2022.11.02

レガシーシステムからの脱却

日本の企業が運用しているレガシーシステムの多くが、ビジネス環境の変化に対応できていない状況です。システムを構築した技術者が退職や離職することによって人材不足となり、最新の技術を導入できないことが少なくありません。さらに、既存資産を延命するために保守運用のコストが高額となっていることも大きな課題となっています。

経済産業省では2025年までレガシーシステムを使い続けると、日本の経済が停滞することを懸念しているため、早い段階でレガシーシステムからの脱却が求められます。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、オフコンやメインフレームなど、ブラックボックス化や複雑化が進み柔軟性に欠けることから最新技術を導入しにくいシステムのことです。2018年に経済産業省が公表したDXレポートでは、多くの企業がレガシーシステムを抱えていることを指摘しています。レガシーシステムの運用や保守作業に人材が割かれていることも大きな問題となっています。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)

レガシーシステムからの脱却が必要な背景

レガシーシステムからの脱却が必要な背景には次の点が挙げられます。

  1. 最新技術の導入ができない
  2. 保守費用がかかりすぎる
  3. 障害が多発しやすい
  4. 2025年の崖
  5. ブラックボックス化しているシステムへの対応
  6. グローバル化に対応

最新技術の導入ができない

レガシーシステムは一般的に最新技術に対応していないため、デジタル競合において敗者となる可能性が高くなります。そのため、DX化が推進されている現代において、競合他社に勝てない危険性があります。

保守費用がかかりすぎる

レガシーシステムは、複雑化している可能性が高いことから保守費用が高額になる懸念点があります。複雑化または誇大化したシステムにおいて、データベースをアップグレードしたり、セキュリティを維持したりするだけでも莫大な費用になります。

障害が多発しやすい

システムが複雑化することから、思わぬところにシステム障害が発生する場合があります。システム障害によって、業務に支障がでるだけでなくデータ流出の危険性があるため通常よりも保守費用がさらに高くなる可能性があります。

2025年の崖

経済産業省が発表したDXレポートにおいて、レガシーシステムを使い続けることで2025年までに日本の経済が停滞するとしています。このことを2025年の壁とよび、IT技術の進歩やビジネス環境に合わせられなくなることから、国際競争力が低下すると懸念しています。

日本では多くの企業が新しいシステムを導入することにより、これまでにないビジネスモデルを生み出しています。今後は市場における競争を勝ち抜くためには、新しいシステムが重要です。

古いシステムは新しいシステムと比べて運用コストがかかり、セキュリティ面の不安など企業の足かせとなっているケースが多いのです。

ブラックボックス化しているシステムへの対応

レガシーシステムはブラックボックス化する傾向にあります。一部の担当者しか業務プロセスを把握していないことから、担当者が退職をしたり、休んだりすることにより業務の継続ができなくなるのです。

ブラックボックス化を防ぐためには、担当者が在籍している間にシステムの見直しが必要です。担当者がすべて退職してしまったあとでは、業務プロセスをゼロから構築しなおす必要があります。

グローバル化に対応

グローバル化が進んでいますが、これまで日本市場の特融である守られた環境の中で経営をしてきた日本にとって海外市場に出るのは容易ではありません。そこで、グローバル化に対応したビジネスモデルやシステムが必要になります。海外市場で勝ち残るためには、迅速、かつ、詳細に業務情報を収集することにより活用することが求められます。

レガシーシステム脱却のための課題

レガシーシステム脱却のためには、次のような課題が挙げられます。

  1. 現状のシステムを開発した人がいない
  2. コスト面においての問題がある
  3. 仕様のすり合わせがむずかしい
  4. リスク管理が容易ではない

現状のシステムを開発した人がいない

既存のシステムを開発した従業員が、現在は退職しているケースがあります。システムの仕様を理解している人がいないことから、システムがブラックボックス化している状況です。移行をする時間や人材が想定よりも必要であり大きな負担となり、レガシーシステムから脱却できない理由となっています。

コスト面においての問題がある

システムを新しくするためのコスト面で厳しい状況である企業は多く、システムがブラックボックス化していることから、データの移行に必要な人的コストも負担となっています。移行したあとも不具合がないかどうか入念に確認する必要があり、場合によってはシステムの設計から始めなければいけない可能性もあります。

仕様のすり合わせがむずかしい

レガシーシステムの設計書は既にない、もしくは最新の状況でないことが一般的です。そのため、ベンダー企業との仕様のすり合わせがむずかしくなる懸念点があります。仕様を十分に理解していないと、品質低下やスケジュール遅延などの問題が発生しがちです。

リスク管理が容易ではない

通常のシステム再構築のように仕様や要件が明確ではないことから、リスク分析を十分にできない可能性があります。リスクを抽出しきれないことで、スケジュールが遅れたり、品質問題につながったりとさまざまなトラブルが発生しがちです。

レガシーシステムから脱却する方法

レガシーシステムから脱却するためには次の方法が挙げられます。

  1. モダナイゼーション
  2. マイグレーション
  3. クラウド活用

モダナイゼーション

モダナイゼーション(Modernization)とは近代化を意味しており、古いシステムを現在のテクノロジーやユーザーニーズなどに合わせて刷新することです。特徴として、現在運用しているシステムに蓄積されているデータやプログラムなどは消す必要がない点です。

マイグレーション

マイグレーション(Migration)とは、古いシステムを新しいシステムに移行していくことです。ゼロから新しいシステムを構築するわけではないため、開発費用を抑えることができます。さらに、これまでに培ったノウハウなどはそのまま引き継ぐことができ、新しいシステムをゼロから覚える必要もありません。

クラウド活用

モダナイゼーションやマイグレーションを効率的に進めるためには、クラウドの活用が重要です。レガシーシステムはほぼオンプレミス型であることから、運用や保守作業において多額なコストがかかります。そこで、クラウド活用をすることで保守作業が不要になることからコストや手間をかける必要がありません。

クラウドを導入することによって、企業にとって負担をかけることなく最新のシステムを活用できるようになります。

まとめ

レガシーシステムを運用し続けていると最新技術に対応していないことからデジタル競争において勝てなくなるリスクがあります。さらに、保守費用が高額になったり、技術が属人化したりするなどさまざまなデメリットがあることからレガシーシステムの脱却が重要です。レガシーシステムから脱却するためにはさまざまな手法があり、それぞれの企業で適したやりかたを選び、生産性を上げることが必要です。

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