2022.07.20

経営ダッシュボードの事例からみる課題

企業経営は日々膨大なデータを生み出します。これらの情報を適切に管理し、最大限経営に役立てる姿勢はとても重要です。しかし、データ形式が統一されていなかったり、集計のための時間と労力が足りなかったりすると、貴重なデータを有効に活用することができません。

そのような場合は、社内のさまざまな情報を整理し、経営ダッシュボードで管理する方法が有効です。組織の状況や必要な情報によって導入すべき経営ダッシュボードの形式は異なるため、自社に合った情報収集・管理のシステムを構築することが大切です。

経営ダッシュボードとは

経営ダッシュボードとは、データ活用の課題を解決する、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)のひとつです。ビッグデータのなかから重要な情報を統合し、ピックアップするので、会社の経営状況を一目で把握することができます。経営ダッシュボードは、スピードと正確さが求められる経営判断にとってなくてはならない存在なのです。

経営ダッシュボードを導入した企業の事例

経営ダッシュボードは、すでに多くの企業で導入されています。さまざまな情報を活用した高度な経営戦略が重視されるなか、経営ダッシュボードの重要性は広く認識されています。特に、大規模な組織を抱える企業や、扱う情報が膨大かつ複雑な企業において、経営ダッシュボードの有効性は高まります。必要なデータの収集、分析が容易になることで、経営判断の迅速化から業務時間の短縮まで、さまざまな効果が報告されています。

日清食品

日清食品ホールディングス株式会社は、2008 年にホールディングス制に移行したことで誕生しました。国内だけでなく、米州、中国・香港、アジア、EMEA の海外 4 地域を、グループ横断的に管理していく必要が出てきたことから、経営ダッシュボードの導入に踏み切りました。導入した経営ダッシュボードは、​​日本マイクロソフト社の「Power BI」です。社内で使用している基幹システムとの連携を重視して選定しています。

Power BIによって、各事業会社ごとのデータが標準化され、可視化できるようになりました。それによって、意思決定の正確さや、各事業会社に向けた指示の迅速性が高まり、経営判断に役立っています。また、経営層以外の現場においても、業務のなかで過去の事例との比較や分析に積極的に取り組む動きが見られるようになりました。

参考:日清食品ホールディングス株式会社様への導入事例(株式会社ジール)

株式会社デジタルアイデンティティ

株式会社デジタルアイデンティティでは、情報管理が属人化している点が課題になっていました。エクセルでのレポート作成業務に膨大な時間を取られてしまうことや、レポートフォーマットが統一されていないことから、レポートの質にも課題を抱えていました。

このような課題を解決するため、同社は経営ダッシュボードの導入を決定しました。採用したのはSalesforce社の「Datorama」です。

導入後、それまで月に1000時間を超えていたレポート作成時間を月400時間まで削減することができました。また、情報の規格が統一されたことによって社内での情報共有や顧客への情報提供のクオリティが向上しています。

経営ダッシュボードの導入によって、今まで削ることができなかった業務を大幅に削減し、有益な情報を適切にピックアップすることができるようになりました。

経営ダッシュボードの基本

経営ダッシュボードは、経営層による経営戦略の迅速な策定および判断に役立ちます。社内に散在する膨大なデータを分類、整理し、必要なものをピックアップできるので、会社の今をしっかりと認識することができます。

期待できる効果

情報の適切な活用が可能になる

同じデータであってもグラフを用いたり、他データと比較したりすると見方は大きく変わります。経営ダッシュボードでは、ビッグデータから使えるデータを抽出し、扱えるデータとして整理します。迅速な判断を求められる経営層にとって、社内の状況が見える化されていることは大きなメリットです。

リアルタイムに最新情報を把握できる

グローバル化が進んだことにより、社会が変化するスピードはますます早まっています。経営判断にもスピード感と的確さが求められるようになった今、常に最新の情報を得られる体制づくりはとても重要です。経営ダッシュボードは、常にリアルタイムに更新されるため、最新情報に基づいて経営判断ができるようになります。

データの一元管理が可能

従業員によるレポート、顧客アンケート、広告媒体など、データの出どころはさまざまです。経営ダッシュボードは社内で使用しているシステム同士をつなぎ合わせることができるので、社内のすべてのデータを一元管理することが可能です。会社経営の全体像を把握し、的確な経営判断に役立てることができます。

KPIの追跡が容易

経営目標を達成するためには、KPIを設定しなくてはなりません。KPIを追跡するためには、適切な情報収集や分析が欠かせません。経営ダッシュボード上でKPIが追えるようになれば、経営目標の達成にも貢献します。

導入のポイント

必要な情報を定義する

経営ダッシュボードでは、必要な情報を即座に確認できなければ意味がありません。導入時に、どのようなデータが重要であるか定義付けておくことが重要です。

KPIに基づいたデータがみれるか

KPIに関連した急激なデータ変化をすぐに認識できるようにします。通知条件を決めておくことで、正確かつリアルタイムにKPIを追跡できます。

最新の情報を集計する

変化の早い業界の場合は、経営ダッシュボードのデータが常に最新の情報にアップデートされるタイプのものを選びます。数日前のデータでは正確な判断ができない場合があるので、導入時に確認することが大切です。

異常値に対するアラート機能を設定する

エラーやトラブルなどに気づかず集計を続けてしまうと、データの正確性が担保されません。アラート機能などが搭載された経営ダッシュボードを採用すれば、異常値に対してすぐに対処することができます。

ビジュアルを重視する

データを数値のみで読み解くには、ある程度の知識と経験が必要です。しかし、細かなデータも、直感的にわかりやすいグラフで表示されれば、見る人の理解が早まります。データの種類ごとに一番見やすいグラフ表現を選択することが大切です。

まとめ

組織が大規模化したり、事業内容が複雑化したりするなかで情報の複雑性は高まり、管理の難易度も上がっていきます。しかし、さまざまな情報を正しく活用できれば、一歩先んでた経営戦略を打ち出すことが可能です。

経営ダッシュボードは企業という情報・データの塊を読み解き、可視化するために重要な役割を果たします。自社の業態に適した経営ダッシュボードを導入することで、業務の適正化と経営判断の迅速化を実現できます。

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