- 組織人事
人事評価制度コンサルの選び方と使い方
人事制度や組織戦略などの設計、改定、運用にあたっては、必要に応じて外部の力を頼り、コンサルティング会社の活用を検討することがあります。しかし、人事制度設計を行うコンサル会社は40社以上あるため、そのコンサル会社の特徴と後述するタイプを判断したうえで効率よく選定し、利用することが重要です。
人事評価制度について相談する
人事組織戦略の考え方
人事制度を策定・改定するということについて、上流から考え直していくと人事組織戦略から落とし込んでいく必要があります。
従来、外部環境でよく指摘されてきたのは顧客市場の3C(Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社))ですが、組織の側面から考えた場合には雇用市場のWCC(Worker(被雇用者)、Cmpetitor(競合)、Company(自社))において、いかに勝ちに行くかということが戦略上非常に重要です。
顧客市場のKBF(主要購買要因)は何か、雇用市場のKWF(主要労働要因)は何かを認識したうえで事業と組織に落とし込む必要がありますが、注目してほしいのは内部環境の下にある人事コンセプトです。採用、配置、教育、評価、活性化を正しく、一貫性を持って運用していかなければなりません。
新規事業の変革も含めて、スムーズに進むかどうかは企業の組織文化に起因することが多く、組織文化を事業や世の中の変化に適応させていく方法を探ることが昨今の組織変革のテーマになっています。そのため、長期にわたり強い事業基盤を持つ企業ほど、組織の体制や文化は不変の状態になりやすく、どうやって変革していくのかを考えながら人事制度や採用、教育のあり方を考える必要があります。
人事施策や仕組みを変える要因の大分類
人事制度諸施策を変更していく要因は大きく分類すると次の5つです。
- 事業戦略に影響を与えるような外部変化
- 人材市場の変化
- 経営理念や経営方針の変更
- 事業戦略の変更
- 人事諸制度内の不適応、不適合への対応
事業・組織・制度の一貫性の担保
人事制度また諸施策を改定していく仕組みづくりのフローは、ビジョン戦略、人事戦略、人事諸施策の策定、そして導入から運用定着という流れになります。
まずはビジョン戦略で経営方針やMVV(Mission、Vision、Value)から具体的な事業のゴールをどこに置いているのかということをベースにしながら、しっかりと明文化していくことが人事戦略の起点です。目指す組織と人材それぞれで整理することで人事諸施策の方針と要件定義ができます。要件をしっかりと定義したうえで、人事の3制度(等級・評価・報酬)それぞれに関しての制度設計を行っていくという形で連動させていきます。ここまでのフェーズを踏まえて最後は導入準備から導入、運用定着までのの流れを組み立てていくことになります。
人事制度を変える際には、等級や評価、報酬の在り方で問題点が挙がり、改定しようとしても、そもそもの大方針がどうなのか、事業変化をどのように評価に落とし込めばいいのかという検討ばかりが先行し、なかなか進まないということが往々にしてあります。
変化が激しい時代ですのでアジャイル型の検討は発生しますが、ビジョン戦略や人事戦略が曖昧だと制度設計や制度改善は進みません。
人事評価制度ができるコンサルティング会社のタイプ
人事評価制度ができるコンサルティング会社のタイプは大きく次の5つに分類できます。
- 人事領域専門コンサルティング
- 士業系事務所(主に社労士事務所)
- 総合コンサルティング会社の組織人事チーム
- HR系システムのコンサル部隊
- 個人コンサルタント
人事領域を専門としたコンサルティング会社は組織改正や人事回りのテーマをベースに扱っていくプロフェッショナル集団です。人事領域に関しては非常に体制が厚く、独自のノウハウも持っている会社が多いのが特徴です。
社労士事務所を中心とした士業系事務所とお付き合いしていくなかで人事領域に協力してもらうこともあります。法務や労務の観点から人事制度の改定や運用のサポートをするというのが特徴です。
総合系のコンサルティングファームでは全体的な経営コンサルをする中で組織人事を扱うという形になります。経営コンサルという視点から制度活用や運用に関する課題の対策を打っていくといったように、上流の考え方から落とし込んでいくのが特徴です。リブ・コンサルティングもここに該当します。
HR系のシステム会社ではコンサルメンバーがツールにより評価やサーベイを活用し、組織の中に人事制度を浸透しやすくするという動きをとります。ツールにより導入後の評価者や人事部の運用負担を軽減することができます。
個人コンサルタントは専門の知識を持った方が独自にやっているスタイルです。スキルや知識は千差万別ですが、制度のベンチマーク先出身者の場合には内部情報に詳しく、模倣が容易である点が特徴です。
コンサル会社のタイプ別得意領域とサポート領域
人事評価制度の設計ができるコンサル会社は5つのタイプに分けられますが、それぞれ得意領域とサポート領域が異なります。人事には戦略・ビジョン、人事戦略、人事諸制度、人事3制度、導入〜運用という5つの領域がありますが、それぞれのタイプにより得意領域もサポート領域も大きく異なります。
人事領域の専門のコンサルティングファームは、人事戦略、人事諸制度、人事3制度、導入〜運用の領域で強みを持っています。大元となる事業面の戦略に大きなブレがなければ非常に力になります。
士業系事務所では、戦略面の経験値をどの程度持っているかは事務所により大きく異なり、未知数です。社労士事務所は人事3制度に関して詳しい方も多いものの、全体的にどこまでサポートをしてくれるかは事務所によります。
総合コンサル会社では、戦略・ビジョンはクライアントがどこまで必要とするか次第ですが、元々は戦略・ビジョンからスタートし、人事戦略をしっかり描いてサポートまでするというところがポイントです。ただし、総合コンサル会社にも、戦略と仕組み構築を明文化することまでを得意とするか、明文化にしたものを運用定着することまで得意かで2つのタイプに分かれます。人事領域専門のコンサル会社との違いは、戦略から一緒に考えていくかどうかです。
HRシステム系コンサル会社では、人事3制度はクライアント側で作っていて、それをうまく活用できるツールで運用するという流れとなります。制度設計そのものの構築は難しい部分もありますが、仕組みが適切にできていれば運用ツールの活用という点ではしっかりとサポートしてもらえます。
参考:人事評価制度の初期面談先選択チャート
まとめ
人事制度にフォーカスする場合、3つのステップがあります。
- 自社の制度改定の目的・背景を明確にする
- 自社内のアセットを把握する
- 自社にあったコンサル会社を選定する
まずは自社の人事制度改定の目的や背景を明確にし、ビジョンや人事戦略を正しく見据える必要があります。そのうえで、戦略・ビジョン、人事戦略、人事諸制度、人事3制度、導入〜運用という5つの領域のどの部分が必要かを把握し、どのタイプのコンサル会社が自社に合っているのかを検討する必要があります。コンサル会社の選定では、複数社に声をかけ、空気感が合うかどうかはコンペのような形で直接相対することで実現してください。
人事制度を改定する目的でコンサル会社を探している場合であっても、人事制度だけを変えることは難しいことが多いのが現実です。等級制度や報酬制度だけを改訂したい場合であっても、パッチワーク的な活動をしてしまうと結果的にはどこかに歪みが出てしまいます。
あるべき組織や必要な人材を検討し、採用から人員配置、教育の仕組みまでを一貫して整理して、どのように進めるべきかという全体的な人事戦略を適切に捉え、一緒に考えていけるコンサル会社を選定するようにしてください。