2022.09.22

人材ポートフォリオの作成

人材ポートフォリオとは人材マネジメントを進めるための1つの手法であり、企業の全従業員が人的資源としてどのような能力を持っているのか、どのようなキャリアパスを持っているのかなどを表しています。従業員全員の能力やキャリアパスなどを可視化し的確な配置をすることで企業目標の達成につなげることをいいます。

全従業員をそれぞれの種類にわけることで、定在適所への配置をしたり過不足把握をしたりします。さらに、従業員一人ひとりに対する的確な評価をしたり採用活動においてミスマッチを減らしたりすることも可能です。少子化が続き今後採用活動がよりむずかしくなることから、従業員の能力を最大限に活かすことが求められます。

人材ポートフォリオを作成するポイント

作成するためには次のポイントを意識して進めていくことが大切です。

  1. 経営戦略を基に作成する
  2. すべての従業員が対象になる
  3. 採用の要件定義の見直し

経営戦略を基に作成する

人材ポートフォリオは経営戦略が基盤になっていることが重要です。作成する最終的な目標が企業目標を達成することであるため、経営戦略に反映させることが求められます。つまり、人事部だけでなく企業全体で取り組むことが重要です。

すべての従業員が対象になる

正社員以外にもパートやアルバイト、派遣社員などすべての従業員が対象となります。企業が設定している目標達成が最終的な目的であることから雇用形態に関係なく分析をすることが重要です。従業員全員の能力やキャリアパスを可視化することにより人材マネジメントにつなげることが可能です。さらに、人的資源を見直すことによって採用活用や社員育成の仕方を見直すことが必要な場合もあります。

採用の要件定義の見直し

分析を進めるうえで、企業の目標と採用している人材の特徴が一致していない特徴があります。人材ポートフォリオと企業目標の内容にずれがないようであれば、採用の要件定義を見直すことが重要です。

人材ポートフォリオ作成プロセス

人材ポートフォリオを作成するプロセスは次のとおりです。

  1. 目的設定
  2. 人材のタイプを分析
  3. 従業員をタイプ別に配置
  4. 見直し

作成する目的を設定

人材においての課題を明確にして、ポートフォリオを作成することにより何を目的にするかを設定します。目的を明確にすることで、定期的にその目的に対する進捗状況を確認することが可能です。達成状況によっては、今後の人材マネジメントを変更する場合もあります。

必要な人材のタイプを分析する

次に必要な人材のタイプを分析していく必要があります。タイプは専門職と総合職に分け、さらに個人での技術が高い人やチームワークが得意な人、新しいものを生み出すのが得意な人や既にある事業を運用するのが得意な人などに分けることが一般的です。

この時点で従業員のそれぞれのタイプに過不足がないかを確認します。技術職が足りない、現在は足りているが5年後は不足するなどと企業の人材における課題が明確になります。配置以外にも採用や育成、退出などが必要になる場合は随時対処することが必要です。

今現在企業が必要な人材だけではなく、今後どのような人材が企業が目標を達成するために必要であるかどうかを判断することが重要です。例えば、事務職に配属している従業員が現在事務職においての能力が十分あり、見た目では的確な配置だとします。しかし、実は将来専門分野を極めたいと考えている従業員もいます。このように、将来従業員一人ひとりがどうなりたいかを把握することも重要です。

分析したタイプに従業員を配置する

次に従業員をそれぞれのタイプに分けていきます。ここで重要なのは従業員の主観ではなく信頼性のあるデータや科学的根拠において拝聴することが重要です。そこで、従業員一人ひとりの知識や経験をスキルシートを使って明確にしておくべきです。ふりわけをする担当者によって結果が変わるようでは、的確な作成をすることはできません。

全体の見直しをする

4つのタイプに現在を振り分けた時点で、それぞれのタイプにおいて現在の数値化や可視化をすることができます。そこで、総合職に対して専門職が足りていないなどの人材の過不足を把握することが求められます。また全体を見直してそれぞれの人材が適切な配置をされているかを確認することも重要です。

人材が余剰していたり付属していたりした場合は、配置転換や採用、育成、解雇などの施策をおこないます。ここで注意したいのは人材削減を安易にするのではなく適材適所となっていない人材を減らすことです。すべての従業員を一人ひとりの適正やポテンシャルを活かせるような、配置をすることが重要です。

人材ポートフォリオを作成するときの注意点

人材ポートフォリオを作成するためには次の注意点が挙げられます。

  1. ポートフォリオ作成に時間や予算がかかる
  2. 従業員の意思を反映させる
  3. 適切に運用する
  4. 人材の優遇に使わない

ポートフォリオ作成に時間や予算がかかる

人事担当者だけではなく、企業全体で取り込む必要があることから人材ポートフォリオの作成には時間や予算がかかります。それぞれの部署だけに活用するのではなく、企業全体の人事制度を育成において反映させてこそ効果的です。日本では高齢化社会や少子化が続くことからも、人事戦略が今後さらにさらに求められます。そのためにも人材ポートフォリオを最大限に生かすことが重要です。

従業員の意思を反映させる

従業員一人ひとりにはそれぞれキャリアプランがあることから、人材ポートフォリオには従業員の意思を尊重することが重要です。例えば、マネジメントでキャリア設計をしたいと考えている従業員を、クリエイティブなポジションに分類することにより結果的に両方の人材タイプにおいて過不足が発生することになります。

従業員の意思を尊重しないで分類することによって、従業員のモチベーションを落とすことにもつながります。従業員の意思を反映させるためには継続的なヒアリングをおこない、従業員とのミスマッチを防ぐことが重要です。

適切に運用する

時間をかけて人材ポートフォリオを作成したとしても、適切な運用をしなければ従業員の満足度が下がり、かえって企業の運営に悪い影響が出る場合があります。さらに、導入する理由や内容などを従業員一人ひとりに周知することが重要です。制度を導入するまえに制度説明をするなど、従業員全員が理解した状態で運用することが求められます。

人材の優遇に使わない

人材ポートフォリオは人材の優遇に使うと、劣っていると判断された従業員のモチベーションを落とすことになります。さらに、一部の人材が贔屓されていることがわかると企業全体の雰囲気が悪くなる可能性があります。人材ポートフォリオは、従業員一人ひとりを能力やキャリアプランなどを踏まえた適切な配置をすることが目的であることからおいて優劣をつけるべきではありません。

まとめ

人材ポートフォリオとは全従業員を対象に、タイプ別に分類し現在の適材適所への配置や過不足把握を目的とします。分析を進めることにより全従業員のスキルや能力を把握でき、限られた人材において生産性や効率性を高めることにつながります。

さらに、従業員一人ひとりにあった適材適所への配置をすることにより従業員を活かせることから企業への満足度を高め、採用活動において求職者へのアピールをすることが可能です。企業が現在必要としている人材を明確にできることから、ミスマッチを減らし離職率を抑えることにもつながります。

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