2023.08.10

マテリアルズ・インフォマティクスとは

マテリアルズ・インフォマティクスとは、情報科学を使って材料開発の効率を高める取り組みです。具体的には、材料に関するデータを収集し、それを分析・解析することで新たな材料の特性や性能を予測、設計する手法を指します。材料の特性には組成や結晶構造、物理的な性質などが含まれ、これらを理解することで優れた材料の開発が可能となります。

日本では工業素材の需要が高く、製造業が重要な産業の1つです。そのため、マテリアルズ・インフォマティクスの導入が産業界にて注目されています。高性能材料の開発や競争力の強化、製品開発のスピードアップが期待されており、これによって日本の産業がさらなる発展を遂げることが期待されています。

マテリアルズ・インフォマティクスとは

マテリアルズ・インフォマティクスとは、機械学習をはじめとした情報科学を活用して金属材料や有機材料など材料開発の効率を高める取り組みです。マテリアルズ・インフォマティクスは、エネルギー効率の向上や軽量化、耐久性の向上など、さまざまな産業分野での革新的な材料開発に応用されています。特に、バッテリーや触媒、医薬品など、高度な機能が求められる分野での研究が進んでいます。

マテリアルズ・インフォマティクスが注目された背景

AIをはじめとしたIT技術が向上したことから、マテリアルズ・インフォマティクスが注目されるようになりました。これらの技術の進化によって、大量の材料データの収集や解析が容易になり、材料の性質や特性を高精度に予測することが可能になりました。

マテリアルズ・インフォマティクスでは、AIが膨大な材料情報を学習し、新しい材料の候補をスクリーニングしたり、既存の材料の性能を最適化したりすることが可能です。さらに、材料のデータベースや知識を効率的に活用することで、材料開発のサイクルが大幅に短縮され、時間とコストの削減につながります。

マテリアルズ・インフォマティクスの需要が高まる理由

日本でマテリアルズ・インフォマティクスの需要が高まる理由として、工業素材が輸出産業の約20%を占めていることが挙げられます。日本は材料開発のプロセスをスピードアップするために、マテリアルズ・インフォマティクスが重要です。

参考:マテリアル革新力強化のための政府戦略に向けて(マテリアル革新力強化のための戦略策定に向けた準備会合)

マテリアルズ・インフォマティクスは、材料のデータ解析や予測にAIや機械学習を活用することで、材料開発のスピードアップや効率化を実現します。膨大な材料データから最適な材料を選定したり、材料の特性を高精度に予測したりすることが可能です。これにより、新たな高性能材料の発見や既存材料の改良が加速し、製品開発の時間短縮やコスト削減につながります。

マテリアルズ・インフォマティクスにおける課題

マテリアルズ・インフォマティクスには次のような課題があります。

  1. データサイエンティスト不足
  2. データ不足

データサイエンティスト不足

マテリアルズ・インフォマティクス導入にあたって、データサイエンス不足が大きな課題です。マテリアルズ・インフォマティクスは情報科学を活用して材料開発を進める手法であり、大量の材料データを分析・解析することが不可欠です。しかし、データサイエンスや機械学習の専門知識を持つエキスパートが不足しているため、効果的に活用することがむずかしい状況です。

データサイエンス不足を解消することで、マテリアルズ・インフォマティクスの効果的な導入が可能となります。新たな材料の発見や性能向上が加速し、産業界の競争力や技術革新が促進されることが期待されます。政府や産業界がデータサイエンス人材の育成や導入支援に力を入れることで、この課題を克服していく必要があります。

データ不足

マテリアルズ・インフォマティクスを導入するにあたって、膨大な実験結果や素材に関する十分なデータが必要です。しかし、十分なデータを集めきれていないケースが少なくありません。特に、新しい材料や製品を開発している場合や特殊な材料の研究などでは、試験や実験が非常に高コストや時間がかかることがあり、データ収集がむずかしい場合があります。

このような課題に対処するために、既存のデータを活用したり、シミュレーションや予測モデルを用いてデータを補完する手法が注目されています。さらに、公共のデータベースや研究機関との連携、産学連携を進めることで、データ共有の仕組みを整備し、データの取得や利用を促進することが重要です。

マテリアルズ・インフォマティクスの事例

マテリアルズ・インフォマティクスは材料の開発や開発期間の短縮など、さまざまな目的にて導入されています。従来の実験ベースの材料開発では、膨大な時間とコストがかかっていましたが、マテリアルズ・インフォマティクスの導入により、高度なデータ解析と機械学習によって効率的な試行が可能になりました。これにより、新しい素材の探索や開発期間の大幅な短縮が実現できます。

また、材料の特性を詳細に理解することができるため、製品の品質向上や持続可能性の確保にも貢献しています。特定の条件下での材料の振る舞いをシミュレーションすることで、製品の信頼性を向上させることが可能です。

横浜ゴム

横浜ゴムは、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することでゴム材料の開発技術を進めてきました。シミュレーション技術やデータを分析したデータやAIによる情報を導入したものです。具体的には、数値シミュレーションによってさまざまなゴム材料の特性を予測し、効率的な素材の組成を見つけ出すことが可能になります。

また、大量の実験データや文献情報をデータベース化し、AI技術を活用して関連性を解析することで、新しい材料の開発や性能向上が進むというメリットがあります。これにより、横浜ゴムは製品の品質向上や持続可能な製品の開発に成功し、市場競争力を強化していることが特徴です。

参考:横浜ゴム、マテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料開発技術を確立(横浜ゴム)

旭化成

旭化成は革新的な素材開発や開発期間の短縮を目的としており、統計解析やAIを活用することでマテリアルズ・インフォマティクスの導入を進めています。具体的には、数値シミュレーションやデータ解析によって材料の特性を予測し、新たな素材の組成を探索するためのプロセスを効率化していることが特徴です。また、大量の実験データや文献情報をデータベース化し、機械学習を活用して材料の性能と組成の関連性を分析することで、より優れた素材の開発を進めています。

参考:マテリアルズ・インフォマティクス(MI)(旭化成)

まとめ

マテリアルズ・インフォマティクスは、情報科学を用いて材料開発を効率化する取り組みです。材料開発には多くの試行錯誤が必要であり、従来は実験と試作を繰り返すことが主流でしたが、マテリアルズ・インフォマティクスではデータの分析や機械学習、シミュレーション技術を活用することで、その手間や時間を大幅に削減します。

多くの企業や研究機関がマテリアルズ・インフォマティクスに取り組み、新たな革新的な素材の発見や材料開発のスピードアップが進んでいることが特徴です。これによって、自動車や電子機器、再生可能エネルギーなど、さまざまな産業でより高性能かつ持続可能な素材が活用され、社会全体の持続的な発展につながります。

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