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営業診断の必要性と改善事例
多くの企業が収益体質(受注金額・件数、Aヨミ・Bヨミ等)の部分しか数値を追えていません。しかし、実際には担当者がうまく提案できていないのが問題なのか、顧客からニーズを引き出すことができていないのが問題なのかなど、営業プロセスを明らかにしなければならないものが多く存在します。
営業診断とは次のような観点で営業活動を観察し、実際に何を改善すればよいのかというポイントを明確にすることです。
- 顧客の心理状態は望むように動いているのか
- 課題に気づき、解決策も理解しているのか
- 営業員がプロとして関係を築けているのか
- ニーズを引き出せているのか
- 将来の課題を察知し、効果的なアドバイスをしているのか
- 機能不全の箇所を特定し、見えるようにしているのか
各項目がどの程度実施されているのか、結果、顧客行動がどう変わっていくのかが、しっかりと見えてくるようになることが重要です。
なぜ営業診断なのか
経営企画や営業企画では次のような課題にぶつかることがあります。
- 何が一番の課題なのか
- 何を最初に改善すべきなのか
- 改善しても成果につながらない
- 部署により考え方が異なり、合意形成できず進まない
営業のボトルネックが特定できず改善点がわからない、特定の改善をおこなうが成果が伴わない、経営層・事業部長・営業部長・現場でそれぞれ考え方が異なり、合意形成できずに取り組みが半年〜1年遅れるなど悩みが尽きません。
営業診断をおこなうことで営業実態の見える化と改善ポイントの明確化を実現することができます。
営業実態の見える化
企業にとってはどの程度の売り上げで、どのくらいのシェアを取るのかということがKGIになります。そして、そのシェアを確保するために必要な認知、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)がどの程度であるかというのがKPIです。
これを組織から個人に落とし込み、個人別のKGIを出し、それを実現するためには誰に何をどのように営業していくかを連動させ、かつ、改善点をを出し、提案に持ち込むというステップを見える化することが重要です。
改善ポイントの明確化
営業チームのKGIには収入金額がありますが、これをフィールドセールスの人数で割ったときの1人あたりが背負うべき責任です。
- 1件あたりの案件単価をどれぐらいの稼働で達成しなければならないのか
- 稼働を確保するために有効案件をどれぐらい進めなければいけないのか
- 定期訪問をしている顧客から何件の課題を発掘できたか
上記のような項目を見える化することで、収入金額は掛け算と割り算で分解できます。分解できるところをすべて分解して営業マンのパフォーマンスを科学するためには、数字を正しく書き出すことが最初のステップです。
数字を出したあとは、制約率や有効案件確率などの率が悪いのか、有効案件数が足りないのかという量と質の問題の特定が課題です。
例えば、活動の質が悪い場合には営業としてのマインドセット、モノ売りからコト売りにするときに伝える姿勢を変えなければいけないところもありますので、この点をスコアリングする必要があります。
当然、ソリューション提案するためには必要な知識レベルも上がるので、eラーニングをスコアリングして知識レベルを可視化し、問題解決力とソリューションセールス力という2つの技能に分け、それぞれに的確な処方箋を与えることも考えなければなりません。
効果的な営業診断とは
効果的な営業診断は見える化して終わりではありません。一般的なアプローチは「できそうかどうか」を判定してわからない状態から「できる」状態に改善していますが、リブ・コンサルティングでは「できているかどうか」を判定し、「できる」にとどまらず「成果が出ている」状態にまで引き上げていることを営業診断としています。
営業組織診断の手順
営業診断は理想と現状のギャップを見ていく過程ですので、あるべき姿基準値がないと良いのか悪いのか判断できません。そのため、あるべき姿を描く必要があり、その測定器としてモニタリング体制を作ってから改善を始める必要があります。
そのため、営業組織診断の手順は次のようになります。
- 診断
- 治療方針決定
- 測定器装着
- 治療活動
- 経過観察・方針見直し
営業診断における考え方
営業診断では、業務全体では「なぜ受注したのか」、「なぜ失注したのか」を考えることにより理想的な営業手法を検討します。そして、個別ではメンバーが理想的な営業手法を取れているのかを観察する必要があります。基準値を設定することで、どこまで実施すべきなのかを明確にすることが重要になってきます。
営業組織診断の改善事例(トップシェアの成熟企業)
今までは予算を握っている現場のキーマンに対して関係構築を密におこない、タイミングが来ると引き合いが来て受注をしていたものという事例で考えてみます。顧客のニーズが減っているわけではなく、なぜか競合に負けているという状態ですので、ここで営業診断をおこないます。
営業診断の結果
営業診断の結果、競合は経営者に直接、提案型営業を仕掛けてくるようになっていたことがわかりました。経営者で予算確保して受注してしまっているので、いくら現場のキーマンに関係構築しても引き合いが来ないため、競合に負けていたという事実があります。
治療方針の決定
今回の場合、商品は悪くないため、営業手法の変更だけで戦えるという診断をおこないました。やり方としては競合と同様、経営者に営業をするという形に決まりました。
そのためには、提案力の向上と顧客との関係性を剥がされないために次のようなサービスエクセレンスを作る戦略を立てました。
- 経営に対する情報提供もおこなう
- メイン商材を経営に刺さるように伝える
- 経営者含めて顧客に寄り添うための設定を作る
営業の仕掛けでは、まずは営業の型を作り込み、その型を土台に新しい工夫のナレッジ蓄積をおこない、営業のレベルを引き上げました。勝ちパターンは一度注力して作り込むことが必要ですので、この点でリブ・コンサルティングが営業支援をいたしました。
営業ステップの詳細化
従来は現場キーマンとお話をして問題点の共有と課題解決をおこなうことで受注していましたが、ここから意思決定者につないでもらい、意思決定者と問題点や購入ハードルの共有を確認し、フレーミングをするうえで差別化と成果イメージを共有してもらうという営業ステップの詳細化をおこないます。
測定器装着
営業手法を変更し、営業ステップを詳細化するうえでの関係構築フェーズを、開拓、面談、信頼関係構築、プロポジション、パートナーの5つの段階まで定義し、フェーズを上げるためのアクションにするためのKPIも決めました。
測定器の装着とは、あるべき姿を描いたときに、1つ1つの定義は何なのか、上げるためのアクションは何なのか、そのKPIは何かを正しく描き切るということです。
組織体制の変更
活動としては、まず組織体制を変える必要があります。今までどおりのモノ売りだけではなく、次のようなキャリアステップを設計していきます。
- 営業マンが新しい売り方を開発する
- 今までどおりの営業の量を頑張る
- 効率よく回していく
- 管理職になる
今までは管理職になるルートしかなかったものを、今のやり方でうまくいってる人はそれをしっかりやりきってもらう、新しい売り方を作るなどの形で組織体制を変更していきます。
必要なスキルの育成
組織体制に加え、営業マンに落とし込むためのスキル育成の型も作りました。新人、一般の営業、ユニットリーダーやアントレプレナー、営業部長のようにコース別研修と、一部の本当に成長が早い方のために選抜研修を用意しています。
研修による落とし込み
営業の型を作り、ステップを踏んで成長する流れを実装していくので、あとは研修に落とし込む必要があります。この研修もやって終わりではなく、研修後に現場で実践し、成功事例や失敗事例を次の研修で共有する形で落とし込みをおこないます。
パイロットチームを起点にした展開
大きな企業では、全国で一斉におこなうことは難しいため、比較的新しい売り方に抵抗がない方を組織内で見つけて、アーリーアダプターと一緒にパイロットチームを作って実践してみます。
うまくいきそうな動きが見えてくると、今度はアーリーマジョリティーが動きに参画し、組織の半数が動き始めると残りの層も同様に動き出してくるということがあります。
まとめ
営業変革をおこなうには、営業フローが正しいのか、能力・ツール・組織は十分なのか、状況を理解したうえで何を揃えていくのかを描き、モニタリングできる状況を作ることが重要です。
実施するうえでのポイントは次の3つの役回りです。
- 営業ができるプレイヤー役
- 仕組み・組織作りができる監査役
- インストラクターができるトレーナー役
上記の3つすべてができる方は非常に少なく、実施できるメンバーをアレンジして企画部門を作る、協力体制を作る体制が求められます。