- 経営戦略
経済産業省が提案するオープンイノベーションの施策
オープンイノベーションは、自社にないノウハウを取り入れ、自前主義からの脱却を図ることです。多くの日本企業でも取り入れられるなか、経済産業省が提案する施策もいくつか存在します。
経済産業省が提案するオープンイノベーションの施策を把握することで自社の課題がより明確化できます。また、オープンイノベーションに対する現状や課題への見解を理解することも大切です。
経済産業省はオープンイノベーションにまつわる税制も提案しています。自社の新たな価値を創出するためにも、経済産業省の施策や見解は理解しておくことを推奨します。
経済産業省が提案するオープンイノベーションの施策
経済産業省が提案するオープンイノベーションの施策について把握するには、以下3つの側面を覚えておかなければなりません。
- 組織としてのあり方見直し
- 人材や技術の流動化を促進
- 環境の整備
オープンイノベーションの種類
経済産業省が提案するオープンイノベーションの施策は、組織・人材・環境軸に、以下の3つに分けられます。
- アイデア創出や事業構想
- 技術開発
- 社会実装や市場獲得
具体的な施策の事例
経済産業省は、さまざまな観点でオープンイノベーションの施策を提案しています。どのような施策が提案されているかを把握することで、自社の現状や今後の課題が明確になります。
以下からは具体的な施策の事例を紹介するので、自社の現状に当てはめて参考にしてください。
参考:イノベーションを推進するための取組について(素案) (経済産業省 産業技術環境局)
組織としてのあり方見直し
組織としてのあり方を見直すために、経済産業省が提案する施策は以下の通りです。
- イノベーションを推進するための意識改革
- イノベーションを促進する組織や運営体制の構築
- 中長期ビジョンでの研究開発への投資を促進
人材や技術の流動化を促進
人材や技術の流動化を促進するための施策には、主に以下が挙げられます。
- アイデアを創出するための労働環境や規制の整備、変更
- ベンチャー企業と大企業における連携の促進
- 国研と企業をつなぐことによる地方企業の発展
- ベンチャー企業に適した支援制度の調査、対策の検討
- 事業化ツール構築と提供を通じた社会実装機能の強化
環境の整備
環境の整備をよりスムーズにするためにも、いくつかの施策が提案されています。
- 国内外での市場獲得を目的とした産学官連携
- 市場課題の動向を分析する体制の構築
- 共通基盤技術に目を向けた協調領域の明確化
- 海外企業のノウハウや人材を取り入れることによる技術力向上
- グローバル・オープン・イノベーション・センターの設置
オープンイノベーション促進に関する税制
経済産業省では、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを促進する税制が創設されています。スタートアップ企業の株式を新規で一定額取得する場合を対象に、約25%を所得控除する税制です。
令和4年の税制改正により、令和6年の3月末日まで期間が延長されています。
オープンイノベーションの取り組み事例
経済産業省では、オープンイノベーションによる新規事業の創出に関する以下の取り組みを実施しています。
- オープンイノベーション・マッチングスクエア
- オープンイノベーション・チャレンジピッチ
地域企業やスタートアップ企業に向けた取り組みであるため、参考にしてください。
オープンイノベーション・マッチングスクエア
オープンイノベーション・マッチングスクエアとは、中小企業の新規事業を支援するためのプラットフォームです。意欲的に外部との連携を進める大手企業と、効果的に引き合わせる効果をもっています。さまざまな企業の課題やニーズを抽出できるのも、オープンイノベーション・マッチングスクエアの特徴です。
オープンイノベーション・チャレンジピッチ
外部との連携に意欲的な企業と、自社をマッチングさせるのがオープンイノベーション・チャレンジピッチの特徴です。優れた技術力を有する機関のコーディネーターによる、信頼性の高いマッチングが実施されます。
また、オープンイノベーション・マッチングスクエアと連携できるのも特徴です。双方の連携により、全国各地のパートナー候補を効率的に発見できます。
オープンイノベーションに対する経済産業省の見解
日本におけるオープンイノベーションには、以下の課題があると経済産業省は考えています。それぞれの課題に対する見解とあわせて解説します。
- 環境の変化に対応しきれていない
- 自前主義からの脱却が遅れている
- 中長期的な開発への意識の低さ
- 人材、資金の流動性が低い
- グローバルネットワークの波に乗れていない
環境の変化に対応しきれていない
昨今の市場は、グローバル化や働き方改革の影響による変化が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大で、新たな市場ニーズが生まれた業界も少なくありません。
しかし、既存技術の革新スピードが市場の変化に対応しきれず、トレンドを取り入れられていない企業も多く存在します。コモディティ化によりサービス単体での価値創造が困難になっているのも現状です。
自前主義からの脱却が遅れている
日本企業の多くには自前主義の脱却における課題があります。サービスや環境設計に直結するビジネスモデルが、確立しきれていないことが理由です。ビジネスモデルが、事業化や収益化につなげられていないことも理由に挙げられます。事業構想や研究開発、市場の開拓までを想定したイノベーションが急務とされています。
中長期的な開発への意識の低さ
世界基準の傾向として、開発費の多くを短期的なビジョンで割り振る企業が増加しています。日本でも確立まで3年以上を有するサービスに関しては、優先度を下げる企業も少なくありません。そのため、中長期的な開発や研究に対する支援を、国が支援する必要性が高まっています。
人材、資金の流動性が低い
日本企業は、人材の流動性が低いといわれています。また資金に関しても企業の枠を超えたやりとりが限定されていることが課題です。流動性を高めるためには、企業の枠にとらわれない自由かつ革新的な人材、資金の流れを意識しなければなりません。
グローバルネットワークの波に乗れていない
昨今の市場は、海外企業への注目度が高まっているといえます。いわゆるグローバル化が進むなかで日本企業はその波に乗れていないことが課題です。
人材や資金の観点でも日本企業は孤立している傾向にあります。かつて世界の主流とされていた事実にしがみついた経営により、世界に置いていかれているのが日本企業の現状です。
まとめ
オープンイノベーションは、さまざまな企業が重視している取り組みです。注目度が高まる背景には経済産業省が考える日本企業の現状や課題がありました。
日本でのオープンイノベーションを活性化させるために、経済産業省では多くの施策を提案しています。また、税制を活用することで、多くの企業がオープンイノベーションを推進できるようになりました。
自社のノウハウや技術だけでは、今後の成長に不安があるという企業が増加している昨今。オープンイノベーションの基礎をおさえたうえで、経済産業省が提案する施策や見解を理解しておく必要があります。