2024.04.27

HCM(人的資本管理)とは

HCM(人的資本管理、Human Capital Management)は、従業員の採用や育成などの管理をすることです。従業員一人ひとりが持っている経験やスキルなどを企業の資本であるといった考え方です。従来日本の企業では従業員はコストといわれることがありましたが、HCMでは有効に活かすことで、生産性の向上や従業員のモチベーション向上などによって企業の利益につなげることが大きな目的となっています。HCMを有効的に進めるためには、人材分析や勤怠管理、人材獲得などさまざまな要素がありそれぞれに対して取り組むことが重要です。

HCMとは

HCM(人的資本管理、Human Capital Management)は、従業員が持っている能力やスキルを経営資本ととらえ、企業の利益を最大化する考え方です。企業は単なる労働力の提供者としてではなく、従業員の個々の強みや成長ポテンシャルを最大限に引き出すことを目指します。

HCMを導入することで組織は戦略的な人材プランニングをおこない競争力を高める手段として活用できる考え方以外に、採用や育成などを含めた管理システムをさす場合もあります。経営者は人材の有効活用を通じて業績を向上させ、従業員は自らのスキルを発揮しキャリアを拡大させることが可能です。

HRMとの違い

HRM(Human Resource Management)とHCMは考え方が似ています。いずれも人材のスキルや能力、経験を資本として扱うことが特徴です。HCMは従業員が最高のパフォーマンスを発揮することが目的で、HRMは費用対効果で利益を得ることが目的です。HRMは、主に組織が人材を効果的に管理し、費用対効果で利益を最大化することを目指すアプローチです。人事のプロセスや手続き、従業員の勤怠管理、給与体系の構築など、効率的かつ経済的な人事管理を通じて、組織の運営を支えます。この視点では、人材は単なるコストとして捉えられることがあります。

一方で、HCMは従業員が最高のパフォーマンスを発揮することを重視するアプローチです。従業員のスキルや能力を最大限に引き出し、組織全体の戦略的な目標に寄与させることが目的です。個々の従業員に焦点を当て、彼らが成長し、組織に価値を提供することを重要視します。したがって、HCMは従業員を資本と見なし投資として育成やトレーニングに積極的に取り組むことが特徴的です。

HCMの主な要素

HCMを成功裏に進めるためには、さまざまな要素に適切に対応することが不可欠です。これには、従業員の目標設定やスキル管理、トレーニングの最適化、そしてリアルタイムなフィードバックの提供が含まれることが特徴です。これらの要素への継続的な対応が、従業員エクスペリエンスの向上と共に、組織全体のパフォーマンスを向上させます。HCMは次のように大きくわけると6つの要素で成り立っています。

  1. 人材分析
  2. 人材管理
  3. 人材獲得
  4. 従業員への待遇管理
  5. 勤怠管理
  6. パフォーマンス管理

人材分析

従業員エクスペリエンスを向上するために人材分析をおこなうためにもHCMが活用されます。福利厚生請求や離職率、意思決定のプロセスなどさまざまな指標を使って得られるデータから分析することが可能です。これらのデータを分析することで、従業員がどのようなニーズを抱えているかや、どの施策が効果的であるかを把握することが可能です。

HCMを活用した人材分析は、企業が戦略的かつ持続的な従業員エクスペリエンスの構築に貢献します。従業員の声をデータに基づいて理解しそれに基づいて組織が変革を遂げることで、より良い労働環境や働き方が生まれ企業全体の成果につなげることが可能です。

人材管理

従業員を育成することで業務効率化や新しいスキル開発につながります。従業員のスキル向上は企業にとって非常に重要であり、そのためには継続的なトレーニングや教育が欠かせません。従業員育成の一環として、企業は内部トレーニングプログラムや外部の教育機関と提携して専門的なスキルや知識を提供することがあります。

また、従業員育成は従業員のモチベーション向上にもつなげることが可能です。従業員自身の成長やスキル向上を実感できる環境は、従業員が高いやりがいを感じ仕事に対して取り組めるようになります。これが、業務効率化や従業員の成長につながり企業全体の競争力向上につなげることが可能です。

人材獲得

HCMにおいて人材獲得は組織の成功に向けて不可欠な要素です。企業が目標を達成し持続的な成長を実現するためには、優秀な人材を適切に採用し育成することが求められます。この人材獲得プロセスを効率的かつ戦略的に進めることは、企業の競争力を強化し業績向上につなげることが可能です。

採用された従業員に対してオリエンテーションから入社後の育成までトレーニングの管理をおこなうことで、従業員一人ひとりの満足度向上につながります。従業員が適切なサポートを受けることによって、生産性向上や定着率向上を期待できます。

従業員への待遇管理

福利厚生や給与、ボーナスなど従業員への待遇を管理します。正答な判断をしているか、また正確に処理されているかを確認することが重要です。また、福利厚生は従業員のニーズにあったものを提供することが求められます。特に給与やボーナスなどの処理においては、正確さが求められます。これにより、従業員と企業の信頼関係を構築し、組織全体の効率を向上させます。

また、福利厚生は従業員の生活や働き方に合わせて柔軟に提供することが求められます。HCMを進めることで従業員のニーズを把握し、福利厚生を最適化することが可能です。従業員が自分らしい働き方を選択できる環境を整え、結果として従業員の満足度向上ににつながります。

勤怠管理

従業員一人ひとりの労働時間や休暇の管理などをおこないます。正確に給与計算をするためにも重要なプロセスです。従業員の労働時間や休暇情報を正確に管理することで、企業は公正な給与体系を構築できます。

このことで、従業員と企業の信頼関係が損なわれるリスクを低減させることが可能です。また、労働時間の適切な管理は、法令遵守にも直結します。従業員の働き方や休暇の取得状況などを正確に把握することで企業の信頼を高めることが可能です。

パフォーマンス管理

従業員一人ひとりと企業側の目標を管理します。目標を達成するために必要なトレーニングの最適化をすることが大きな目的です。従業員ごとに個別の目標を設定し、それらの進捗を追跡します。これにより、従業員は自身の仕事がどれだけ目標に寄与しているかを理解しやすくなります。

従業員のスキルや資格を把握し、それに基づいて必要なトレーニングやスキル開発プログラムを提案することも重要です。これにより、従業員は目標達成に必要なスキルを磨くことができます。また、企業の戦略的な目標と従業員の個別な目標を調整し、優先順位付けをすることも企業の利益を最大化するために大切な要素です。

HCMを導入するメリット

HCMを導入すると次のようなメリットがあります。

  1. 効率的なタレントマネジメント
  2. 従業員のエンゲージメント向上
  3. 生産性向上
  4. コスト削減

効率的なタレントマネジメント

HCMを導入することで、従業員一人ひとりのスキルや能力を把握できます。そのため、適切な育成をしたりスキルを活かせる部署への配置をしたりすることが可能です。これにより、従業員一人ひとりのニーズに合わせたトレーニングや教育プログラムを提供し組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

また、HCMは部署やプロジェクトにおける従業員の配置にも影響します。従業員のスキルセットや適性を考慮し、最適な部署やプロジェクトに配置することで、生産性を向上させ、チーム全体の協力関係を強化することが可能です。適材適所の原則に基づいた配置は、従業員のモチベーション向上やキャリア構築にも役立てられます。

従業員のエンゲージメント向上

従業員の能力を最大限に引き出すために、適切な配置は非常に重要です。従業員が自らの強みやスキルを活かせる環境に配置されると、仕事に対するモチベーションが向上し、結果としてエンゲージメントが高まります。従業員一人ひとりのエンゲージメント向上は企業にとって多くの利点をもたらします。まず、従業員は自分の力を発揮できることに充実感を持ち、仕事に対して積極的に取り組みやすくすることが可能です。

適切な配置は効率的なチームワークの確立にもつながります。各メンバーが得意とする分野にフォーカスすることで、相互の補完性が高まり、プロジェクト全体の成果を最大化することが可能です。チーム全体が協力し合うことで、問題解決やイノベーションの機会が増え、企業の競争力が向上します。

生産性向上

効率的なタレントマネジメントは生産性の向上につながります。そのため、従業員一人ひとりを効率的に活用することで企業の資本力向上につなげることが可能です。タレントマネジメントを効率化することで適材適所の配置や育成プログラムの適切な提供などにより、従業員一人ひとりがもっとも力を発揮できるポジションで働けるようになります。

これにより、仕事において個々の専門性を最大限に引き出し全体の生産性を高めることができます。タレントマネジメントの効率化は企業にとって戦略的な要素であり、生産性が向上し企業の資本力が向上します。従業員がやりがいを感じ、自己成長やキャリアの発展を実現できる環境づくりが企業の持続的な成功につながる重要な要素です。

まとめ

HCMとは、従業員一人ひとりの能力やスキルなどを最大限に活かして企業の資本力向上につなげるといった考え方です。人材獲得や従業員一人ひとりのスキルの把握、勤怠管理などを管理することで従業員のモチベーションや生産性の向上につながり企業の利益が期待できるようになります。従来では従業員はコストだと考えられていましたが、従業員一人ひとりが企業の資本になるといった考え方であるHCMを導入する企業が増えています。

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