- 組織人事
人材ポートフォリオの導入事例
人材ポートフォリオとは企業が事業活動を進めていくうえで、人材の適材適所を徹底するためのツールです。具体的には自社の従業員が今どれぐらい在籍をしているか、本来は何人ぐらい必要かなどを設定できます。さらに、人数だけでなく人員の配置や人材育成、評価などにおける人事マネジメントにおいては必須のツールです。
それぞれの企業において人体ポートフォリオをさまざまな活用をしています。これからポートフォリオを導入するのであれば、ほかの企業による導入例を参考に人材ポートフォリオ導入目的を設定するのも1つの方法です。
日本では少子化や高齢化による労働力不足や働く環境の変化など、外部環境によりさまざまな環境の変化があります。そこで、人材ポートフォリオを活用することで環境の変化に対応することが重要です。
人材ポートフォリオとは
人材ポートフォリオとは、企業内における人的資源の構成内容を確認した人材マネジメント手法の1つとして挙げられます。従業員一人ひとりのスキルや経験を把握し、適切な配置をしたり現状の課題を理解したりすることで人的資源を最大限に活かして業績向上を図ることが目的です。
人材ポートフォリオが注目されるのは次のような背景が挙げられます。
- 労働者不足
- 働く環境の変化
- 雇用形態の多様化
労働者不足
日本は少子化や高齢化が続いていることにより労働者不足が社会問題となっています。そのため、人的資源を最大限活かす必要があることが人材ポートフォリオが活用される要因の1つです。
働く環境の変化
近年日本ではグローバル化や女性の社会進出、他にも高齢者の積極採用など働く環境が大幅に変化しています。そのため、人材ポートフォリオを活用することによって従業員一人ひとりのスキルや経験を理解し、さまざまな環境に人事体制を構築することが重要です。
雇用形態の多様化
以前の日本では年功序列制度や終身雇用が主流でしたが、現在ではスキルアップを求めて転職するのに抵抗のない環境です。さらに、短時間で労働できる非正規雇用の増加やフリーランスとして独立するなど働く環境が大幅に変わっています。そのため、企業は人材ポートフォリオを活用することにより、従来の雇用形態以外での人材の活用が実現可能です。しかし、逆にいえば従業員が企業に納得ができる環境でないと離職する可能性が高い環境であるといえます。
人材ポートフォリオの活用方法
人材ポートフォリオには次のような活用方法が挙げられます。
- 現状の把握ができる
- 適切な配置をするための分析ができる
- キャリアパスの形成
現状の把握ができる
人材ポートフォリオは従業員のスキルやそれぞれの部署においての人材の過不足など、人材において現状の把握が可能です。そのため、人材ポートフォリオで集めていたデータを分析して、最適な採用活動や人材育成につなげられます。
適切な配置をするための分析ができる
人材ポートフォリオを使って従業員一人ひとりのスキルや経験、キャリアプランなどを把握し適切な配置ができます。例えば、スキルだけでなくキャリアプランなども含めることが重要です。事務能力がある従業員が将来的に技術職に就きたいと考えているとします。この場合は、技術職に異動させた方がモチベーション向上につながる場合があります。
このように人材ポートフォリオは、一時的でなく中長期的なプランにおいての適切な配置が可能です。
キャリアパスの形成
人材ポートフォリオは従業員一人ひとりのキャリアパスの形成にも役立ちます。近年働き方が多様化しており、従業員にとってキャリアプランが異なります。人材ポートフォリオを活用することによって、キャリアパスや適性を把握することによって従業員ごとにあった仕事内容の提案や処遇の提案をしやすくすることが可能です。このことから、従業員のモチベーションがあがり、離職を防ぐことができます。
人材ポートフォリオの導入事例
花王
花王グループでは2021年度より、新しい評価制度や目標管理の仕組みを導入することにより従業員ひとりの挑戦をサポートしています。新しい制度の大きな目的は、従業員一人ひとりの取り組みや貢献を評価することです。導入したのがOKR(Objectives & Key Results)と呼ばれる目標管理の仕組みであり、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)から名づけられています。
OKRの大きな特徴として、自分が目標とする姿を自由な発想で目標を立てていきます。さらに、目標を達成するために具体的にプロセスを設定しその経過を把握することが重要です。企業にとって新たな価値提案をするためには、従業員一人ひとりの発想を変化させることが重要だと花王では考えています。花王におけるOKRとは、自分で考えていることを言葉にして同じ思いをもったメンバーとつながり、頑張りが会社へと広がることにより自分が成長するといったものです。
このほかにも評価制度も一新しています。これまでは、企業からそれぞれの部門に目標設定をしていたのが、従業員一人ひとりのチャレンジを高く評価するようになりました。花王では従業員一人ひとりの成長が企業の成長につながると考えています。
参考:OKR&チャレンジ評価制度(花王)
サイバーエージェント
サイバーエージェントではまだ実績のない従業員に対してさまざまなチャンスを与えています。例えば、新卒1年目からサイバーエージェントの子会社社長に任命したり経営部門を任せたりするなどほかの企業ではなかなかないような取り組みが特徴です。
東京海上日動
東京海上日動では従業員一人ひとりがモチベーションを高く保ち、さまざまな業務に挑戦することにより、イノベーションが生まれるといった経営方針です。そのため、年齢や入社時期、国籍などに問わず従業員一人ひとりの価値観や経験などを尊重しています。すべての従業員が最大限持てる力を発揮するための環境作りを継続中です。
社員一人ひとりの発意に基づく挑戦と働きがいの向上、そして多様な社員がその意欲と能力を最大限発揮しイノベーションを創出することが社員と会社の成長につながると考え、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を成長戦略の柱と位置付けています。
引用:ダイバーシティ&インクルージョン推進(東京海上日動)
まとめ
人材ポートフォリオは従業員一人ひとりのスキルや経験、キャリアパスなどを把握することにより適材適所に人材を配置して企業の経営目標を達成する人材マネジメントの手法です。従業員をより理解することで最適な人材配置ができ、それぞれの部署において人材の過不足が明確になることから、採用活動や人材育成に活かせます。さらに、従業員をより理解することによって満足度が高まり人材を長期間確保でき生産性の向上が期待できます。
それぞれの企業においてさまざまな人材ポートフォリオの活用方法があり、導入事例をみながら自社にあった人材ポートフォリオが検討できます。人材ポートフォリオの目的やゴールを設定するためにも導入事例を確認することが重要です。
近年では働き方の変化や雇用形態の多様化、さらには少子化や高齢化による労働力不足などさまざまな外部要因により働く環境が変わっています。これらの変化に対応するためにも、人材ポートフォリオを活用することが求められます。