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ジョブ型雇用の事例
日本では年功序列や終身雇用制を含めたパートナーシップ型雇用が主流です。しかし、欧米のようなジョブ型雇用を導入する企業が増えています。人事評価を大幅に改革し、これまでのパートナーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更または融合させているのです。目的は企業によってさまざまで、グローバル化や多様な働き方への対応、従業員の能力をより評価するなどが挙げられます。
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ジョブ型雇用の目的
ジョブ型雇用は特定の業務を遂行できる能力を持つ人材を採用する雇用方法です。そのため、勤続年数や経験などが評価に含まれません。さらに、時短勤務やフルリモートワークなど多様な働き方にも対応しています。外部環境に対応しつつも、従業員一人ひとりの能力やスキルを伸ばし適切なポジションに就くことによって生産性の向上、業務効率化などを目指します。
ジョブ型雇用の事例
富士通
富士通では、一般従業員45,000人を対象にジョブ型人事制度を導入しました。さらに、対象をすべての従業員に拡大しています。富士通には「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」といったパーパスがあり、社内外において常にイノベーションをもたらすことを目標としています。
そのため社外からも業務に必要な人材を最適な部署にて配置をすることでイノベーションをもたらし、さらに従業員一人ひとりのキャリアオーナーシップにおける挑戦のサポートもおこなっているのです。
従業員一人ひとりの挑戦と成長を後押しする「ジョブ型人材マネジメント」の考え方に基づく新たな人事制度を、国内グループ(一部を除く)の一般従業員45,000人向けに導入しました。2020年4月に制度導入した幹部従業員とあわせて、対象をすべての職層に拡大します。
引用:富士通と従業員の成長に向けた「ジョブ型人材マネジメント」の加速(富士通)
三菱ケミカル
三菱ケミカルでは2020年10月に年功序列から職務内容を評価する人事制度に大改革をして、管理職に対してジョブ型雇用を導入しました。新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークをはじめとした多様的な働き方に対応し社内での異動を公募制にするなど1年間でさまざまな変化が見られるようになりました。
2021年4月からは、ボーナスや報酬額を職務に対する成果を基準とした人事制度で決められるように変化しました。年功序列を廃止したことにより勤続年数や経験などの要素が評価されないようになったのです。上司との面談数を増やして、従業員一人ひとりのキャリア形成のサポートも2021年からの人事制度に含まれています。
双日
双日では、子会社の双日プロフェッショナルシェア(SPS)においてジョブ型雇用を導入しています。35〜55歳の総合職従業員が対象であり、本人の希望や同意があれば子会社に移籍が可能です。多様な働き方に対応しており、週2日は副業や家業、起業、兼業などが可能であり、フルリモートやフルフレックス制に対応しています。
このように、双日では条件に該当する従業員に対して希望があればジョブ型雇用を導入している子企業に移籍をすることで、従業員がしたいことをサポートしているのです。
総合商社の双日は、2021年に新企業「双日プロフェッショナルシェア」(以下、SPS)を設立しました。SPSは、35歳〜55歳の希望する双日従業員がやりたいことを支援するプラットフォームで、ジョブ型雇用を採用。週2日は双日以外での勤務が可能で、さまざまな仕事を経験することができます。
引用:週3日勤務で副業OK。ジョブ型雇用で「従業員のやりたいこと」を支援する双日の、新たな成長戦略とは(d’s JOURNAL)
KDDI
KDDIでは2021年以降すべての総合職を対象にKDDI版ジョブ型人事制度を開始しました。従業員一人一人の能力を最大限に引き出し、成長をサポートすることが目的です。導入背景として技術革新や自ら生き抜く能力を身に着ける必要がある時代になったためです。さらに、人材不足により若手従業員の数が減り、挑戦意欲低下の傾向がありました。さらに、給与が安定していることから成長しにくい環境があったのです。
そこで、従業員一人ひとりが成長できるようなジョブディスクリプションを設定し、KDDI版ジョブ型を導入しました。
KDDI版ジョブ型では、「専門能力」+「人間力」を兼ね備えた人財を育成。
「KDDIらしさ」を大切にしながら、「ジョブ型の長所」も取り入れています。
引用:KDDI版ジョブ型人事制度(KDDI)
日立製作所
日立製作所がジョブ型を導入したのは約10年前に、グローバル化をしたことが挙げられます。世界の市場と相対して社会イノベーション事業においてグローバル化に成功したのです。30万人在籍している従業員のうち過半数が外国人であり働く場所が異なることから、メンバーシップ型では正しい評価ができないのです。
そのため、日立製作所は自然とジョブ型雇用を導入する必要がありました。日本では、在宅ワークや時短勤務をすることで介護や育児と両立できるなど多様性のある働き方に対応する必要があります。さらに、新型コロナウイルスの影響によりテレワークが増え、プライベートを大事にする人が増えました。
このように外部環境の変化に対応するためにも、ジョブ型雇用が適切であるとしています。
COVID-19の影響で通勤がグッと減り、テレワークになるなど、働き方はガラリと変化しました。従業員がワークとライフのバランスをとても大切にしていることも感じます。そうした中で、職務を明確化・限定し、その内容や遂行状況で待遇等を決定する「ジョブ型」が、今の時代にフィットしていると思います。
引用:ジョブ型人財マネジメント:採用・インターンシップ(日立製作所)
資生堂
資生堂ではPEOPLE FIRSTを掲げており、人材がもっとも大切であり人材育成に投資し続けています。強い個が企業の成長につながることを基準として、ジョブ型人事制度を導入しているのです。ジョブ型人事制度をより効果的におこなうために、グローバル共通の評価制度や育成プログラムを活用しています。このことにより、従業員一人ひとりが成長しやすい環境作りを進め、キャリア開発のサポートをおこなっています。
三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険では、先行きの見通しがしにくい環境においてDXを導入することにより強固な人財基盤を構築していくことが必要となっていました。そこで従来のメンバーシップ制度の良い部分を残しながら、ジョブ型雇用を導入しました。
ジョブ型雇用のみをおこなう専門社員を新設し、高度な専門領域においてスキルの高い従業員を雇うようになりました。専門社員の新設をするとともに、人事考課制度や目標管理などの見直しを並行しておこなったのです。
MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険株式会社(社長:原 典之)は、2021年度から順次、ジョブ型を取り入れたハイブリッド型の人事制度への改定を行います。
本改定では、目標管理・人事考課制度の見直しや高度専門領域を担う従業員区分の新設など、求める職務・能力や達成すべき目標を明確にし、成果をより重視するジョブ型の要素を人事制度に導入します。
引用:三井住友海上、ジョブ型を取り入れたハイブリッド型の人事制度へ改定(日本経済新聞)
まとめ
日本ではパートナーシップ型が現在でもメインですが、ジョブ型人事制度を導入する企業が増えています。多様な働き方や新型コロナウイルスなどの外部環境の変化などへの対応や、年功序列を廃止し、従業員一人ひとりのスキルを伸ばすキャリアプランの支援をしている企業は少なくありません。