- 経営戦略
自前主義とは
自前主義とは自社で開発したものに対して高く評価をし、他社の技術やノウハウなどを評価しないことです。自社の技術やノウハウなどに固執することになり、市場競争においてより高い技術を持つ他社に勝てなくなる可能性があります。自前主義は日本の企業において大きな問題となっており、他社の技術やノウハウなどを取り入れるオープンイノベーションを導入する動きが進んでいます。
自前主義とは
自前主義とは、自社が開発した商品や技術を活用することにこだわる概念です。自社より優れた商品や技術があっても、導入せず自社の商品に固執することが特徴です。自前主義はスピーディーな開発を可能にするといった理由において需要が高まりました。さらに、自前主義には、リソースを内部に確保することによりコスト削減につながるメリットがあります。しかし、技術革新やグローバル化が進む現代において自社のリソースだけでは顧客のニーズを満たせないようになっているのです。
自前主義が発生する理由
自前主義が発生する理由には次のような点が挙げられます。
- 集団思考
- 現状維持バイアス
- SPOT効果
集団思考
集団で意思決定をすることにより、合理的な決定につながらない可能性があります。他社の商品と自社の商品を比べるべきところを、意見の一致が最終的な目標となっているケースがあるのです。
現状維持バイアス
自社が既に保有しているものや立場、意見などをそうでないものと比較して高く評価する傾向にあります。このことからこれまでなかった意見やアイディアなど評価できず、現状の状態を脱却できない企業が少なくありません。
SPOT効果
SPOT効果(Spontaneous Preference for their Own Theory)とはイギリスの心理学者であるグレック氏の理論で、自分の理論であると想定されることにより、正しいものであると強く感じる現象のことです。つまり、他社の人間が開発した商品やそれに伴う技術と比較して、自社における商品や技術を高く評価しがちなことが往々にしてあるということを意味しています。
自前主義から脱却すべき理由
総務省では、デジタル経済の進化に対応するためにコスト構造の変化や価値の源泉が必要であるとしています。従来通り自社の内部だけで企業活動を継続するだけであれば、デジタル経済の変化に対応できないと発表しています。
「オープン・イノベーション」が重要となってきている。オープン・イノベーションとは、「企業が自社のビジネスにおいて外部のアイディアや技術を更に多く活用するとともに、利用していないアイディアを他社に活用させるべきということ」を意味する。
引用:第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0(総務省)
自前主義から脱却すべき理由には次のような点が挙げられます。
- 新しいリソースが必要
- アイデアの多様性
- 顧客満足度の向上
新しいリソースが必要
他社の人間による新しいアプローチや視点、ノウハウ、技術などにより市場内において競争優位性を持てる場合があります。さらに、新しいリソースを導入することにより自社の商品やサービスに付加価値をつけることも可能です。
アイデアの多様性
自前主義では企業内で新しいアイデアを発案する際に限界に達する場合があります。オープンイノベーションはさまざまなバックグラウンドを持つ専門家がアイデアを提供することにより、これまでなかったようなアイデアが生まれる可能性があるのです。競合他社と差別化をするためには新しいアイデアが必要になる場合があり、自前主義から脱却すべき理由の1つとなります。
顧客満足度の向上
オープンイノベーションを通して、より適切な技術を活用して顧客に商品やサービスを提供できる場合があります。顧客のニーズにあった商品やサービスを提供することにより顧客との関係を強化でき、顧客満足度の向上につながるのです。
オープンイノベーションとは
オープンイノベーションとは、組織内のリソースだけでなく組織外のサービスや技術などを駆使することによってイノベーションを促進する一連のモデルです。未来の予測がむずかしい現代において、社内環境下だけではお客のニーズに追いつかないことから企業は常に新しいチャレンジが求められます。そこで組織外のリソースを活用するオープンイノベーションの需要が高まっているのです。
オープンイノベーションの重要性が高まる背景
オープンイノベーションの重要性が高まる背景には次の要因が考えられます。
- プロダクトライフサイクルの短縮化
- 顧客ニーズの多様化
- 人材確保のむずかしさ
プロダクトライフサイクルの短縮化
近年ではIT技術革新やグローバル化の促進などにより、市場競争が年々加速しています。そのためプロダクトライフサイクルが短縮化している傾向にあるのです。自前主義であればスピーディーな製品開発ができず、市場競争に勝てない可能性があります。そこで、最新の技術を活用できるオープンイノベーションの重要度が増しているのです。
顧客ニーズの多様化
オープンイノベーションが必要な理由として、顧客ニーズの多様化が挙げられます。従来では商品やサービスを提供するにあたって、品質の高くコストが一定突出していれば購入されやすいことが一般的でした。しかし、商品やサービスの種類が増えインターネットの普及によりさまざまな情報が出回る時代となり、顧客のニーズは多様化かつ複雑化しているのです。
さらに、顧客ニーズは常に変化することから社内だけのリソースを活用している場合は偏りが発生してしまい、十分にお客のニーズを満たすことができなくなっています。オープンリソースでは社外のリソースを活用することによって、自社では得られないような他社の動向や技術を得ることが可能です。今後ビジネスを成長させるためには、社外の技術や知見を導入することによって視野を広げることが重要です。
人材確保のむずかしさ
日本では少子高齢化が続き、多くの企業で人材不足が課題となっています。さらに、働き方改革や働き方の多様性によって今後人材確保がむずかしい状況になる可能性があります。オープンイノベーションを取り入れることによって、外部からさまざまな業務における専門家や起業家を呼び寄せることによって人材不足を補うことが可能です。
オープンイノベーションに関連する要素
オープンイノベーションには次のような要素が関連しています。
- 研究開発
- 人材
研究開発
オープンオベーションを推進する重要な要素として挙げられるのが研究開発です。自社だけで研究開発をおこなう場合は、莫大な資金や時間、人材が必要です。外部の研究開発機能や人材などを活用することによって、スピーディーに新しい商品の開発を進めやすくなります。
人材
オープンイノベーションをスムーズに進めるためには、さまざまな知識やノウハウを持った人材との連携が重要です。外部の人材と連携することによって自社にはないような知見や技術などを導入でき、新しいビジネスを展開するだけでなく従来の商品やサービスに付加価値をつけることにより顧客満足度を高められる可能性があります。
まとめ
日本では従来自前主義と呼ばれる自社のリソースのみでビジネスを推進することが一般的でした。しかし、技術革新やグローバル化が進むことによってプロダクトライフサイクルの短縮化が顕著となっています。そこで、他社の技術やノウハウなどを導入するオープンイノベーションの需要が高まっています。他社のリソースを活用することによって新たな変革を起こすことができるのです。