生産性の向上を目指すのであれば、従業員や経営陣など個々のスキルアップも必要です。また、専門部署に必要なスキルを身に付けるだけでなく、他部署のスキルを持ち合わせておくことで、お互いの立場に寄り添って活動に取り組めます。相手視点を考慮した連携は業務がスムーズに進むため、1人ひとりが多様なスキルを持つべきです。
コミュニケーションを円滑にする
作業を円滑に進めるにはコミュニケーションが重要です。事業の活動は1人の力ではなく、複数の人手で成り立っており、上流から下流まで一連の流れがあります。
従業員同士が現状や情報の共有をおこない、作業がどの段階にあるのか確認すると、いつ次の業務に移るべきか計画を立てることができます。作業効率が上がるため、コミュニケーションがスムーズになれば生産性は向上するはずです。
生産性向上におけるポイント
生産性を向上させるうえで重要なポイントは、次のとおりです。
- 指標を設定する
- より良い環境を準備する
- 1つの分野に特化しない
指標を設定する
生産性の向上に向けて取り組みをおこなうのは重要なことですが、進むべき道が定かでないと従業員は何をすればいいのか分からず、業務へのモチベーションは向上しません。具体的な数値で指標を設定し、、達成までの道のりを従業員へ明確にするべきです。
より良い環境を準備する
働きにくい環境だと従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下につながり、最悪の場合、退職も考えられます。優秀な人材を失うのは企業にとって大きなデメリットであるため、労働環境は清潔感のある働きやすい場にするべきです。より良い環境を準備することで従業員のパフォーマンスが上がり、生産性向上を期待できます。
1つの分野に特化しない
1つの分野を専攻して生産性を高めるのではなく全体に視野を広げます。事業の拡大に向けた業務は数多く存在するため、生産性向上を実現するにはあらゆる業務効率の改善が必要です。雑に取り組みを進めると、効果がでるまでに時間がかかるので、改善する際は優先順位を決める必要があります。
生産性向上の成功事例
生産性向上への取り組みに成功し、企業の成長を促進させた事例は多々あります。自社でも生産性への取り組みを成功させるために、成功事例を参考にするべきです。
※以下は生産性向上の好事例(宮城労働局(厚生労働省))を参照しています。
惣菜の製造会社
飲食業界の某製造業者では、生産性の向上に向けて作業の手順やルールの変更を決定しました。取り組みを進めるなかで、作業工程で見受けられる無駄と商品開発で生まれる廃棄物の量の2つの問題点を洗い出し、改善に取り組みます。最終的には、無駄な部分や廃棄ロスの削減により、生産性向上の実現に成功しました。
寝具小売店
某寝具小売店では、顧客に対する接客の仕方にバラつきがある課題を発見しました。課題を放置しておくと企業の損害につながるため、店員の行動を分析し、パフォーマンス力を磨き上げます。勉強会の場を設けて、分析から得た情報を共有することで、接客力の向上と売上アップに成功しました。
老舗旅館
某老舗旅館では、業務における課題を特定したところ、情報連絡の非効率さと人手不足が問題であることが明らかになりました。タブレットとLINEを連絡手段として導入し、情報共有がスムーズになると、業務の効率化と労働負担の軽減に成功します。また、部門を超えて、応援体制を整えることで、労働時間の短縮と人手不足の解消につながりました。
まとめ
生産性向上とは少ない資源を有効活用し、最高の成果を出せるよう業務を改善することです。生産性向上に向けた取り組みとして、マネジメントの工夫やテクノロジーの導入、労働時間の延長防止などが挙げられます。
単に取り組みを進めるだけでは効果を得ることができないため、企業内で施策を試行錯誤する必要があります。指標の明確化や環境の整備といったポイントをおさえ、他社事例を参考にしつつ、自社でも生産性向上の実現を目指すべきです。