2022.09.16

人事評価制度における成果主義

人事評価制度の1つである成果主義とは、個人の出した成果によって従業員の評価を決定する制度です。勤務歴や年齢を問わず、担当者から評価を受けられます。

成果主義は評価の基準が明確であるため従業員が納得できる評価が可能ですが、評価に値しない作業は従業員から軽視されるリスクもあります。誰もが納得する公正な評価の実現に向けて、成果主義を企業で運用する際は部署ごとに評価項目を設定する、業務プロセスも評価に加えるなどのポイントを意識して評価をおこなうべきです。

参考:人事評価制度構築コンサルティング

成果主義とは

成果主義とは成果によって従業員の評価をおこなう人事制度です。成果が基準であるため、従業員は業務で成果を上げると企業側から給与アップが期待できるシンプルな評価手法で、勤務歴は関係ありません。

反対に成果を上げないと評価されないため、従業員は日頃から企業に貢献できるスキルを磨く必要があります。従業員どうしがモチベーションを高め合う良い環境づくりが大切です。

背景

景気の変化や働き方の多様化が進んだことにより、年功序列制度には限界がきています。これまでの企業では終身雇用が当たり前でしたが、人件費の高騰による企業の負担が大きく、終身雇用を維持できない状態になっています。そのため、年功序列で給与を上昇させるのではなく、成果を基準にして給与を上げる制度を採用する企業が増えています。

成果主義のメリット

成果主義を自社でうまく運用するためには、メリットの把握が必要です。成果主義のメリットは次の通りです。

  1. 正当に評価できる
  2. 従業員のモチベーションが向上する
  3. 人件費をおさえられる

正当に評価できる

成果主義は成果を上げた従業員が評価される仕組みであるため、年齢や勤務歴を問わず報酬アップや昇進が期待できます。また、評価基準がはっきりしているため、従業員は評価に納得感を得ることができ、評価されようと業務に対して意欲的になります。職務や業務内容によって難易度は変動するため、評価基準が偏らないよう注意が必要です。

従業員のモチベーションが向上する

成果が給与アップや賞与に結びつくため、業務に対する従業員のモチベーション向上が期待できます。年功序列制度では若手社員が成果を上げても評価に反映されないといった、正当でない評価がおこなわれてきました。しかし、成果を基準にすると、企業に貢献する生産性の高い従業員が適切に評価されます。従業員どうしで刺激し合い、切磋琢磨し合う環境をつくることで組織全体における生産性の向上も期待できます。

人件費をおさえられる

年功序列制度では成果に関係なく勤務歴によって給与が決定していたため、仕事に貢献していない従業員でも高収入を獲得できました。しかし、成果主義の採用により評価基準が勤務歴ではなく成果となったため、仕事で企業に貢献しなければ給与は上がりにくい仕組みに変化します。これまで支払う必要があった分の人件費を削減できるうえ、若い人材でも成果を出した分だけ正当な評価を受けられる仕組みをつくれます。

成果主義のリスク

成果主義の運用失敗を防ぐためには、リスクを削減する必要があります。成果主義のリスクは次のとおりです。

  1. 業務が属人化する
  2. 数値で表現できない仕事は評価されにくい
  3. 評価に結び付かない業務は軽視される

業務が属人化する

成果を上げようとして個人で業務を遂行する従業員が増えると、チームワークやスキルの継承がうまくいかず、業務が属人化してしまいます。属人化は企業にとって大きなリスクであり、優秀な従業員が退職した場合に業務がスムーズに回らなくなります。また、上司が成果を上げようと部下の育成に力を入れないケースも考えられるため、属人化による組織の弱体化を防ぐ対策が必要です。

数値で表現できない仕事は評価されにくい

評価に該当する成果が具体的であれば、従業員は業務への取り組みを進めやすいです。しかし、成果が数値で表現できない仕事は評価基準があいまいであるため評価はむずかしいです。

頑張った分だけ評価されるのが成果主義ですが、仕事が評価に反映されないと従業員におけるモチベーションは低下します。特に手間のかかる業務であればなおさらで、評価されない場合は従業員からは不満が生まれます。そのため、成果だけでなくプロセスも評価基準に組み込むと適切な評価が可能です。

評価に結び付かない業務は軽視される

成果が評価に直結するため、多くの従業員は成果を出すことに注視してしまいます。そのため、評価に結び付かない業務が軽視され、企業にとって不利益な環境が生まれてしまうので注意が必要です。

成果主義を採用する目的は企業における生産性の向上であるため、従業員には評価制度を十分に理解してもらい、業務の優劣がつかないよう企業側も対策を練る必要があります。

成果主義を運用する際のポイント

成果主義を運用する際のポイントは次のとおりです。

  1. 評価基準を定める
  2. 部署ごとに評価項目を設定する
  3. 報酬制度を整備する
  4. 業務プロセスも評価に加える
  5. ほかの評価制度と組み合わせる

評価基準を定める

成果主義では個人が出した成果に対して評価をおこなうため、具体的な評価基準の設定が必要です。基準が数値で表現できずにあいまいな場合、成果を上げても評価に反映されないケースが生じてしまい、従業員のモチベーション低下が考えられます。評価基準や項目を明確に定めることで、従業員はどのような業務に取り組み、どんな成果を出せばいいのか理解できます。

部署ごとに評価項目を設定する

部署や役職によって業務内容は異なるため、評価基準を別々に設定する必要があります。業務の難易度が異なるにも関わらず、同じ基準で評価される制度は公正ではありません。評価基準を均等化するためには、適切な評価基準を設定できる担当者のスキルが求められます。

報酬制度を整備する

成果を挙げた分だけ評価を受ける成果主義は、報酬に大きく反映されます。そのため、成果によって報酬をアップする、給与を成果報酬型にするなど、賃金の整備が必要です。報酬制度の整備は従業員のモチベーションと企業における生産性を左右するものであるため、制度の変更前は従業員へ周知し、反応を見てから導入するかどうか検討するのがベストです。

業務プロセスも評価に加える

目に見える数値だけを評価せず、成果に至ったプロセスも評価するのが良い制度です。成果だけしか評価しない場合、成果を出せなかった業務への取り組みは評価されないため、従業員のモチベーションを下げることにつながります。プロセスも評価基準に入れると適正な評価を実現できます。

ほかの評価制度と組み合わせる

成果主義は別の評価制度と組み合わせることでより適切な評価が可能です。しかし、複数の評価方法を組み合わせて人事評価制度を運用するには、評価担当者の知識が必要です。数多くの評価方法を熟知し、状況に応じて使い分けなければ適切な評価はできません。

まとめ

成果主義とは個人の成果で従業員の評価をおこなう人事評価制度です。成果が評価の基準であるため勤務歴や年齢を問わず、公正に担当者から評価を受けられます。

従業員のモチベーション向上や人件費をおさえられるメリットがある一方で、業務が属人化する、評価されない業務は軽視されるなどのリスクがあるため注意が必要です。成果主義を導入する場合は、部署ごとに評価の基準を設定する、業務プロセスも評価に入れるといったポイントをおさえると良いです。

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