- 営業戦略
インサイト営業の事例
インサイト営業はクライアントが把握していない潜在的な課題を見つけて、課題解決を進めていきます。課題解決のために自社製品やサービスのセールスをするのが一般的ですが、セールスをしない場合があります。
ソリューション営業とはクライアントが持つ課題解決といった意味では似た営業方法です。しかし、ソリューション営業は顕在化された課題であることに対してインサイトは潜在的な課題を解決していきます。インターネットが普及したことや高度な分析ができるITツールがあることから、より高度な分析ができるようになりました。
しかし、顧客本人が理解していない課題に関しては分析をすることがむずかしいことから、インサイト営業の需要は今後も高まっていきます。
インサイト営業とは
インサイト営業はクライアントが把握していない課題を発見し、解決に導いていく営業方法です。例えば、顧客が痩せたいと言っていても、見た目を気にしているのではなく実は自分に自信を持ちたいと考えている場合があります。この場合ダイエット食品を紹介するのではなく、自分に自信をもてるような提案が求められます。
インサイト営業の特徴とは
インサイト営業の特徴には次の点が挙げられます。
- 価格競争が起きにくい
- 優良顧客の育成
- 常識を疑うことが重要
- 洞察力が重要
価格競争が起きにくい
インサイト営業はクライアントが理解していない課題を正確に把握することが目的です。そのため、同じことができる企業は多くなく、価格競争が起きにくい特徴があります。課題を提示するほか最も費用対効果の高い解決策を提示することにより、クライアントが納得しやすいビジネススタイルになります。
優良顧客の育成
顧客も把握していない課題を見つけるためには、顧客との信頼関係を構築することが求められます。顧客の立場に立ち、課題解決に向けて全力を尽くすことから優良顧客の育成につながります。
常識を疑うことが重要
ヒアリングをしていて顧客の話すことを鵜呑みにするケースは少なくありません。しかし、顧客が気が付いていない課題を見つけるためには日頃から疑問をもつことが重要です。間違いないと思っていることのなかに、実は修正するべきことがある可能性があります。
洞察力が重要
インサイト営業は顧客が理解していない課題を掘り起こす必要があるため、ヒアリング力だけでなく課題の本質を掴む洞察力が求められます。顧客が見つけられていない課題を見つけるのは決して容易なことではありません。
インサイト営業で成功する共通点とは
インサイト営業で成功している企業には次のような共通点が挙げられます。
- 顧客の行動の理由を把握
- 効率的な分析
- ITツールの活用
- 社会情勢や市場の変化を把握
顧客の行動の理由を把握
顧客が商品が欲しい理由、購入した理由などを正しく把握することが必要です。顧客自身も理由がわかっていないことを把握するには、顧客が話すことをそのまま鵜呑みにするのではなくさまざまな分析が求められます。
効率的な分析
顧客に対してアンケートやインタビュー、ほかにも店舗で顧客の行動観察をすることもあります。アンケートやインタビューでは顧客が理解している内容以外に情報を発掘するのはむずかしいため、さらに行動理由を追求していく必要があります。
ITツールの活用
顧客の行動理由を把握するためには、CRM(Customer Relationship Management、顧客管理システム)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)といったITツールを活用することができます。
CRMで購入履歴や問い合わせ履歴、ECサイトの閲覧履歴などのデータを蓄積することでより顧客の傾向を調べることが可能です。さらに、SFAを使うことにより営業活用においてアプローチ状況や契約内容などのデータ収集を活かすこともできます。
社会情勢や市場の変化を把握
顧客が持つ課題の原因として、社会情勢や市場の変化が関連していることがあります。そのため、社会情勢や市場の状況を把握しておくことで顧客がおかれている状況をより理解することができます。
インサイト営業の事例
インサイト営業には次のような事例があります。
- IKEA
- フォルクス・ワーゲン
- コンビニエンスストア
IKEA
オーストラリアのシドニー店で、女性と同伴で買い物に来た男性を預かるManLandとよばれるサービスを展開しました。オーストラリアでは男性は買い物にいく習慣があまりないことから、女性が買い物をしている間ゲームや読書などをして男性が待てる場所を作りました。
男性がManlandへ行きたいと思うようになり、結果的に同伴女性の訪問客を増やすことに成功したのです。同伴者の男性の不満を解消することにより、売上に繋げる結果となりました。
参考:Manland: IKEA’s day-care for husbands(THE WEEK)
フォルクス・ワーゲン
アメリカでは大型車が流行しているなかで、フォルクスワーゲンは「Think small(小さい車は便利)」と流行とは反対のキャッチコピーを発表しました。このことで、人々は小さい車が必要な場合もあることを認識するようになりました。
現在でも小さい車の代表であるビートルをはじめ、フォルクスワーゲンの需要は衰えることがありません。
参考:Truth in Advertising: DDB and VW Encourage the World to Think Small(American Association of Advertising Agencies)
コンビニエンスストア
コンビニで来店客の調査をした結果、1〜2点を購入する人が多く、購入した商品数が増えれば増えるほどユーザーが減っていることがわかりました。調査の結果多くの商品を買わない理由は、両手で多くの商品を持てない可能性が高いことがわかりました。
そこで、コンビニの店内に買い物かごを置いたところ購入する商品の数が増え売上を上げることに成功しました。
まとめ
インサイトは顧客も気が付いていない意識です。顧客との会話や行動から考えていること、感情などを考えインサイトに気が付く必要があります。インサイトに気が付くことができれば、特別むずかしいことは少なく効果的なマーケティング戦略となります。
インターネットやスマートフォンが普及したことにより、誰でも情報を集められる時代です。しかし、情報が多すぎて課題に気が付いていない傾向にあります。そこで、営業担当者には顧客が気が付いていない課題を見つけて対策案を提供することが求められています。
顧客でも気が付いていない課題を見つけて、対策案を提案するのは決して容易ではありません。しかし、インサイト営業ができると顧客からの信頼感が高まります。さらに、インサイト営業は不況をはじめとした外部環境の変化に強いため、顧客と長期間にわたり取引できる可能性が高まります。