2023.02.13

ジョブ型雇用の背景

ジョブ型雇用とは、特定の業務に対して必要なスキルをもった人材を雇用することです。日本では長らくメンバーシップ型雇用が導入されており、現在でもほとんどの企業がメンバーシップ型雇用に対応しています。しかし、ジョブ型雇用導入が進む背景には、技術革新が進み高いスキルをもった人材の雇用を必要としていることが挙げられます。さらに、経験年数ではなく個々のスキルを評価しキャリア支援をしている企業が増えているのです。

ジョブ型雇用とは

日本では終身雇用や年功序列を含めたメンバー型雇用を導入している企業がほとんどであり、近年ジョブ型雇用を導入する企業が増えていますがメンバーシップ型雇用を活用している企業がほとんどです。

しかし、国際的な競争力を勝ち抜くことや多様な働き方への対応、技術革新が進むなか、高いスキルをもった従業員が必要であることからジョブ型雇用導入の需要が高まっています。さらに、従業員一人ひとりの能力を評価することで、企業に貢献しながらキャリア支援をしているケースは少なくありません。

ジョブ型雇用に関して具体的な定義はされていないのですが、日本経済団体連合会では、特定の業務において役割を遂行できる能力を持っている人材を社外から採用、または社内で公募をすることだと説明しています。

特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと
引用:採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書「Society 5.0 に向けた大学教育と 採用に関する考え方(一般社団法人日本経済団体連合会)

ジョブ型雇用の背景

ジョブ型雇用の背景として次の要素が挙げられます。

  1. 終身雇用制度の崩壊
  2. ワークライフバランスの浸透
  3. ダイバーシティの導入
  4. 人材不足

終身雇用制度の崩壊

長年日本では終身雇用制度を導入している企業が一般的でした。しかし、近年、終身雇用制度は崩れつつあります。終身雇用制度が崩れるきっかけとなったのはバブル崩壊による不況です。長期間勤めている従業員が増え人件費が高騰したことにより、企業に貢献している度合いで評価する企業が増えました。

近年では少子高齢化が進み労働人口が減ったことから、従業員一人ひとりの能力を評価する動きが増えています。そのため、自分の能力をより高く認めてくれる企業や成長できる環境にある企業に転職する従業員が増えています。

ワークライフバランスの浸透

日本ではプライベートの時間や自分の時間を大切にするワークライフバランスが浸透しています。そのため、単に長期間働くだけでなく自分の時間を確保する動きがあるのです。企業側としても、従業員が過労により病気になったり、過労死やうつ病のリスクを回避したりする必要があります。さらに、ワークライフバランスを充実させることにより、離職率を下げ人材の確保が必要です。従業員の満足度が上がることにより、生産性の向上も期待できます。

ダイバーシティの導入

さまざまな働き方をするダイバーシティができる企業が一般的となりつつあります。ダイバーシティとは、年齢や性別、国籍、障害などさまざまな人種を受け入れることにより従業員一人ひとりの能力を企業で発揮できる場がある環境のことです。つまり、従業員一人ひとりの能力を判断基準としており、ジョブ型雇用と目的が一致しています。

人材不足

DXやAI、5Gなど技術革新が進む現在において、それぞれに対応できる高いスキルを持った人材が必要です。しかし、少子高齢化が進む日本において必要な人材を採用することがむずかしくなっています。さらに、採用費用や育成費用など高いスキルの人材を育てるためには費用がかかります。そこで、ジョブ型雇用を導入することで高いスキルをもった人材を採用しやすくなるのです。

ジョブ型雇用では、指定した業務以外に対応する必要がなく、得意な分野のスキルをさらに高められる環境にあります。このように、ジョブ型雇用では企業に必要な高いスキルを持った人材を育てる環境があるのです。従業員にとっても得意なスキルを活かせ、さらにスキルアップが可能です。そのため、キャリアップにもつながります。

ジョブ型雇用の特徴

ジョブ型雇用には次のような特徴が挙げられます。

  1. 即戦力の人材を採用できる
  2. 働き方の多様化に合っている
  3. 業務効率化できる
  4. 専門職の人材を育てる環境にある
  5. 国際的な競争力を高められる

即戦力の人材を採用できる

ジョブ型雇用は特定の業務に対応できるスキルを持っている人材を雇用します。そのため、技術革新が進むなかで企業が必要とする即戦力の人材を採用できる点が特徴です。従業員にとっても、自分の能力を最大限に活かす環境がありジョブディスクリプションに記載された業務以外に対応する必要がないためスキルを磨ける環境であり、スキルに対して評価されるなどさまざまなメリットがあります。

働き方の多様化に合っている

ジョブ型雇用は特定の業務に対して対応できる人材を採用することから、働き方の多様化に合っています。業務を遂行できれば、子育てや介護が必要な人材でも短時間で採用される可能性があるのです。このほかにも、人種や年齢、性別などにかかわらず能力を評価するダイバーシティが浸透しており、ジョブ型雇用の需要が高まっていくと見られています。

業務効率化できる

業務を遂行できる能力のある人材を採用することから、育成や研修などが不要です。さらに、就業する人材にとってみても自分の能力を活かせる仕事だけをできるため満足度が向上します。このことにより、モチベーションが上がり、生産性向上が期待できるため業務効率化につながります。

専門職の人材を育てる環境にある

ジョブ型雇用において採用された人材は、ジョブディスクリプションに記載された業務内容や権限、業務範囲、目標などをもとに業務を進めるため自身のスキルを磨きやすい環境にあります。さらに、モチベーションが上がりやすいことから生産性が上がり、能力を評価しやすくなります。これらのことから、ジョブ型雇用では専門職の人材を育てる環境にあります。

国際的な競争力を高められる

スイスのビジネススクールが発表している世界競争力ランキングでは、日本は1989年から1992年まで4年連続で1位を記録していたのですが、2020年ランキングでは34位と低迷しています。海外からIT企業が日本市場に参入しており、高いIT技術を持った人材が国際的な競争力を高めるために必要です。ジョブ型雇用は日本の課題解決にもつながるのです。

ジョブ型雇用を導入する手順

ジョブ型雇用を導入する場合は主に次の手順となります。

  1. 職務内容の決定
  2. 職務記述書の作成
  3. 評価制度の決定
  4. 社内への周知

職務内容の決定

ジョブ型雇用を進めるためにはまず導入する職務内容を具体的に定義することが必要です。職務内容のほかに職務の目的や責任の範囲、担当者、勤務地などを正確に説明することが重要です。既存の職務であれば担当者とコミュニケーションを取ることによって認識の違いをなくすことが必要です。

職務記述書の作成

ジョブ型雇用を導入する職務内容が定義できたら、ジョブディスクリプションを作成します。ジョブディスクリプションには職務内容と職務要件を記載する必要があります。職務内容はジョブディスクリプションを見ただけで誰もが理解できる内容が必要で、職務要件とは職務を遂行するために必要なスキルや経験、ノウハウなどが含まれます。

評価制度の決定

ジョブ型雇用をスムーズに運用するためには、年功序列での評価ではなく職務の能力を基準として強化する制度が必要です。さらに、採用した人材がよりスキルを高められるような適切な評価が必要です。高い評価が得られる成果に見合った給与体系があることにより、従業員の満足度が高まり長期間高いスキルを持った従業員を確保できるのです。

社内への周知

ジョブ型雇用は従来のメンバーシップ型雇用とは大幅に特徴が異なります。そのためジョブ型雇用制度を導入することや詳しい明細などを社内へ周知することが重要です。既存の従業員と不公平感が発生しないような説明をすることが重要です。

まとめ

職務を遂行できる人材を雇用するジョブ型雇用の需要が高まった理由として、国際社会においての競争に勝つことや技術革新が進むことで必要なスキルが高まっていることが挙げられます。さらに、従来の勤続年数ではなく個々の能力を評価する企業が増えているのです。個々の能力を伸ばしやすい環境づくりをすることによって、企業への貢献度が高まるほか、従業員一人ひとりのキャリア支援をしている企業も少なくありません。

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