- 経営戦略
シェアリングエコノミーの今後
近年過剰生産や過剰消費に対して見直す動きが進んでいます。商品を購入する生活スタイルから、コスト削減を目的として共同で商品やサービスを利用する需要が高まっているのです。シェアリングエコノミーは、個人同士での取引をするビジネススタイルであり、国内のシェアリングエコノミー市場規模は2兆円を超えています。今後さらにこの数値は高まっていくと見られています。
シェアリングエコノミーの現在と今後の市場規模
シェアリングエコノミーとは、個人が所有しているスキルやモノ、空間などの遊休資産を必要な人に貸し出しをするサービスにおいて仲介するビジネスです。個人同士のやりとりとなるため、CtoC(Consumer to Consumer、個人間取引)にあたります。
「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。
引用:平成27年版情報通信白書 シェアリング・エコノミーとは(総務省)
シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で発表した市場調査によると、2022年度シェアリングエコノミーの市場規模は2兆6158億円と発表しました。この数値は過去最大となっています。
2022年度に2兆6158億円となったシェアリングエコノミーの市場規模は、2032年度には最大15兆1,165億円まで拡大されると予想されています。
参考:【シェアリングエコノミー市場調査 2022年版】市場規模は過去最高の「2兆6,158億円」を記録し、2032年度には「15兆1,165億円」に拡大予測。(シェアリングエコノミー協会)
シェアリングエコノミーの需要が高まる理由
シェアリングエコノミーの需要が高まる理由として次の点が挙げられます。
- 利益率が高い
- 人材を確保する必要がない
- 在庫を確保する必要がない
- 時代にあったサービスや商品を提供できる
- 展開する領域が広い
利益率が高い
一般的な小売店であれば利益率は2.1%で卸売業は1.1%となっています。
仕入れをして製造したあと販売すると、利益としてはあまり残らないことがわかります。シェアリングエコノミーはIT系に分類されており7.3%と高く、流入通数にあわせて手数料が入るため在庫が残ってしまう心配がありません。
人材を確保する必要がない
シェアリングサービスは個人間のやりとりであり、ほかの人材を確保する必要がありません。プラットフォームを活用してやりとりをするので、手間をかける必要がない特徴があるのです。従来のビジネスであれば、管理担当者や販売担当者など多くの担当者が存在します。しかし、シェアリングサービスは人材を確保する必要はありません。
在庫を確保する必要がない
従来のビジネスモデルであれば、企業対企業のBtoBか企業が消費者に対してサービスや商品を提供するBtoCが一般的でした。いずれにおいても企業が関連するため、モノでもサービスでも仕入れることが必要です。
食品であれば多く仕入れ過ぎると腐ってしまい商品として扱えなくなりますが、少なすぎると機会損失となり、ビジネスチャンスを逃すことがあります。アパレルを販売する場合は季節や流行にあった服を提供することが求められ、服を保管したりいたまないように管理したりすることが重要です。
しかし、シェアリングエコノミーは、個人同士でやりとりをするCtoCのビジネスモデルです。CtoCにおいては在庫を確保する必要がなく、必要なのは取引をできるプラットフォームだけとなります。そのため、シェアリングエコノミーは在庫を確保しなくていいことから資金繰りの心配がありません。
時代にあったサービスや商品を提供できる
近年ではユーザーが求めているモノが激しく移り変わっています。そのため去年まで流行っていたのに、今年になってまったく売れないことは少なくありません。しかし、シェアリングエコノミーはサービスやモノを仕入れる必要がないため、ちょっとした工夫で時代にあったサービスやモノを提供することが可能です。
例えば、プラットフォームを改良することで、時代の変化に対応できる場合があります。後は、時代のニーズに合わせて扱うモノやサービスを変更すればいいだけです。メルカリをはじめとしたフリマアプリでは、時代に合わせてユーザーが利用しやすいようにプラットフォームを変更すれば、あとは購入者のニーズが高い商品をユーザーが出品してくれます。
スキルを提供するプラットフォームであれば、その時代に求められるスキルを持ったユーザーが登録をしやすくなるのです。時代に合わせて柔軟に対応できる点が、シェアリングエコノミーの大きな利点です。
展開する領域が広い
シェアリングエコノミーは、モノや空間、移動手段、スキル、お金など幅広い領域において展開されています。そのため、多くの人に需要が高く今後さらに必要性が高まる可能性があるのです。個人間で取引をするため仕入れが不要であり、新しいビジネスが発展しやすいビジネス形態です。
シェアリングエコノミーによる経済効果
シェアリングエコノミーは次のようにさまざまな用途において経済効果があります。
- ビジネスを拡大する
- 潜在的な需要を作り出す
- 課題を解決する
ビジネスを拡大する
シェアリングに関連するプラットフォームを提供している企業の場合、ビジネスの拡大をしやすい環境にあります。例えば、空き家を宿泊施設として貸し出している場合、宿泊地まで行く交通手段や清掃業務などにおいて新たなビジネスを加える機会が多くあります。
このようにシェアリングエコノミーは、さまざまな分野においてビジネスを拡大できる機会があります。
潜在的な需要を作り出す
ユーザーが商品を購入しない理由として、価格や購入時の手間が挙げられます。シェアリングエコノミーでは、安価で購入できるケースが多いほか、購入をスムーズにできることから購入するための障壁を減らせるのです。さらに、シェアリングエコノミーは一時的に購入、またはシェアする可能性が高い点が特徴です。そのため、ユーザーの潜在的な需要を作り出せる可能性が高まります。
課題を解決する
シェアリングエコノミーは、必要な時だけ自転車を使ったり、家事代行を依頼するなど依頼者の課題解決につながるビジネスです。例えば、人口の少ない地域でバスドライバーが不足している場合、一般のドライバーがタクシーの代わりをすることで人手不足や、移動手段不足の解消になります。
ほかには、お正月や夏休み、多くの人が集まるようなイベントが開催されるときなどホテルや旅館などがどこも満室で泊まれない場合があります。そこで、空き家に宿泊地として提供するシェアリングエコノミーがあることで、宿泊できる人が増えるのです。このように、シェアリングエコノミーはさまざまな課題解決につながっています。
まとめ
シェアリングエコノミーは、個人間同士でモノや空間、スキルなどを取引するサービスです。そのため、提供者にとっても利用者にとっても活用するために手間や大きなコストは必要はありません。さらに、シェアリングエコノミーは、人手不足やスキル不足などの課題を解決し、ビジネス拡大の機会が多いことから今後さらに需要が高まることが見込まれます。