- 経営戦略
中期経営計画における人材戦略
企業が中期経営計画を作成するうえで人材戦略は重大なテーマです。少子高齢化が進み、働き方改革により正社員になる以外にもさまざまな働き方がある現在において、人材を育てることに力を入れている企業が多くなっています。
人材を中期的に育てるためには、評価制度の見直しが必要になっています。これまでの年功序列型、短期的での成果評価制度を廃止し、中期的に従業員を評価する流れとなっています。
中期経営計画においての人材戦略
中期経営計画を設定するうえで人材は必要不可欠です。そのため、人材戦略が明確でないと中期経営計画は達成できない可能性が高くなります。中期経営計画に連動して、人材戦略を明確にしているのが人事中期計画です。人事中期計画は人事の観点で中期経営計画が達成できるような設定なのかを判断することができます。
人事中期計画
3〜5年後企業がどのようになっているべきなのか、目標を数値で設定するのが中期経営計画です。中期経営計画は企業が目標を達成するために、活動する内容まで含まれています。
企業が成長するうえで欠かせないのが人材戦略です。そこで中期経営計画と連動することにより、人材戦略に関する施策展開の方向性を明確にしているのが人事中期計画です。人材は企業にとって経営資源といわれ、中期経営計画で設定した目標を達成するために人材をどう活用するかが人事中期計画には記載されています。
人事中期計画の設定手法
人事中期計画は中期経営計画が基盤となっています。そのため、中期経営計画を達成するために必要な人材戦略を計画していきます。例えば、中期経営計画で設定している売り上げを達成するためには、従業員が何名必要なのかといった具体的な人事における施策を設定していく必要があります。
中期経営計画を確認したあとは、現状の人事における問題点の分析をおこないます。人事として中期経営計画で設定した目標を達成するために提案をしていくこともあります。もし中期経営計画で設定している売上額と従業員の数が現実的でなければ、中期経営計画に問題提起をします。
中期経営計画においての人事評価制度
人材を育てるうえで従業員への評価制度が重要になります。評価制度が明確であれば従業員のモチベーションを上げることにつながります。また、中期経営計画に対してどれだけ貢献できているかを明確にすることができます。
中期経営計画を達成するためには、経営理念や方針の他に目標達成のための戦略に沿った人事評価制度が必要です。人材は企業にとっての大きな資源であることから、人事評価制度は企業の成長に必要不可欠なのです。そのため、人事評価制度は従業員のためだけではなく企業のためでもあります。
中期的な視野において、人材育成や能力開発など人材戦略を進めることが中期経営計画において必要です。また、人事評価制度を見直すことによって働き方改革にもつながります。
人事評価制度を見直す企業が増えているのですが、特に見直されているのが以下の3点です。
- 職務等級制度
- 年次評価の廃止
- 部下とのコミュニケーション
職務等級制度
人事評価制度を改革するうえで、懸念されているのが職務等級制度です。従業員のスキルや仕事内容、役割などによって権限や責任を区別し、待遇に反映させる制度です。従業員のスキルは経験を蓄積することが前提となっており、つまり年功序列の考え方につながります。
このため職務等級制度は経験のあまりない従業員にとってモチベーションを下げる要因となることがあり、企業にとっては長く従業員を雇えば雇うほど人件費が高騰するなどさまざまなデメリットがあります。
また、経験が優先され評価基準が明確でなくなることもあります。
年次評価の廃止
日本は終身雇用制度が減り、成果制度にかわっていったのですが、成果制度において導入されることが多い年次評価の問題点が近年明らかになっています。
年次評価とは年度の初めに目標を設定し、年度末に目標に対する達成度合でランクを付けて従業員一人ひとりを評価する方法です。しかし、2010年以降マイクロソフトをはじめとする、大手企業が年次評価を廃止し始めたのです。
年次評価を廃止した大きな理由として、1年間といった短期の目標よりも企業の将来性を重要視する動きがあるためです。年次評価はもともと人材育成が目的の一つだったのですが、実際には給与を決めるための要因に過ぎない状況になっていました。
そこで年次評価ではなく、ノーレイティングや1on1などさまざまな評価方法が、日本でも取り入れられるようになりました。
部下とのコミュニケーション
一方的に上司や人事担当者が評価するのではなく、定期的に上司が部下とコミュニケーションをとることで、従業員一人ひとりの現在の課題やストロングポイントを把握することができます。企業が設定している目標に対して、どのように貢献しているかを理解することにより企業に対する満足度が上がります。
しかし、上司が部下一人ひとりと定期的にコミュニケーションをとると、上司に大きな負担がかかります。そのため、上司が部下とコミュニケーションをとるためには、会社全体で上司の負担を減らすなど取り組む必要があります。
中期経営計画においての人材戦略が成功するポイント
中期経営計画においての人材戦略が成功するポイントとして、以下の3点が挙げられます。
- 経営者の責任感
- 人事担当の強化
- 中長期を見据えた新卒採用
経営者の責任感
中期経営計画においての人材戦略を成功させるためには、経営者の責任感が重要です。経営者が中期経営計画の達成に全力を尽くさないと、中期経営計画が達成されにくくなります。それどころか、中期経営計画を立てた意味がなくなります。
そのためにも人事中期計画を設定するときに経営者を巻き込むことが重要です。また経営者が中期経営計画の進捗状況を理解するために、従業員全員の活動を可視化することも大切です。
人事担当の強化
中期経営計画において人材戦略を成功させるためには、人事担当者の実行力が求められます。そのためにも人事担当者の教育も重要になります。もし人事担当に実行力が足りないと判断した場合、外注で人事関連の専門家に依頼する方法もおすすめです。
外注する場合、中期経営計画の人材戦略を成功させるだけでなく、企業の人事担当者を成長させることも重要になります。
中長期を見据えた新卒採用
新卒社員を採用するときに、目先の目標ではなく中長期を見据えることが中期経営計画の人材戦略の成功につながります。応募者にとって企業の方向性を理解することができるため、応募者とのミスマッチが少なくなります。
中期経営計画を達成するためには、従業員全員が同じ方向を見ていることが重要であるため、中長期を見据えた新卒採用は企業の成長につながりやすくなります。
また応募者が企業の方向性を把握できることから、企業に対しての満足度が高まります。満足度が上がると、離職率を下げることができ近年の人材不足にも対応することができます。
まとめ
中期経営計画を達成するためには人材の力が重要です。少子化が続き、優秀な人材を採用するのが難しい現在において人材は企業の大きな資源といわれています。そこで中期経営計画を作成するときに人材戦略は必要不可欠です。
人材戦略が明確であれば、従業員にとって企業へのモチベーションがあがり満足度が高くなります。さらに応募者にとって安心感があるなど、さまざまなメリットがあります。
人事の観点で中期経営計画を分析することによって、より中期経営計画を成功させることにつながります。