- 組織人事
中小企業における人事評価の特徴
中小企業は大企業に比べてリソースが十分でないことから、深刻な人材不足が大きな課題となっています。賃金格差や高い離職率などさまざまな要因があり、人手が足りず倒産に追い込まれるケースもあります。そこで、人事評価制度を導入して人材を確保したいところですが、現状は導入率は低く、導入しても適切な運用ができていない状況です。しかし、コストや人材のリソースが少ない中小企業こそ人事評価に取り組むことが求められます。
人事評価制度の特徴
人事評価制度とは、従業員一人ひとりのスキルや貢献度などを評価して待遇に反映させることです。この制度を通じて、従業員は自身の業績と成長に合わせた評価を受け、モチベーションを高めることが期待されます。適切に設計された人事評価制度は、従業員のパフォーマンス向上や会社全体の目標達成に貢献し、組織にとって重要な要素です。
人事評価制度には次のように3つの機能があることが一般的です。
等級制度 | 従業員の役割やスキルなどで階層化 |
---|---|
評価制度 | 従業員のスキルや貢献度などで評価 |
報酬制度 | 評価制度を基準として報酬を決定する制度 |
中小企業での人事評価制度の導入状況
中小企業では人事評価制度を導入できていないケースが見られます。また、導入していても適切な運用がされておらず、効果が見られないことも少なくありません。中小企業は人事リソースや予算が限られており、人事評価制度の導入が制約されていることが特徴です。さらに、中小企業の人事担当者は、人事評価に関する専門知識や経験が不足しているこがあるため適切な運用ができていない傾向にあります。
導入率が低い
中小企業は大企業に比べ、人事リソースや予算が制約されることが多いため、人事評価制度の導入がむずかしい場合があります。2022年に帝国データバンクが実施した中小企業の経営力及び組織に関する調査では、従業員5〜20人の企業では、人事評価制度があるのは35%といった結果がでています。21人〜50人の企業では57.2%、51人〜100人の企業では72.5%、101人以上の企業では過半数である87.2%の企業が導入しています。このように、企業の規模が小さくなればなるほど人事評価制度を導入していないといった結果です。
画像出典:令和 3 年度中小企業実態調査委託費中小企業の経営力及び組織に関する調査研究報告書(帝国データバンク)
従業員数の少ない企業(5人〜20人)が人事評価制度を導入しない理由は、「従業員が少なく経営者が全従業員の状況を把握しているため」が82.2%と過半数を占めています。また、14.8%の企業が「制度を儲けても運用が困難であるため」と答えています。
適切な運用ができていない
中小企業には人事評価に関する専門的な知識や経験を持つ担当者が不足していることが少なくありません。そのため、適切な運用をできていない企業が多いことが現状です。結果的に中小企業の評価制度はしばしば透明性に欠け、従業員が評価基準やプロセスを理解しにくいことがあります。また、フィードバックの提供が不十分であるため、従業員は自身の成長や改善点を把握しにくく、従業員一人ひとりのモチベーション低下につながっています。
中小企業が人事評価制度を導入すべき理由
人事評価制度は大企業だけではなく中小企業でも必要です。人事評価制度は公平性のある評価をすることによって従業員のモチベーションアップにつながり離職率を抑え人手不足の解決につながります。
中小企業が人事評価制度を導入すべきなのは次のような理由があるためです。
- 従業員のモチベーションが上がる
- 離職率を抑えられる
- 人手不足の解決につながる
- 採用コストを削減できる
従業員のモチベーションが上がる
大企業と比べると従業員の少ない中小企業では、個々の従業員の能力が企業全体の業績に大きな影響を及ぼすことがよくあります。従業員一人ひとりの能力向上は、中小企業にとって重要な課題です。そのため、個々の従業員のモチベーションを高め、能力を向上させるためには、効果的な人事評価制度の導入と運用が不可欠です。
適切な人事評価制度は、従業員が自身の目標に向かって努力し成長できる環境を提供し企業の持続的な成功に貢献します。中小企業が競争力を維持し成長するためには、従業員の能力開発を重視することが欠かせません。
離職率を抑えられる
中小企業は大企業に比べて従業員数が少なく、1人の従業員が離職することによって大きなダメージにつながることがあります。人材が不足すると事業自体を存続できなくなる可能性があります。
しかし、即戦力を雇うためにはコストが必要であり、実際に就業してもらうまで時間がかかる場合もあります。従業員のモチベーションを上げられるような人事評価制度を導入することによって、従業員の離職率を抑えることが可能です。
人手不足の解決につながる
中小企業が人事評価制度を導入することで、人手不足の解決につながる場合があります。中小企業は大手企業と比べて、従業員数や予算に制約があることが一般的です。そのため、労働力不足や離職率の増加が課題となります。
人事評価制度を導入することで、従業員は自己成長とスキルの向上に取り組む機会を得ます。さらに、明確な目標があることから従業員の労働意欲を高め、離職率の軽減につなげることが可能です。結果として、企業はスキルアップした従業員を抱え業務の遂行力が向上します。
採用コストを削減できる
中小企業が新規に従業員を採用すると、採用プロセスにおけるコストが相対的に高くなることが一般的です。求人広告の費用、面接官や選考担当者の人件費、新入社員向けの研修費用、さらには新しい従業員が効率的に業務を遂行できるようになるまでの時間と生産性の低下などが含まれます。
そのため、人事評価制度が重要な役割を果たします。この制度を活用することで、既存の従業員に対してモチベーションを高め、スキル向上を促進することができ、結果的に離職率を低減し、組織内での人材の定着を促進します。また、従業員にとってはキャリアプランの明確化や将来への展望が得られるため、中小企業における人材の魅力的な選択肢となります。
人事評価制度を導入する方法
人事評価制度を導入する方法は主に次の2dつが挙げられます。
- 自社で人事評価制度を導入
- コンサルティング会社に依頼
- ツールを活用
自社で人事評価制度を導入
自社で人事評価制度を設計する方法があります。企業方針やビジョンなどを反映できることから評価制度を作りやすい特徴があります。さらに、コンサルティング会社に依頼するよりもコストを大幅に抑えることが可能です。
ただし、自社で評価制度を設計する際には専門知識と効果的な実施計画が必要です。評価基準の明確化や評価プロセスの設計に時間と労力がかかることもあります。また、公平性と透明性を確保するために細心の注意が必要です。
コンサルティング会社に依頼
人事評価制度構築をコンサルティング会社に依頼する方法もあります。専門のコンサルティング会社を活用することによって、豊富な実績やノウハウなどを生かすことは可能です。第三者の視点から公平な意見を導入できるメリットもあります。さらに、自社に人事評価制度を設計する人材がいない場合でもコンサルティング会社に依頼することが一般的です。
コンサルティング会社は多くの企業と協力してきた経験があり、人事評価に関する幅広い実績と専門知識を持っています。また、人事評価の設計や運用に関して、コンサルタントは専門的なアドバイスとガイダンスを提供します。これにより、最適な評価制度の設計と実施が可能です。人事評価に関するコンサルティング会社の利用は、企業が適切で効果的な評価制度を導入し、従業員のモチベーション向上と組織の評判向上を達成するための重要な手段です。
ツールを活用
人事考課ソフトや人事評価システムを活用して、人事評価制度を管理する方法があります。人事考課ソフトや人事評価システムとは、目標設定からフィードバック、評価内容まで管理出来るシステムです。
いずれのツールも一元管理ができて便利ですが、人事評価をするための知識が求められます。システムの導入に際しては、従業員の評価基準やプロセスを検討し、明確な指針を設けることが重要です。
まとめ
人事評価とは、従業員の能力や業務内容、成果などを基準として評価をして待遇に反映することです。中小企業は大企業と比べてリソースが少なく、既存の従業員に対して適切に人的評価をすることが重要です。しかし、現状では対応しきれていない中小企業が多い傾向にあります。
人事評価について理解のある従業員が不在の場合、コンサルティング会社に依頼をすることが一般的です。人事評価を導入して従業員のモチベーションを高めることで離職率が下がり、生産性も高まります。