2022.07.27

組織文化の変革事例

組織文化はそれぞれの企業の経営状態や社会の変化に対応して変革を必要とする場合があります。しかし、一旦浸透した組織文化を変革することは決して容易なことではありません。組織文化が根付いているということは、基本的にこれまでは成功しているということです。

組織文化を変革するのがむずかしい理由は、現在の組織文化が成功体験に根付いていることが理由です。これまで成功していた組織文化を変更するということは、何らかの形で組織の調子が悪くなっていることがほとんどです。

そのため、組織文化を変革するためには、これまでの自分たちのやり方では今後は成功しない可能性が高いといったことを認めることから始まります。

組織文化の変革するために必要なこと

組織文化を変革するために次のことが必要です。

  • 変革後の目標を具体的に設定
  • 変革する内容を言語化して発信

変革後の目標を具体的に設定

組織文化を変革していくためには、変革後の目標を数値化することにより明確にすることが大切です。目標設定を具体的に数値化することによって、定期的に途中経過を確認することができます。目標どおりに進まないようであれば変革の内容を見直す必要がある場合もあります。

変革する内容を言語化して発信

変革の内容はチャレンジしようといった曖昧な言葉ではなく、具体的に自分達はどうなるべきなのかを言語化することが必要です。言語化した内容は従業員全員に定期的に伝えていくことが重要です。

組織文化の変革事例

組織文化の変革には次のような事例が挙げられます。

  • お客様本位に改革
  • 自由な風土の復活
  • 多くの部署を経験
  • モチベーション&コミュニケーション研修

お客様本位に改革

キリンビールは2019年に過去10年で最高の売上高を記録しました。さらに、2020年もビールやノンアルコールなど、さまざまなカテゴリーにおいて市場を上回っています。2001年にビールの売り上げ1位から転落をして、このことをきっかけにお客様本位、品質本位をテーマに組織風土改革を進めてきました。

しかし、2015年までは変革の成果がでていないのが現状でした。そこで、社長自ら若手社員や労働組合などを集め、お客様第一といった言葉を何度も繰り返し伝えることにしました。議論した相手は延べ900人を超えています。

これらの取り組みが2019年、2020年の結果につながりました。

参考:キリンビール お客様主語のマーケティング改革(キリンビール)

自由な風土の復活

村田製作所はもともとは自由な風土が特徴でした。しかし、2000年代初め頃 ITバブルが崩壊したことによって業績が伸び悩むようになりました。会議において、さまざまな否定的な言葉が飛び交うようになり、企業全体的に重苦しい雰囲気となったのです。

これまでは従業員一人ひとりが積極的に業務に取り組める環境だったのが、萎縮してしまうように変化しました。そこで当時の経営陣が危機感を強めて、自由な風土を取り戻すためにCS(Customer Satisfaction、顧客満足)や現場指向、チャレンジ精神を重視といった風土を作り上げるために改革をし続けました。

このような改革を10年続けることにより、自由な雰囲気の風土を取り戻すことに成功したのです。

頭ごなしには話さない。始まりはいつも「今日は集まってくれてありがとう」と感謝の言葉。「正しい状態にすることが上の仕事だと気づいたんです」と、反省を口にしながら自らの気づきを従業員に赤裸々に語る。こうした対話を何度も繰り返したという。
「社員が幸せな会社」の代表格とされる伊那食品工業に全役員が訪れ、風土改革を徹底的に話し合う合宿もしたという。
出典:村田製作所には自由な風土が失われかけた時期があった(日経ビジネス)

多くの部署を経験

湖池屋では新入社員に3つの部署をローテーションで経験させるようなシステムをとっています。これまでは上からの指示待ちの従業員が多く、自立的に動ける人材開発が課題でした。

そこで、思考力や主体性を身に着けるためにさまざまな部署で経験をすることでさまざまな視点でアイディアがでるようになりました。

多くの部署を経験した人材で構成される組織であるため、例えば新商品開発の起点を見ても「営業の視点を持ってマーケティングをやる」といったことがごく当たり前になっています。加えて、かつて同じ部門で働いた者同士がさまざまな部門に在籍するので、社内コミュニケーションも活発で、「こういうアイデアはどうか」といった会話がフォーマル、インフォーマル問わずにいたるところで飛び交います。
出典:“働いてみたい注目成長企業”湖池屋が実践!チャレンジする人材と組織をつくる「人事制度改革」(日本の人事部)

モチベーション&コミュニケーション研修

日本航空はリーマンショックの影響や大型航空機の需要がなくなりつつあったことに対応できず、労働組合が複数あることから企業再生支援を経て、再生の道を進むことになりました。

日本航空再生の施策の1つとして導入されたのが、モチベーション&コミュニケーション研修です。

現場にいる社員たちの「やる気」「元気」にフォーカスを当てた内容が中心です。「モチベーション&コミュニケーション研修」といって、3つのコースがあり、入社3年以内の社員向けの「うきうきコース」と4~6年目向けの「わくわくコース」、7~10年目向けの「いきいきコース」と年代別に分かれています。
出典:現場のやる気を引き出す再生JALの社員研修とは(WORKSIGHT)

研修担当者が現場の若手社員にどんな研修があったら嬉しいかヒアリングしたところ、社員一人ひとりの気持ちも破綻していたということです。そこで現場の若い人たちの心を元気にするためにモチベーション&コミュニケーション研修を導入しました。

単に元気にする研修ではなくJALの一員として心を統一するために、講師は全て社内の人間がおこなっています。新生JALはあくまでJALフィロソフィとよばれる企業理念を土台としており、どのような研修においても企業理念からずれないように配慮をしています。

このことにより職種に関係なく、現場に一体感が生まれるようになりました。

社内SNSの導入

シャープは経営再建をしたことから風通しが悪くなり、ボトムアップの提案がしにくい、ほかの部署に対してコミュニケーションがしにくいことが課題でした。そこで社内SNSを導入することにより、若手社員と経営幹部との距離を近づけることに成功しました。

SNSは最小限のルールだけにとどめて、業務時間外であれば趣味など業務に関係ないことでも書いていいといったルールにしたところ、若手社員が気軽にコミュニケーションをとれるようになったのです。

日本マイクロソフトのエンタープライズソーシャルネットワーク「Yammer」において、国内最大規模のユーザーとなるのがシャープである。経営再建に取り組むなか、社内の風土改革の切り札として、社内コミュニケーションの活性化に着手。そこにYammerを活用している。現在、約9500人の社員がYammerに登録。これを活用したコミュニケーションを行っており、今後は海外拠点にも展開していく考えだ。
出典:社内の風土改革の切り札に――Yammerでコミュニケーションを活性化させるシャープ(クラウドWatch)

まとめ

組織文化の変革は決して容易なことではなく、失敗も決して少なくありません。変革をするときは強い熱意を持っていることがほとんどですが、結果的に結果が伴わないのです。組織変革をするためには現場の従業員の行動や考え方と、目指したい姿とのギャップを埋めていく必要性があります。

実行する場合には、変革後の目標を具体的に設定し、変革内容を言語化して積極的に発信しつづけることが求められます。

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